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HRBP9 マトリクスの1段目:部門が考えるActionを支援する

以前の記事で"HRBP9 マトリクス"全体の話を紹介しましたので、今回の記事ではHRBP9 マトリクスの1段目のそれぞれのポジションで取るべきアクションや注意点についてまとめました!
ご自身や周囲の方が当てはまりそうなところをイメージしながら読み進んでいただけると嬉しいです。

では、いきましょう!


1段目⇒対応するエリアLv.1~部門が考える”Action”の解決を支援する~とは

多くのHRBPの方が、このHRBP9 マトリクスの1段目である【対応するエリアLv.1「部門が考える”Action”の解決を支援する」】からスタートすることになると想像しています。
HRBPに着任直後は『クライアントに色々と提案して組織に貢献しないと』と、考えることはとても大切なことなのですが、自身が1段目にいる事を意識せずに行動すると失敗します。
というのも、信頼関係もできていない、組織文化の深い理解が無い状態での提案は、欲しくもないプレゼントを無理やり押し付けるようなもので、誰も喜びません。むしろ、煙たがられ距離を置かれてしまいます。
この事態を避けるために、まずは「部門が考える”Action”の解決を支援する」ことに集中しながら、信頼の基礎を築き、組織文化の理解を進めて対応するレベルを上げていきましょう。

図1

「部門が考える」という主語が非常に大切

”対応するエリアLv.1”で大切なのが主語は「部門=クライアント」であり、HRBPではないということです。『己を捨て去り奉仕せよ!』ということを言いたいのではなく、『HRBPとして、担当部門から信頼を獲得するため』に大切なステップであり、土台になっているスタンスであると捉えてください。

主語を意識する理由として、HRBPの役割がどれだけ浸透している組織かによって状況は異なりますが、新しく着任したHRBPに対してクライアントは「目の前にいるHRBPは自分たちにとって役に立つ存在なのか」と考えているからです。
そして、HRBPの主なクライアントは部門の責任者や管理職の方々であり、かれらが考える「自分たち」は、組織のことであり、組織運営に役に立つかの品定めをされていると私は意識しています。
これは、新しい部門の責任者が着任した際にも同様のことが発生するので、私はオンボーディングセッションの際に自分の役割を伝えつつ、クライアントがどういったことを考えているのかをヒアリングするように心がけています。

組織文化(横軸)の整理

Lv.1: “Artifact” 見える化されたモノ
「目に見える組織構造とプロセス」
Lv.2: “Espoused Beliefs and Values” 標榜される信条と価値観
「戦略、目標、哲学」
Lv.3: “Underlying Assumptions” 背後に潜む基本的仮定
「無意識のうちに当たり前となっている信念、認識、思考、感情など」

HRBP9 マトリクスは、右に進むほど「組織文化の理解」が進んでいる状態であり、目指すべき状態です。”対応するエリアLv.1”の中で右に進みながら、上のレベルを目指すことで、HRBPの価値を発揮していくことになります。
とはいえ、皆さんも実感しているように、組織は生き物ですので、人の入れ替わりやビジネス状況の変化によって、部門のニーズや組織文化の理解をすべきポイントは変わってきます。
つまり、一度対応するエリアの階段を上り、組織文化の理解が深まっても、環境の変化などの影響を考慮しながら、常にマトリクスの立ち位置を把握し、ポジションを行き来しながら動き方を考える必要があるということになります
ですので、基礎となる”対応するエリアLv.1”の動き方を押さえて環境が変わっても再現性を高め、HRBPとしてのパフォーマンスが発揮できるように備えていただけると嬉しいです。

ここからは、具体的にそれぞれのポジションでアクションのポイントと注意点をご説明します。
尚、内部・外部環境の影響による組織文化の変化は変動要素が多いのですが、代表的な影響要因を最初に紹介しておきます。
・経営戦略の大きな変更(トップの変更も含む)
・ビジネス環境の突発的な変化(コロナのような社会的なインパクト)
・人事制度の大きな変更
・組織開発による意図的な変革
・部門責任者(Div.Head)の変更
・部門責任者以外のキーパーソンの変更
・組織体制を大きな変更 など

