#020 部族主義とは本質的に無学な人間を支配するためのものだ|ベッシー・ヘッドの言葉|Novel
It was he, Matenge, who under stood tribalism, that it was essentially the rule of the illiterate man who, when he was in the majority, feared and despised anything that was not a part of the abysmal darkness in which he lived. (Matenge was the epitome of this darkness with his long, gloomy, melancholy, suspicious face and his ceaseless intrigues, bitter jealousy and hatred.) All this was tribalism and a way of life to the meek sheep who submitted to it. And all this had been highly praised by the colonialists as the only system that would keep the fearful, unwieldy, incomprehensible population of 'natives' in its place.
"When Rain Clouds Gather" (1968)
部族主義を理解していたのも彼、マテンゲだった。部族主義とは、本質的に無学な人間を支配するものだ。多数派であるときは、自らの生きる奈落の闇の一部でないものを恐れ軽蔑する。(不機嫌で暗く陰鬱な疑い深い顔をして、絶え間ない陰謀や苦しい嫉妬や憎しみを抱えたマテンゲは、この闇の典型だ。)どれもが部族主義であり、それに服従するおとなしい羊たちの生き方だった。そして、このすべてが、恐ろしく扱いにくく、理解しがたい「原住民」という人々を維持する唯一のシステムとして、植民地主義者たちに高く評価されていた。
1968年に発表されたWhen Rain Clouds Gather『雨雲のあつまるとき』(仮訳)の一説。
ここに作家ベッシー・ヘッドが込めた植民地主義の本質、アパルトヘイトの支配構造、その根底にあるアフリカに根付く保守的で排他的な部族主義が一気に表現されていることに驚く。こんなにシンプルなのに。
ここに登場するマテンゲは、伝統的な部族主義にあぐらをかき、庶民を搾取し悪事の限りを尽くして私利私欲を肥やし、憎しみを撒き散らす悪役だ。しかし、彼の中に救う闇というのは、この時代のアフリカだけでなく、多様な時代で共通する「病」の形なのだと思う。
伝統的な部族主義を守る保守的な姿勢は、時に人権を奪い、差別を当たり前にし、格差を生み出す。そのような弊害について、ここまで鋭くアパルトヘイトを重ね合い表現する作家の力量に感嘆する。
噛めば噛むほど、深い味が出てくるシンプルな文章に注目してほしい。善か悪かの二項対立ではもちろんない。
作家ベッシー・ヘッドについてはこちらのマガジンをご参照
メインブログ『あふりかくじらの自由時間』
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