『ミステリー・シーン』掲載記事「密室シーン」
島田荘司先生の『本格からHONKAKUへ 21世紀本格宣言Ⅱ』を読んでいたときのことでした。この著作には歴代の「本格ミステリー・ワールド」の巻頭言が収録されているのですが、「本格ミステリー・ワールド2011」の巻頭言「2011年の転換点」の中に、個人的に興味を惹かれる記述がありました。その箇所を以下に引用してみると――。
そのパグマイア氏が、「ミステリー・シーン」七月号掲載の「密室シーン」という特集記事を送ってくれた。英語で書かれたこの記事が、日本のミステリーへの好感や敬意に充ちたもので、一読、新日台湾の推理雑誌かと疑ったほどである。(中略) 白人以外の地域に目を向けた複数の専門家を集合させ、このロング・インタヴュー「密室シーン」は、これまでによくあったアングロサクソン世界ばかりを眺め渡したものではなく、その外側に位置するフランス、日本、またアジアにも俯瞰の目を向け、ミステリーの興隆分布をグローバルな規模で把握をこころみた、意義深い記事になっている。(中略) 新世紀、英語圏にようやく出現したこの記事は、わがミステリー史に記憶されてよい快挙といえそうである。(「2011年の転換点」『本格からHONKAKUへ 21世紀本格宣言Ⅱ』収録)
パグマイア氏とは、ニューヨークに拠点を置く出版社 Locked Room International (以下「LRI」)の創始者 ジョン・パグマイア(John Pugmire)氏のことです。もともとフランスの作家、ポール・アルテの英訳版を出版するために始められたのが LRI でしたが、島田、パグマイア両氏の尽力により、日本の本格ミステリーの英訳版を出版し始めることとなりました。現在では、綾辻行人先生の『十角館の殺人』(『The Decagon House Murders』)や、有栖川有栖先生の『孤島パズル』(『The Moai Island Puzzle』)、我孫子武丸先生の『8の殺人』(『The 8 Mansion Murders』)が英訳され出版されています。
文中で言及される『ミステリー・シーン』("Mystery Scene Magazine")は、1985年に創刊されたミステリー専門誌で、年に5回発行されています。その2010年7月号に掲載されたのが、「密室シーン」という記事である、とのこと。島田先生が絶賛されているので、ぜひ読んでみたいと思い調べたところ、記事の PDF がネット上で公開されていました。LRI のホームページにリンクが貼られていたので、公式の記事とみて間違いないと思います。
読み進めるうちに――現在の視点からみると、記事が出たときとは多少、国内・国外のミステリにまつわる状況は異なっていますが――資料としての価値が大きいと判断し、邦訳も見当たらないようなので(あったらすみません)、手ずから翻訳してみることにしました。例によって、あくまで素人の趣味での翻訳になるので、お読みになる際は、誤訳・文章の拙さをご理解いただき、あくまで参考程度にご覧ください。邦訳が存在する作家・作品に関しては、なるべく、カタカナ・邦題で表記しました。邦訳が存在しないものは、原語あるいは英題での表記としていますので、あしからず。
密室シーン
インタビュアー:ジョナサン・スコット
インタビュイー:ジョン・パグマイア、ブライアン・スクーピン
今日において、もっとも重要な密室物の書き手は誰でしょうか?
ジョン:西洋だと作品の数とパズルの質からいって、疑問の余地なくポール・アルテだろうね。彼は長編を37作書いているんだけど、その作品数は、ジョン・ディクスン・カーでさえ思いつかなったアイディアを、いまだに発見し続けているという、彼の独創性を証明するものだ。ポール・C・ドハティ(ポール・ハーディングとしても知られていて、少なくともほかに4つのペンネームを持っている)のほうが、多作ではあるかもしれないけど、私にしてみれば彼の本には、ブライアンが言うところの「ほう!」と思わせてくれる瞬間がないんだ。真に満足のいく解決がなされたときであってもね。けれど、ポール・アルテの作品には確かにそれがある。ビル・プロンジーニは、とても良い密室物をいくつか書いているけれど、影響力があるかといえば物足りないね。
東洋だと、島田荘司だ。作品数とオリジナリティに加えて、その時代の作家たちに及ぼした影響の面からみてもね。
ブライアン:ポール・アルテは今日において、真剣に密室物に取り組む唯一の作家だ。ほかにも良い話を書いてくれると期待している作家はいるよ。クリストファー・ファウラーや、デイヴィッド・レンウィック(『奇術探偵ジョナサン・クリーク』シリーズの脚本家)、それにビル・プロンジーニとかね。
