『お母さん、娘をやめていいですか?』と『おしん』を超えて
親の偏愛が子に害をなすことがあるとされる。子に良かれと思っての行為だけに、親の立場を考えればせつない話であり、子の立場を考えれば良かれと思っているからこそ質が悪いとも言える。毒親とは残酷な言いかたであるが、なるほど毒という文字には母という言葉が隠れている。
かつてNHKで『お母さん、娘をやめていいですか?』というドラマをやっていた。
白雪姫の物語構造を、白雪姫がなされたことをひっくり返すことにより現代蘇らせるという、よくできた設定であった。
母が娘に毒を禁止し、城まで建ててあげようとすることこそが毒になっている、という話なのである。
だからラプンツェルのほうが似ているのかもしれない。もう少し詳しく述べると、斉藤由貴演じる母は娘に「りんごは毒だから食べてはいけない」と言う。替わりに毎日スムージーを飲ませるのだ。健康食品しか食べさせないというのは毒親あるあるだ。
白馬にこそ乗っていないものの、「君は過保護だ」と言って外の世界へと誘い出してくれる青年が現れる。恋愛を絡めた居場所探しは、少女漫画だ。それは、使者が主人公を冒険に連れ出すヒーローズジャーニーと呼ばれる物語の、主人公が旅に出ることを迷うパートまでをメインに引き延ばす。
「ここじゃないどこか」=終の住処だ。その先を引っ張るとグダグダした話となってしまう。おとぎ話の続編パロディーはたいていつまらない。同じNHKで言えば、少女編でやめておけばよかった『おしん』のようになってしまう。
ヒーローズジャーニーは内面の成長の物語でもある。試練を乗り越えて己の道を切り開くヒーローは誇らしげだ。だが過保護から脱することがテーマの物語は、片思いをする母をふることができるか、いかにふるか、だけであるから、目的を果たしてやっとラクになるというだけで、宝物までは手に入らない。また、手放した喪失感も大きい。
『お母さん、娘をやめていいですか?』はどんでん返しもなく、きれいすぎる終りかたをした。母の成長がすんなり起きてしまった。そもそも親離れ・子離れについて「離れればいい」は基本だけど、それだけで終われるというのはいくらなんでも安易じゃないか。めでたしめでたしとはおめでたすぎる。
それならいっそ娘からも母からも成長という要素を取り去ったほうがましであった。ホラーとして立派に楽しめただろうから。また、そのほうがよほど現実に即している。
できれば居場所探しの少女漫画から、成長物語のヒーローズジャーニーへと、うまく繋げないものかねえ。そう考えたときに、見つかったものがあった。次から次へとゴールを変えればいいんだ!
ということでNHKでは『プリンプリン物語』が最強。