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薬と注射の備忘録(7) 『ローリスク・ハイリターンは虫が良すぎ』

薬には用法・用量というものが決まっているが、ここをずらして処方することがある。医者は処方をするとき、"Rp” と書くが、あれはレシピの略である。料理と同じで、分量にはアレンジが効く。
だがエビデンス・ベイスド・メディスンの時代では、推奨されていない薬の使用をすると後ろ指をさされかねない。これにさらに、保険診療という診療の枠が定められている。それらについて、どこまでならば逸脱してよいのであろう。医師の裁量は無限に広いわけではない。

だが現実には、逸脱した使いかたのほうが効くことがままある。たとえば用法上は一応夕食後とされているが、眠気を催す薬なので寝る前に飲んでもらって睡眠薬がわりにしてもらう、というようなものだ。

その手の薬の使いかたが報告されることがあるので、薬剤メーカーの勉強会では決まったように、「適用外の使用について言及されることがありますが、推奨するものではありません」という注意喚起がなされる。べつにメーカーを訴えたりはしませんよ。ちょっとうざったい。

また、用法が異なる処方箋を発行すると、調剤薬局から疑義照会の電話がかかってくることもある。あらかじめ、あえてそうしていますよというコメントを付けたほうがよいかもしれない。


いっそ「訴えないなら少しリスクもある効き目が期待できる治療をしますし、訴える可能性があるなら無難なことを型通りにやる治療をしますけれど、どっちがいいですか?」といった質問をして、患者が選べる制度にならないかな、などと思う。不寛容で好訴的な患者がいるせいで、リスクを恐れず積極的な治療を求める患者が割を食うというのは好かない。


Ver 1.0 2022/11/21


#薬
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