薬と注射の備忘録(8) 『痛みも取れるが認知症も予防』
薬には用途というものがあるが、これが本来の用途とずれることがある。かのバイアグラは高血圧の薬として開発されたにもかかわらず、今ではすっかり媚薬のようになってしまった(正しくは性機能改善薬、か)。思わぬところにキイてしまったわけだ。
近所の教授が勉強会で教えてくれたのだが、炎症を抑える薬を毎日使っているリウマチ患者は、アルツハイマー型認知症になりにくいという。
また、ある種の胃薬が認知症を増やすとか増やさないとか議論がされてきたのだが、最近の研究ではなんと認知症を減らすという結論が出ている。これも、薬が胃以外の炎症を抑えることができるということと関連しているらしい。ちゃんと前向きコホート研究で示されたたしかな話である。
話は認知症にとどまらない。実はあらゆる精神疾患・慢性の神経疾患が、炎症が原因だという神経炎症仮説が提唱されている。今後精神科の病気は、炎症を抑える薬で治せるようになるかもしれない。脳に影響する薬を飲むのを歓迎しない患者も、「肺炎や胃炎に効く薬(ついでに脳にも効く)」なら内服しようと思うかもしれない。朗報である。
すると、どんな精神疾患も、抗炎症剤・瞑想・歩く、で同じように治す時代が来てしまうのか? うーん、診断がいらなくなるな。
Ver 1.0 2023/3/22
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