【怪談】 『禁煙』
「だからここは禁煙だって言っているじゃない」
僕はその薄暗い通りで、夕子という女にそう指摘された。
「ほら、そう書いてある」
「平成の遺物じゃねえのか」
そういいながら僕は、吸殻を放り、足で踏みつけた。
「ああー、ああー。そういうことするんだ。見損なっちゃうなー」
「なに言っちゃってんの。お前なんかに見損なわれたところで、こっちは少しも痛まないね」
僕はそう言って見せた。
「ドートク的とかそういう問題じゃなくて、美観の問題」
「ビカン?」鼻感、微缶、敏感……全然違う。
「ああ、美観ね。そういうことね」
「捨てたものがどうなると思ってんの」
「このへんはホームレスが多いからな。ありつくんだよ」
そう、やつらはタバコに飢えている。だからこんなものでも、平気で口にくわえる。
「ちょっとキモくなってきたよ」
夕子はそれほどでもなさそうだが、一応そう言った。禁煙中だからな、こいつは。だから僕にもうるさく言うんだろう。
「もっと楽しいことを話したいね」
「だけど、待ち合わせはここなんでしょ。目に入って仕方ないの」
「しゃあねえなあ。後始末ってのもカッコ悪くてね。他人になにか禁じられるってのは腹が立ってしかたがない」
「喫煙したのはそういう理由? 飢えていたわけじゃなくて」
「ま、そうかもね」
僕だって、理由なんか知らない。
「ま、上でも見ろよ。星がきれいだ」
「似合わないこと言っちゃって」
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上の文章では禁煙と書かれていますが、本当は違う言葉です。じゃあなにかって? それはちょっと、ここには書けませんね。
え? それじゃ判らない? はあ。。
じゃあ、あとひとつ書き換えた言葉があるので、それだけは書いておきますね。「吸殻」は「亡骸」を書き改めたものです。
これ以上の質問を禁止します
松之介さんに捧ぐ。(目指せ、【閲覧注意】!)