ジョン、あなたは日本とフランスにおける密室物の書き手に関するエキスパートです。そこで、これらの国でのジャンルの歴史を少し教えていただけますか。
ジョン:エドガー・アラン・ポーが始めたジャンルではあるけれど、まず他国に差をつけたのがフランスだ。ガストン・ルルー以前にも、ヘンリ・コーバンという作家がいた。彼はザングウィルより6年早かったし、彼の作品の探偵は、シャーロック・ホームズに10年先んじていたんだ。モーリス・ルブランのルパンは、とてもポピュラーだ。G・K・チェスタトンのブラウン神父や、フランスの黄金期と同じ時代だね。ベルギーのフランス語話者たちからは、たくさんの優れた書き手が出てきたし、彼らはいくつもの名作を残した。ボワロー・ナルスジャックという名を名乗った、ピエール・ボワローとトマ・ナルスジャックや、スタニスラス=アンドレ・ステーマン、ノエル・ヴァンドリーらはみんな、密室物の長編(フランスでは密室物の短編は、ほんのわずかしかない)を書いて、ベストセラーになっている。ガストン・ボカやマルセル・ラントームがそうしたようにね。その流れに傷をつけたのが、ベルギー出身の作家、ジョルジュ・シムノンだ。彼は警察小説(ポリス・プロシーデュラル)の父で、今でいうところの「コージー・ミステリ」に一人対抗していたんだ。アメリカとイギリスでは、60、70年代には密室物の長編は次第に下火になっていったんだけど、80年代初期のフランスでは、リバイバルが起きたんだ。ポール・アルテの登場によってね。
歴史的にみると、日本は密室物に対する反応が遅かった。というのも、これはシンプルな理由からで、たいていの日本の建築物には鍵のかかるドアではなく、障子や衝立が使われていたからなんだ。だから日本では、「足跡なき殺人」という不可能犯罪物への注力があった。江戸川乱歩(エドガー・アラン・ポーの発音に基づくペンネーム)は、1925年時点のこのジャンルにおいて、最初の卓越した日本人作家だ。1940年代には横溝正史が、評論家が言うところの、日本初の密室物を書いた。この作品において、事件は障子と衝立がある伝統的な日本家屋の中で起きるんだ。そしてその家の周囲には雪が降り積もっている。このベストセラーとなっている作品の探偵は、金田一というんだ。
ちょうどほかのところでも、散発的な動きが60、70年代にはあった。そして1981年、島田荘司の傑作『占星術殺人事件』が出版されたんだ。その数年後、「新本格」が誕生して、探偵小説における古典的なルールの復古を主張した。「新本格」の作家の一人である綾辻行人は、『十角館の殺人』のキャラクターの口を借りて、このように述べた。「僕にとって推理小説とは、あくまでも知的な遊びの一つなんだ。小説という形式を使った読者対名探偵の、あるいは読者対作者の、刺激的な論理の遊び。それ以上でも以下でもない。だから、一時期日本でもてはやされた "社会派" 式のリアリズム云々は、もうまっぴらなわけさ。1DKのマンションでOLが殺されて、靴底をすりへらした刑事が苦心の末、愛人だった上司を捕まえる。――やめてほしいね。汚職だの政界の内幕だの、現代社会のひずみが産んだ悲劇だの、その辺も願い下げだ。ミステリにふさわしいのは、時代遅れと云われようが何だろうがやっぱりね、名探偵、大邸宅、怪しげな住人たち、血みどろの惨劇、不可能犯罪、破天荒な大トリック……絵空事で大いにけっこう。要はその世界の中で楽しめればいいのさ。ただし、あくまで知的に、ね」と。
日本の不可能犯罪小説は、ほとんど英語には訳されていないけど、『占星術殺人事件』はされている。この作品に出てくる密室の謎は、並なんだけど、プロットの中心には、探偵小説の歴史からみても、非常に残忍で巧妙なレッド・ヘリングが据えられているんだ。ついでに言っておくと、日本の探偵小説には「密室講義」が出てくるものが、少なくとも4つある。現在、日本でカーの役目を継ぐ二階堂黎人は「足跡なき殺人講義」を、自身の長編の中でやっている。
ジャンルがいまだに根強く残る一番の理由は、一流の書き手たちが、このジャンルを愛し、信じているからだと私は思う。彼らの情熱が新たな支持者を生み、ムーブメントを高めているんだ。日本の場合だと、要因がもう1つある。それは若い世代向けの漫画があることだね。それらには、もっぱら密室の謎が出てくる。だから、新たな世代の読者が生まれているんだ。
現代において、密室物を書くもっともアツい作家は誰でしょうか?
