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学習理論備忘録(10) どっちの理由ショー
「帰属」について再度説明すると、
出来事A → 刺激B → 「Bの原因はAだ!」
という学習である。
勉強した → 成績が上がる → 「勉強したから成績が上がった」
てるてる坊主をつるした → 晴れる → 「てるてる坊主をつるしたから晴れた」
真実であろうがそうでなからろうが、帰属は起こる。
帰属についてこんな実験がある。刺激の種類はパブロフの有名な実験に寄せて、少し変えておこう。光刺激の後に食事を与えつづけ
光った → 食事が与えられる → 「光ったから食事が出る」
という学習が成立しているところに
光った、音も鳴った → 食事が与えられる
という条件づけをする。
音の後に食事を与えられれば、音だけでよだれを出すようになる、というのはよく知られている事実である。ところが、事前に 光 → 食事 のパブロフ型条件づけがあると、
「音が鳴ったから食事が与えられるのだ!」
という学習は成立しなくなる。これは順行阻止(forward blocking)と言われる。
いっぽう、少し条件を変えたこういうものもある。今度は最初から
光った 音も鳴った → 食事が与えられる
という2つの刺激に対する結果がある。
この後
光った → 食事が与えられる
というようにすると、次のような学習が成立するのだ。
「食事が出るのは、光ったからだ。音は関係ない!(キリッ)」
大事なのは後半である。
LEARNING AND BEHAVIOR THERAPYには、薬とリラグゼーションにより眠れた患者の例が挙げられる。上を踏まえれば、薬で眠れると帰属した患者も、リラグゼーションだけで眠れれば、薬で眠れるわけではない、と学習することができるということになる。
これを逆行阻止(backward blocking)という。
正しい推論に導く余地ができてきた。
不思議なのは、患者さんというのは、複数の薬を同時に出され、すべて一緒に服用していることになっている人でも、副作用の帰属をあまり間違えないことである。これは私の個人的な印象である。
一方、主要な効果については、正しく帰属されないことが多い。
おそらく適切に服用がなされていないとか、情報が他から入るといったことが影響していると思われるので、順行阻止・逆行阻止だけからは論じることはできないだろう。主作用には、すぐに現れないものが多いこと、またそれが微々たる効果しかない場合があることも関連していると思われる。
そもそも医者が知っていることが事実に反することだってあるかもしれない。医者は薬の効果を本で知り、患者さんんは体で知る違いも大きい。
また根拠のない帰属を持つという点では、医者も患者さんに負けず劣らずである。薬や処方や診断における医者の迷信行動は、この時代にあっても蔓延している。
それでも、内服や健康法に対する誤った帰属を修正するためには、上記の研究結果を踏まえた服薬指導なり疾病教育なりが必要だろう。
また、なにより最初に処方する際、大事な薬についての情報を、単に正しいというだけではなく、すぐれたプレゼンテーションとして提供することが重要だと思われる。
医師はまだまだ、迷信を広める各種媒体に勝っているとは言いがたいい。熱意や真実だけではなく、戦略が必要である。
Ver 1.0 2020/8/21