読んだつもり? (4) スミスらの判断は甘かった?
今回は『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』
アメリカの立場から、日米両国の視点からひとつの戦争を描いたのが意義深いクリント・イーストウッド監督『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』。硫黄島を巡る作品はたくさんある中で、これらの映画はかなり史実に近いものなのだろう、とは思っている。どちらもまだ観ていないが。
精神論だけでは戦争には勝てない。「日本軍は大和魂だなんだと根性論をふりかざしていただけで、アメリカにまったく歯が立たなかった」そんなイメージを戦後の日本人は共有しているように思われる。だが少なくとも硫黄島の戦いについてはそうとも言えない。
米軍のスミス、ターナーらは硫黄島を
「5日で陥落させる」
と記者会見で言ったが、実際の戦闘は1ヶ月にも及んだ。ここまで長引くと、とんだ誤算だと言われそうだ。
こういうことを知ると今度はこの戦いについて「米国が日本をなめて充分な用意をしなかったのだ」という印象を抱いてしまう。だがアメリカの兵站の用意周到さは世界一である。ぬかりはあるまい。『硫黄島 太平洋戦争死闘記』(R.F.ニューカム)を読むと、当時、圧倒的な量の必要物資を備えていたことが知れる。
『サラリーマン金太郎』には、こういったどんな土地でもステーキを食えるようにして仕事をするアメリカ人のスタイルが「嫌いだ」というシーンがあるが、私は計画性もなく民を送り込んで飢えさせた日本のお偉いさんのほうが好きになれない。文字通り、「腹が減っては戦はできぬ」のであり、その他兵の数も重火器の量だって欠かせない。
硫黄島の戦いが予想以上に長引いたのは、日本の栗林忠道中将があまりに秀逸であったからで、アメリカの戦略にそれほどの問題はなかったのではないだろうか。だが硫黄島攻撃の必要性が充分に理解されなかったこともあり、太平洋艦隊司令長官チェスター・ニミッツは米国内で大きく批判された。
と、もっと多くの戦死者を出したはずのマッカーサーをなぜか持ち上げられている。
この先に為すこと、すでに為したことについて、人は適切で客観的な評価がなかなかできないもののようだ。
さて、栗林中将率いる日本軍は、どれほど善戦できたと言えるのだろう? それを客観的に評価できないものだろうか?
栗林中将が兵隊に配った『敢闘ノ誓』の中には
というのがあった。なるほどアメリカと渡り合うにはそれくらいのことをしなければ無理である。では実際にはどうであったか? なんとこれを測ることのできる指標がある。ランチェスターの法則というものを用いて「交換比 E」というものを割り出せばよい。日本兵一人の攻撃力が米兵何人分の攻撃力であったのかが求められる。
いくつであろう? 硫黄島の戦いの研究は複数あるが、それらの計算するところによると
であるという。一人十殺とまではいかぬとも、それに迫る結果を出した栗林忠道中将、たしかに名将である。
Ver 1.0 2023/2/23
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