ジョン:アルテと島田を除けば、それはデイヴィッド・レンウィックだと言わなければならないだろうね。彼は『奇術探偵ジョナサン・クリーク』シリーズの脚本を書いていて、あまたのアイディアを密室物のジャンルに取り入れている。絶えず、巧妙で謎に満ちたプロットを書いてね。このシリーズには、タイトルにもなっている奇術を考案する男が出てくる。驚いたことに、このシリーズが出たあとでも、イギリスで密室物への興味が復活することはなかったんだ。
ブライアン:デイヴィッド・レンウィックは、だいたい毎年、少なくとも一つはスペシャル版の話を書いているように思える。それらはいつも面白いし、不可能犯罪物として相応しい雰囲気作りがされているね。彼の手がかりの撒きかたは素晴らしい。彼は、視聴者が密室物のファンであるか否かに関わらず、大衆を楽しませるものを作り出すことに成功している。それをやったミステリーの書き手は、G・K・チェスタトン以来、彼が初めてだね。
ポール・アルテは、自身の作品の舞台を過去に設定し、古典ミステリ小説の雰囲気を作り出しています。これは、どういった理由からなのでしょうか。
ブライアン:ポール・アルテは、とりわけ彼がかつて親しんだ、カーやそのほかの作家たちの古典ミステリに敬意を払って作品を書いている。だから彼からすれば、そういった作品の舞台を真似ることは極めて自然なんだ。ほかの作家たちにとっては、それは雰囲気であったり、犯罪科学の問題だけどね。あまりにも多くのミステリが、科学的に解決されうる。昔ながらの推理を必要とするミステリにとっては、新しい科学は、作品から排除されなければならないんだ。もっとも、これは作家の力量についてのコメントになるかもしれない。ミステリという形式にとって、必要とされる要素に反対する作家もいるからね。
ジョン:同じような理由から、彼のシリーズ探偵の作品舞台はすべてイングランドに設定されている(ポール・アルテにはシリーズ探偵として、犯罪学者のツイスト博士と、エドワード7世時代の、芸術愛好家であるオーウェン・バーンズという2人の人物がいる)んだ。彼はカーの『囁く影』をティーンエイジャーのときに、偶然読んで夢中になった。フランスで手に入るすべてのカー作品を貪るように読み、密室物のミステリを書こうと決めたんだ。カー作品のような、中世風の雰囲気を持つ、イギリスの田舎こそ、完璧な舞台だと彼は思ったんだね。彼は構造やフェア・プレイという側面から、古典ミステリを愛している。場所に関しては、彼はツイスト博士にこんなことを言わせたりもする。「我々はいつだって、やましい集まりを知っている。それは社会だ」とね。いくつかあるアルテのノン・シリーズの作品では、舞台が古代のクレタ島に設定されている。これもまた、彼の場所への情熱の表れだろうね。
密室の問題はいまでも、現代犯罪小説の中心になり得ると思われますか。 あるいは密室物は、基本的に古典の探偵小説に適したものなのでしょうか?
ジョン:ジョン・サンドフォード(『夜の獲物』)や、リー・チャイルド(『Running Blind』)、ダグラス・プレストン&リンカーン・チャイルド(『Brimstone』)らの作品をみれば、しかるべき不可能犯罪状況を現代スリラーに差し込むことは可能だと分かる。けれど、密室物のミステリは、今のアメリカでは市場がないんだ。評判になって、密室物やほかの本が注目されればいいんだけど、出版社は密室なんて時代遅れの代物とみなすだろうね。
ブライアン:今であっても昔であっても、密室の謎や古典的な黄金時代型のパズルが、現代小説の中心になり得ない理由はない。新しい芸術形式が突然ポピュラーになるときはいつだって、先駆けて実践していた者たちはまだ洗練されてはいないものだ。1920年代、ミステリ小説の出版社が読者の需要を満たすために設立された。彼らは可能な限り需要に応じた。作家たちは新たな種類のミステリを書き、新作を年に1、2作は出して、常にテーブルに料理を並べておくという要請に応えたんだ。新規参入者が下手であるのは自然なことだ。同様に、たいていの70年代初頭のディスコ・ソングや、80年代のグラフィック・ノベル、40年代のテレビ番組は、質の低いものが書かれ、制作された。けれど本来的には、こういった芸術の基本的な形式に悪いものなんてないよ。また、人口に膾炙した良いディスコ・ソングが、今日書かれ得ない理由もない。実際、それらは単純に、もはやディスコ・ソングとして言及されなくなっているだけだ。
