学習理論備忘録(41) 『ドキドキ・ハアハア・ブルブルをどう止める?』
改めてパニック症についてまとめておく。
パニック症の病理についていくつかおさらいを。
・Klein はパニック発作について 「呼吸ができなくなる!」という判断をしてしまう脳の誤作動として説明した。窒息発作に対する恐怖症というものも実在する。呼吸困難を伴うパニック発作については、このような「自分の体についての認知」によって起こる、という説明が可能な場合がある。
・Beck らはパニック発作の原因は、たまたまなんらかの理由で心拍数が上がった際の体の変化に対して「これはまたパニックになる兆しだ!もう終わりだ!」という破局的認知をしてしまうことだとする。この説明は、一度パニッック発作を起こしたことのある人がまた発作を起こす場合について、ありうるものである。
・心拍数の増加であれ、呼吸数の増加であれ、体の微細な変化をパニック発作の兆候だと誤解してしまう。やがてパニック発作の大半が、「パニックになるかもしれない」という予期不安の下で起こるようになる。
・するとパニックを起こしそうな状況そのものを回避する
・その結果、「心拍数が増えてもよく眠ったときはパニックにならない」「呼吸が荒くなっても、運動をしているときならばパニックにはならない」といった条件静止 A+/AB- が成立しない
・回避による不適応が抑うつ状態を招く悪循環に至り、パニック症患者となる
回避が病気を維持させているのであれば、回避をやめることが治療につながる。
また条件制止を使うなら、「心拍数が上がったときでもこのぬいぐるみを抱っこしているときにはパニックは起こらない」という学習を増やすことによって、発作を起こさない手がかりを作る、などという治療方法も作れるかもしれない(この治療法は理論上のもので未確立である)。
ここまでが以前に述べたことなのだが、上記の病理の説明で、パニック症の成立に認知が大きく関与していることは見逃せない。
この認知の過程に焦点を当て、問題をつまびらかにし、介入のポイントを探っていく治療法として認知行動療法がある。
認知行動療法では、とくに初期に(その後も必要があれば何度も)心理教育を行う。上記のような病理について、患者に学んでもらうのである。まず病理の理解をすることそのものが治療的である。
Ver 1.0 2022/4/6
学習理論備忘録(25)でパニック症のことを説明しています。
前回の(40)はこちら。