”対応するエリアLv.1”×”組織文化の理解Lv.1”

Lv.1:「部門が考える”Action”の解決を支援する」
Lv.1: “Artifact” 見える化されたモノ
「目に見える組織構造とプロセス」

このポジションからスタートする方のイメージとしては以下のような方です。
・社歴が浅くて会社のことや部門のことをあまり知らない方
・1~3年程度会社に所属はしているが、部門と直接接する機会の少なかった方

具体的なパーソナリティは以下のイメージです。
・外部からHRBPとして着任した方
・人事内で異動してHRBPに着任したしたが、部門と接する機会が少なかった方

~アクションのポイント

このポジションに位置する方は、まずはクライアントの理解を進めながら信頼関係を構築することに集中することをおすすめします。組織図やクライアント部署の業務内容、部署内の業務の流れの理解など、顕在化しているものを早期に理解できるように進めていきます。
そして、自身のHR領域*の強みを整理し、部門責任者(Div.Head)などに適切に伝えていきましょう。自分の強みが活かせる”部門が考えるAction”があれば優先的に取り組み、解決していきます。これらのコミュニケーションが生まれることで、部門との接点を増やし、組織文化の理解が促進されます。
*HR領域:制度、評価、採用、育成、労務などの業務領域

~注意点

組織文化の理解が浅いゆえに、クライアントが使っている言葉や暗黙知が理解できないことが起こります。聞きづらい雰囲気や流れもありますが、そういったことを理解しないと、組織文化の理解につながらないことを忘れてはいけません。
また、臆せず質問していくと現場の方は「自分たちのことを知ろうとしてくれている」と好感を抱くこともあります。質問というコミュニケーションをうまく活用して「目に見える組織構造とプロセス」の理解を進めてみてください。
そして、会社ごとのHRBPの位置づけにもよりますが、担当クライアントの部署で一日仕事をしてみるなど接点を増やすこともチャレンジするのも一つのアプローチです。自分のデスクに張り付いてしまっていては、クライアントもあなたのことを理解する機会を失ってしまいますし、フロアで行われているコミュニケーションを肌で感じられることで組織文化の理解が促進されます。

”対応するエリアLv.1”×”組織文化の理解Lv.2”

Lv.1:「部門が考える”Action”の解決を支援する」
Lv.2: “Espoused Beliefs and Values” 標榜される信条と価値観
「戦略、目標、哲学」

このポジションからスタートする方のイメージとしては以下のような方です。
・クライアント部署の組織構造や業務内容を理解している方

具体的なパーソナリティは以下のイメージです。
・3~5年程度会社に所属しており、クライアント部署と関わることは無かったが、ある程度部門の理解をしている方
・1~3年年程度会社に所属しており、クライアント部門と関わりがあった方

~アクションのポイント

目には見えない部分の組織文化の理解をより促進するために、クライアントが日々どういった媒体からどのように、どんな情報収集をしているのか、業界特有のトレンドは何かなどをぜひ聞いてみてください。そして、それらが確認できたら同じように情報収集をしてみると、現場の方々の動きがリアルに体感できます。これが、意思決定の背景や、価値観がどのように醸成されているかのヒントになります。
また、活動現場に同行できるような機会があれば、ぜひ足を運んでみてください。社外の方がいらっしゃる場には難しい可能性がありますが、各現場でどういったことに注視しているのか、日々何が起こっているのかを理解することで、目には見えない組織文化の理解が促進されます。
そして、可能ならば管理職級以上の会議に同席するなどしながら、日々何が起こっているかも聞きながら、HRBPとして共に課題に立ち向かっているパートナーであることを伝えるチャンスを逃さないようにしていきましょう。