先に述べたように、『奇術探偵ジョナサン・クリーク』のデイヴィッド・レンウィックは、現代でも話の中心に密室の謎を据えることが可能であると示しているよ。どうして、それができないだなんて風説が続くのか? それはシンプルに、密室の謎を中心に据えた話を書くことは、普通の話を書くよりも難しいからだ。良い小説を書きたいとだけ望む作家には、もう充分な厄介ごとがある。――すさまじく困難なことがね。それに良い密室の謎を加えるよう求めるなら、作家の困難はより増すことだろうね。また同時に、密室が出てこなくとも、素晴らしくて面白いミステリはある。心理描写に重きを置く、新たな潮流がポピュラーになり始めたとき、大きな影響力を持つ、評論家であり作家であるジュリアン・シモンズと、彼のような人たちは、こんなふうに宣言することに最大の興味があったようだね。古典的なミステリは廃れて、自分たちが書くような作品の需要が高まっている、とね。でも実際のところ、現代においてはどのタイプのミステリも成功を収めている。それは、今もこれからもそうだろう。作家たちに求められているのは、良い物語を書くことだけだ。
ジョン、ポール・アルテの作品をさらに英語で出版しようという、あなたの取り組みについて少しお話くださいますか。ポール・アルテ作品の何が、あなたをそこまで動かすのでしょう。
ジョン:とてもシンプルなことだけど、私はこのジャンルが好きだ。叙事詩が精神に訴えかけ、ロマンティックな話が胸に訴えかけるように、不可能犯罪小説は知に訴えかけてくるんだよ。ポールの作品は、一流の知的な挑戦だ。『狼の夜』が売り切れて、著名な批評家たちから、素晴らしいレビューがいくつか集まったのは、嬉しい驚きだったよ。もっともよく知られているのはSFの、知名度が少しもない、小さなインディペンデント系の出版社を束ねる私としてはね。けれど、アルテの作品を出してくれる出版社を見つけるという、私の取り組みは挫折しているんだ。それはジレンマだった。つまり、主流の出版社は、彼の古典的なスタイルには目も向けないし、古典文学のニッチな出版社は、現代作家を扱うことができない、という状況だね。ポールの問題というのは、こういう言い方をすれば、彼が存命である、ということだった。
ここ10年で出た、もっとも素晴らしい密室物を1作挙げるなら、何でしょうか。
ジョン:私が読んだものに限って話すと、それは英語かフランス語で書かれたものになる。私は日本語が読めないから、日本の作品に関しては、中国人の友人がしてくれる要約に頼っているんだ。ポール・アルテの作品を中国に紹介したウー・フェイのような友人のね。Jean-Paul Török の『L'Enigme de Monte Verita』(『The Mountain of Truth』2007)を読んだときは、とても気に入ったから、すぐに翻訳を始めたよ。ここ10年で読んだ中では、最高の密室物だった。ポール・アルテの『La Ruelle Fantome』(『The Phantom Passage』)と『La Chambre d'Horus』(『The Chamber of Horus』)があったにも関わらずね。Török の文体は格調高く、学識に満ちていて、アカデミー・フランセーズに表彰された彼に相応しいものだ。彼は聡明だし、ジョン・ディクスン・カーの熱心なファンだ。この作品は、格調高い文体とカー的な要素が上手く組み合わされていて、まさしく愛ゆえに書かれた作品だね。プロットは、カーのいくつかの作品から借用していて、カーの作品に出てきそうな人物が謎を解決する。でも中心となる密室は、独創的で美しい(私はいまだに、この作品を出版してくれるところを探している)んだ。
ブライアン:まったく予期しない傑作が出てくると、嬉しいものだね。
マニアたちの間で評判になっている新しい作家はいますか。
ジョン:クリストファー・ファウラーという作家に、「ブライアント&メイ」シリーズというのがある。老いぼれ探偵の2人組が出てくるシリーズなんだけど、これは注目を集めているね。作者は自分の作品を説明するのに「不可能犯罪」という語を使うんだけど、私は、1作目にはこの語を使う資格はないと思った。それが『Ten-Second Staircase』で近づき、そして『White Corridor』で、まったくの独創的で面白い不可能犯罪を描いてみせた。彼の作品は素晴らしく機知に富んでいて、それがロンドンの歴史にまつわる魅力的な知識と組み合わされているんだ。
ハル・ホワイトの『ディーン牧師の事件簿』は、良い評価を受けた短編集だ。この1作目は、幸先の良いスタートを切ったけれど、これを超える作品がこれから求められてくるだろうね。そうすればもっと話題になるだろう。
英訳版が出版されている日本の作家の中で、誰を密室ミステリのファンに勧めたいですか。
ジョン:私が知る限りでは、英訳されて出版されている、日本の密室ミステリは2作だけだね。島田荘司の『占星術殺人事件』と高木彬光の『刺青殺人事件』だ。どちらも悪魔的な巧妙さに満ちていて、読む価値があるよ。忠告しておくと、ショックを受けやすい人や、臆病な人向けの作品ではないよ。首切りやバラバラの死体が普通に出てくるし、殺人の動機も異常なほどに無情だ。この2作品は、「過激な密室物(Extreme Locked-Room)」とでも考えられるね。
日本の不可能犯罪物を味わう1つの方法は、漫画を読むことだ。それらスタイリッシュなグラフィック・ノベルでは、主人公はひっきりなしに驚いた表情をして、やたらと汗をかいているんだ。主として若い読者に向けたものだね。『金田一少年の事件簿』の17作品(それらにはもっぱら密室の謎が出てくる)が英語で出版されているんだけど、これはとてもよくできているし、フェアに手がかりが提示される物語なんだ。『金田一少年の事件簿』シリーズは、それぞれの話が1つあるいはそれ以上の、日本の密室物の傑作をもとにしていると言われている。FILE2「異人館村殺人事件」は、疑いようもなく『占星術殺人事件』を、FILE15「魔術列車殺人事件」は、島田のほかの話をもとにしている。そのほかにも密室を扱う漫画に『探偵学園Q』や『名探偵コナン』がある。けれど『金田一少年の事件簿』が、ページが240近くあるのに比べて、この2つは短い。だからプロットが望ましいレベルにまで高められていないんだ。それはそうと、『金田一少年の事件簿』で、若々しい探偵が、金田一という名を名乗っているのは、彼がとある偉大な名探偵の孫だからなんだよ。
ポール・アルテのほかに、密室物を書くフランスの作家はいますか。現時点で、英語で出版されている作家でお願いします。
ジョン:私が知る限りではいないよ。今のところポール・アルテの英訳されている作品は『狼の夜』という短編集が1冊だけだし。ジャンルの最盛期のものであっても、英訳が出ているのは、ほんのわずかだ。ボワローの『Le Repos de Bacchus』が『The Sleeping Bacchus』(これは彼の作品とは考えられていない)として出版されているのと、これより優れた、ボワロー・ナルスジャックの『Ingenieur qui aimait trop les chiffres』が『The Tube』として出ているくらいだ。まさしく機会の損失だね。英訳されていない作品の中にも、大いなる楽しみをもたらしてくれものがあるというのに。
密室ミステリをどう定義しますか。
ジョン:言うまでもないことだけど、不可能犯罪が起きて、フェアに手がかりが提示され、もっともらしく謎が解決されるのが、密室ミステリだ。良い密室ミステリを書くのは難しいよ。誤魔化しが利かないから。よく分からないキャラクターに曖昧な動機を与えて、物語の最後に、どこからともなく登場させることもできない。なぜなら、殺人がいかにしてなされたか説明しないといけないし、読者に受け入れられる結論を出さなければならないからね。私の意見では、名のある、ちゃんとしたミステリには、秘密の通路や合鍵、嘘をつく証人、超自然的な力、空飛ぶ人間、小人、ブービートラップや各種動物は出てこない。
ブライアン:私が定義する密室ミステリは、こんな感じだ。人が何か工作をするのに、部屋の内側にいたように思えるけれど、見たところでは人が出入りするのが不可能な状況。これが密室ミステリだ。
不可能犯罪全般の話をしよう。それは、可能だとは思えない犯罪行為が起こることだ。不可解な消失や、足跡のない砂や雪、あるいは被害者と接触することなく起こされる死、などだね。一見すると毒を摂取させる方法がないように思えるが、被害者が毒殺されるケース。これも不可能犯罪に挙げられるね。
もちろん不可解ごとが、犯罪でなければならない理由はない。だからこそカーは、あらゆる事象をカバーするために「奇跡の謎(ミラクル・プロブレム)」という語を造った。その語が、もっとも不可能犯罪を包括する説明になっているけれど、あまり記憶されてはいないね。
『ミステリー・シーン』について、少しお話しくださいますか。
ブライアン:『ミステリー・シーン』はもともと、ミステリや犯罪といったジャンルの、ある種、内輪の雑誌として作られたんだ。そこには作家たち向けに、契約や本の情報が収められていた。ケイト・スタインと私が2002年に『ミステリー・シーン』を買収したんだけど、そのとき我々はターゲットを、ミステリーやスリラー、犯罪物のファンに変えた。年に5冊を発行――季刊4冊と年末号――していて、そういったジャンルにまつわる、インタビューやエッセイ、オピニオンやレビューを収録している。『ミステリー・シーン』は、北アメリカの新聞雑誌類の売店で入手可能だ。イギリスやヨーロッパ、アジアにも定期購読してくれている人たちがいるよ。