~注意点

表面的な情報ではなく、現場の方々とコミュニケーションを積極的に取らなくては、このポジションから次のステップに進めません。しかし、コミュニケーションをとるきっかけがつかめないケースを多く聞きますので、仕組みとしてHRBPが現場の方とコミュニケーションを図る機会を作る必要があります。
例えば、HRBPが採用面接で現場の方と同席する、月に1回は会社の人事イベントの進捗を伝えるためにMTGをセットする、新卒や中途入社者のフォローアップのために面談をする。などです。
ある程度クライアントのことを理解しているからこそ、そこで立ち止まらずに、HRBPとして理解すべきポイントを押さえてクライアントに踏み込んだコミュニケーションを行い理解促進につなげてください。

”対応するエリアLv.1”×”組織文化の理解Lv.3”

Lv.1:「部門が考える”Action”の解決を支援する」
Lv.3: “Underlying Assumptions” 背後に潜む基本的仮定
「無意識のうちに当たり前となっている信念、認識、思考、感情など」

このポジションからスタートする方は以下を網羅しているような方です。
・クライアント部署を取り巻くビジネス環境を深く理解している
・クライアント部署の他部署との関係性、内部の人間関係を理解している
・部門責任者(Div.Head)の思想を理解し、関係性が構築されている

具体的なパーソナリティは以下のイメージです。
・3~5年以上当該部署に在籍しており
かつ、以下いずれかに該当する方
・クライアント部署で管理職として従事していた方
・プロジェクトなどに関わり部門責任者(Div.Head)と深くかかわっていた方

~アクションのポイント

このポジションにいる方は組織文化の理解が深いので、HRの立場として”部門が考えるAction”の実行に集中できる状態です。
また、”部門が考えるAction”がどういったものなのかも、すぐに把握することができるはずですので、行動を起こしながら早期にHRBPとしての信頼を獲得し、”対応するエリアLv.2”に進むことを意識することが重要です。
そして、部門の状況をよく知っている方だからこそ、HRの立場からのサポートについては、HRチームを巻き込むことで適切なサービスをクライアントに届けられるはずです。あなたが現場とHRチームの橋渡しになり、質の高いサービスを現場に提供することで、HR全体のプレゼンスを高めることを意識してみても面白いと感じています。

~注意点~

部門から異動してこのポジションからスタートする方は、すでに『HRBPではない立場で高い信頼を得ている可能性』が非常に高いです。そのため、特に以下の2点に注意しながら活動いただけるとよい考えています。
・部門の要望を鵜呑みにせず、HRの視点から課題を分析し、最適な解決策を提案する
・HRBPの役割として、”部門が考えるAction”をサポートする
HRの判断において、全体最適やリスク管理、過去および未来との整合性などが重視され、部門の立場からすると煩わしく感じる要素も多々あります。
部門の状況が理解できるからこそ、歯がゆいシーンがあろうかと思いますが、ぐっとこらえて、HRBPとしてのスタンスを崩さずに部門のサポートを実行してみてください。

最後まで読んでいただけた方はもうお気づきかもしれませんが、今回の内容は「HRBPに誰を任命するのか」というトピックにも応用できる内容です。どういったバックグラウンドをもっている人をHRBPとして着任してもらうのか。その際に、どういったサポートが本人に必要なのかということのイメージにもつながったのではないかと思います。
HRBP組織を立ち上げるタイミングなのか、新たに参加してもらう、欠員を補充するなど様々な背景がありますが、その際の参考にもしていただけると幸いです。

そして、この記事で記載していることは、あくまで汎用的な事例で、実際には様々な状況が複雑に関係していることもあります。押さえるべきポイントは記載していますので、こちらを参考に応用を加えながら、皆様の会社におけるHRBPの役割と照らし合わせながら、参考にしていただけると幸いです。



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