まだ密室物への強い市場はあるのでしょうか。
ジョン:アジアでは、とても市場が強いよ。日本がそれを率いているね。中国の市場はまだ揺籃期だけど、大きくなってきている。フランスの市場は、まあまあ活発だ。たぶんポール・アルテの存在と、ロラン・ラクルブのたゆみない努力のおかげだろうね。ロラン・ラクルブは、15冊のアンソロジーを編纂し、(パートナーのダニエル・グリベルとともに)数えきれないほどの翻訳をして、また一級の、カーの伝記と著書目録を作っている。
悲しいかな、アメリカはまだ警察小説に固執している。それも風変わりな環境に話の舞台を据え、「社会犯罪」を扱い、猫好きな探偵や、公園の管理をする探偵、シェフの探偵といった、専門家たちにそれを解決させるのが好きみたいだ。
密室ミステリに特化した、アメリカの出版社はあるのでしょうか。
ブライアン:ないね。けれど、ランブル・ハウスや、リチャード・シムズ・パブリケーション、クリッペン&ランドルらはみんな、ラインナップに平均よりも多くの密室ミステリを揃えている。ランブル・ハウスとクリッペン&ランドルは、黄金時代のミステリを出しているんだけど、それらの多くは密室物なんだ。リチャード・シムズは、密室物の短編で有名な作家、アーサー・ポージスの作品に注力しているね。
ジョン:クリッペン&ランドルは、公正に分けて出版をしているね。3つほど例を挙げれば、エドワード・D・ホック、ジョゼフ・コミングス、クリスチアナ・ブランドらの作品集だ。ヴィンセント・コーニアのも、もうすぐ出るみたいだね。
全時代の中で、カーを先駆的なマスターとみなしますか。
ジョン:ガストン・ルルーにG・K・チェスタトン、トマス・ハンシューらはみんな、カーよりも先だ。カーはルルーの『黄色い部屋の謎』を称賛しているし、チェスタトンとハンシューの熱心な読者でもある。彼は若い時期に、イングランドに住むほかのアメリカ人作家の本も読んでいたんだよ。私に言わせれば、チェスタトンは、カーの唯一のライバルだ。けれど、チェスタトンが密室物を書いていないという事実だけを考慮するなら、軍配はカーに上がるだろうね。
ブライアン:彼だけがパイオニアというわけではないね。ほかにもザングウィルやチェスタトンが、彼よりも先にいたのだから。だけど彼は、ほかの作家たちよりも、ユニークな謎と解決を作り出した。さらに『一角獣の殺人』や『ユダの窓』、『九人と死で十人だ』なんかを書いていた絶頂期には、彼はその時代における最高のミステリ作家の1人だった。素晴らしい手がかりの撒きかたや謎に加え、彼は実に恐ろしくサスペンスフルな雰囲気を作り出すことができたんだ。
密室の謎からは離れて、お訊ねしたいのですが、現代の犯罪小説に何か意見はおありですか。事実に徹し、手続きを踏む犯罪科学の捜査員たちが重んじられる流れに、あなたがたは興醒めされているのでしょうか。
ジョン:ジョナサン・ケラーマンや、パトリシア・コーンウェルの初期作は好きだったし、キャシー・ライクスの初期作も良かった。ジョン・サンドフォードの「獲物」シリーズや、リー・チャイルドの「ジャック・リーチャー」シリーズは、絶えず高い水準を維持しているね。ダグラス・プレストン&リンカーン・チャイルドは、話に超自然的な要素をほんのり加えている。あまり多くの密室物が英語で出版されていないこともあって、私には警察物やスリラーを読む時間がたくさんあったんだ。
ブライアン:この世にはいつだって、素晴らしい犯罪小説が、たくさんある。私は古いものと新しいものを、だいたい半分ずつ読んだよ。新しい作家たちのうちでも、リー・チャイルドは傑出している。リサ・ラッツはワンダフルで、マーク・ハッドンの『夜中に犬に起こった奇妙な事件』は、すごく良いし、ダグラス・プレストン&リンカーン・チャイルドは非常に優れている。ジャスパー・フォードの小説は独創的だね。もし科学捜査物や警察小説に興味がわかない――私みたいにね――ならば、読むべきものは、ほかにもたくさんある。けれど、それらの小説が駄目だというわけじゃない。――それはまた別の問題だね。
もし密室物の長編と短編をそれぞれ1作選んで、無人島に持って行くとしたら、何にしますか。
ジョン:英訳版が出るとすれば、二階堂黎人の4000ページを超える、4巻だての『人狼城の恐怖』を持って行くよ。この作品には10もの不可能犯罪が描かれ、密室講義が1つ出てくる。彼の描いた作品を直接読んだことはないんだけど、「密室講義」と「足跡なき殺人講義」に加えて、彼なりの「テニスコートの謎」は、要約されたものを読んだ。それらは私の思うところでは、カーを超えている。それに10もの不可能犯罪が出てくるんだから、悪いわけないだろう?
もちろんアンソロジーや短編集は許されるよね? 短編を1本だけなんて言わずにさ。アンソロジーなら、エラリー・クイーンの『101年のお楽しみ』にするよ。これには49の短編ミステリが収録されていて、そのうちの12作が密室物なんだ。収録作のすべてが1941年以前に書かれているんだけどね。短編集なら、クリッペン&ランドルから出ている『サム・ホーソーンの事件簿』がいいな。エドワード・D・ホックによって書かれた、12の短編から成る作品集だよ。彼は密室ミステリ史上もっとも多作な作家だね。
ブライアン:密室ミステリに求められる謎と解決が見事なのは『ユダの窓』だけれど、それでも私はカーの『三つの棺』を選ぶよ。この作品には密室ミステリとしては、非凡なものがある。史上類をみない、足跡なき殺人の謎が出てくるし、ミステリ全般の謎、とりわけ密室についての議論が繰り広げられるんだ。また、ロバート・アーサーの「51番目の密室」は、あまり知られていないが、すごく良い短編だ。これは、密室ミステリのためのプロットを欲している、密室ミステリを書く作家の話なんだ。
現在、取り組んでおられるプロジェクトで、『ミステリー・シーン』の読者に言ってもよいものはありますか。
ジョン:今のところ、Török とアルテの作品を出版しようとしているよ。それ以外だと、カーの「密室講義」の中で言及されながらも、明確に名前が出されていない作品を特定しようと、調査を進めているんだ。あと、不可能犯罪の分類をしているね。
ブライアン:私たちは今、共同で『The Complete History of the Locked-Room Mystery』という資料を作成している。これは密室や不可能犯罪について書いたものなんだ。似たような仕事として、ロバート・エイディの『Locked-Room Murders』があるけれど、これは主として目録だ。我々の本は、ジャンルの基礎的なことから、トップ10のリスト、トリビア、重要な作品や作家についてのエッセイに加えて、本やテレビ番組、映画のベスト作品の独断的なレビューなんかを載せる予定だよ。
黄金時代のお気に入りの作家・作品は何でしょうか。
ジョン:君たちの記事はたくさんの作品を載せているだろうし、私が書いた「A Locked-room Library」もチェックしていることと思う。そこで選んでいる99冊は、ほとんどが黄金時代に出版されたものだよ。もし君たちの記事にまだないものを選ぶとすれば、それは次のようになる。
ジョン・ディクスン・カー(カーター・ディクスン名義)なら『ユダの窓』と『孔雀の羽根』だね。David Duncan の『The Shade of Time』は、このSF作家が不可能犯罪に挑戦した唯一の作品だ。独創的で巧妙な殺人方法に加え、まばゆいばかりの哲学的な会話に満ちている作品だよ。黄金時代からは少し外れるけれど、1953年に出版されたデレック・スミスの『悪魔を呼び起こせ』には、2つの密室殺人が出てくる。そのうちの1つは、ほかの密室殺人の中でも最高のものだね。
ピエール・ボワローの『殺人者なき六つの殺人』は傑作だよ。6つという不可能犯罪の数は、アルテの『Sept Merveilles du crime』(『The Seven Wonders of Crime』)の7つという数に超えられているけどね。ダネイがエラリー・クイーンのプロット担当だったように、ボワローもボワロー・ナルスジャック名義では、プロットを担当している。プロットを書く彼は、時計職人のような精密さで知られているよ。
クリスチアナ・ブランドの『自宅にて急逝』は、トップ50のリストにも挙がっていて、実際とても良い作品だ。彼女の『ジェゼベルの死』をたまたま読んで、その大胆で素晴らしい謎が好きになったんだ。それよりも不可能犯罪物として、はるかに良く書かれている『はなれわざ』には、捧腹絶倒するよ。彼女がもっとたくさんの作品を書いていないのが残念だなあ。
ノエル・ヴァンドリーの『La maison qui tue』は、シムノンに対抗する、最高の作品だよ。乾いた文体でありながら、殺人方法へのリスペクトがあり、創意に富んでいるね。
黄金時代以外だと、以下のような感じかな。
島田荘司の『占星術殺人事件』は影響力が強く、必読だね。ページをぱらぱらとめくって、楽しみを損ねるようなことはしないように。
ピーター・ラヴゼイの『猟犬クラブ』は、船の中の、南京錠がかかった部屋の話だよ。唯一無二のダイヤモンド警視が事件を解決するんだ。
アルテなら『第四の扉』だ。この作品で、ミステリのフランス・ルネサンスは始まったんだ。
ブライアン:カーの『三つの棺』、『一角獣の殺人』、『ユダの窓』、『九人と死で十人だ』、『連続殺人事件』、『白い僧院の殺人』、『孔雀の羽根』。
Stacey Bishop の『Death in the Dark』。
ドロシー・L・セイヤーズの『死体をどうぞ』。
C・デイリー・キングの『タラント氏の事件簿』。
黄金時代前後の重要作であれば、次の通りだ。
イズレイル・ザングウィルの『ビッグ・ボウの殺人』。
チェスタトンの「秘密の庭」「犬のお告げ」「翼ある剣」。
アラン・グリーンの『ボディを見てから驚け!』。
クリスチアナ・ブランドの『ジェゼベルの死』。
David Duncan の『The Shade of Time』。
ピーター・アントニイの『衣装戸棚の女』。
デレック・スミスの『悪魔を呼び起こせ』。
ジョン・サンドフォードの『夜の獲物』。
ジョン・スラデックの『見えないグリーン』。
ピーター・ラヴゼイの『猟犬クラブ』。
――『ミステリー・シーン』2010年7月号掲載
以上が『ミステリー・シーン』の2010年7月号に掲載されたインタビュー記事「密室シーン」の全訳になります。以下にざっと、翻訳したうえでの所見を述べていきます。
まず、ジョン・パグマイア氏の豊富な知識量について。ポール・アルテの英訳版を出したいがために、自ら出版社を作ってしまう行動力はさすがとしか言えませんが、そんな彼のミステリへの知識は(当然ですが)生半可なものではありません。冒頭の引用で、島田荘司先生も述べておられるように、パグマイア氏の言及は、イギリス、アメリカにとどまらず、フランス、日本、アジアにも及びます。彼は、自ら言及するほとんどの日本の作品を、要約されたもので読んでいるようですが、日本のミステリ事情に限っても、圧巻の知識を備えられています。それはとりわけ日本のミステリ史について話すときに顕著で、乱歩や横溝への言及はもちろん、綾辻行人先生の『十角館の殺人』から、作品冒頭のエラリイのセリフを引用したり、二階堂黎人先生の作品に出てくる「足跡なき殺人講義」に触れたりと、話は仔細にわたります。さらには『金田一少年の事件簿』や『名探偵コナン』といった推理漫画にも言及し、それらがミステリの若い世代の読者を生んでいる、とまで指摘する。こういった日本のミステリに関するパグマイア氏の知識は、あるいは島田先生との交流の中で蓄えられたものかもしれません。
次に、記事中の「locked-room」という語について。これは島田先生も「本格ミステリー・ワールド2011」の巻頭言「2011年の転換点」の中で指摘されていることなのですが、この語が「密室」という文字通りの意味から敷衍し、ほとんど「不可能犯罪全般」という意味で使われている場面がたびたびあります。これは記事を翻訳していて、とみに気になりました。それを鑑みると、「Extreme Locked-Room」という(おそらくパグマイア氏のオリジナル)語は、文中では「過激な密室物」という訳をあてましたが、「過激な不可能犯罪物」とでも訳すのが妥当かもしれません。
冒頭でも述べましたが、この記事「密室シーン」が出たのが2010年ということで、記事中で話されていることと、現在の状況とでは、多少変わっている点もあります。たとえば、パグマイア氏は「今のところポール・アルテの英訳されている作品は『狼の夜』という短編集が1冊だけ」と言っていますが、2018年7月現在では、14作品が LRI から英訳され出版されています。さらには、Jean-Paul Török の作品を英訳し、出版する計画がある旨をパグマイア氏は述べていますが、どうやらそれが結実したようで、2012年の4月に『The Riddle of Monte Verita』が、これもまた LRI から出版されています。しかし、少しばかり状況が変われど、この記事の功績はあまりにも大きく、島田先生が述べられているように「わがミステリー史に記憶されてよい快挙」と言っても過言ではありません。
また、何よりパグマイア、スクーピン両氏が嬉々として、自らが好きなミステリについて語り、私見を述べたりする様子に、一人のミステリファンとして、とても共感を覚えるものがありました。パグマイア氏が、無人島に持って行きたい長編と "短編" を1作ずつ訊かれているにも関わらず、"短編集" を挙げるところや、『占星術殺人事件』について「ページをぱらぱらとめくって、楽しみを損ねるようなことはしないように」と注意をしたり――『占星術殺人事件』には後半にトリックが図示されている――するところなど、読んでいて笑みがこぼれそうになる場面も。こういった些細なところからも、ひしひしとミステリへの愛が伝わってきます。
最後に、訳している中でとても印象的だったパグマイア氏の言葉を原文で引用して終わります。翻訳のどの箇所にあたるか、ぜひ探してみてください。拙い訳・文章ですが、お読みいただき、ありがとうございました。
Quite simply, I love this genre. Just as epic tales appeal to the spirit and romantic tales appeal to the heart, so impossible crime tales appeal to the intellect. ――John Pugmire
参考
・"The Locked-Room Scene":http://www.mylri.com/wp-content/uploads/2014/08/bmc_interview_7_10.pdf
・Locked Room International:http://www.mylri.com/
・島田荘司『本格からHONKAKUへ 21世紀本格宣言Ⅱ』(南雲堂)
・綾辻行人『十角館の殺人 <新装版>』(講談社文庫)
・ミステリー・推理小説データ・ベース Aga-Search:https://www.aga-search.com/
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