#027『彼女の手は柔らかく、慈しむようにほとんど一糸乱れず、不思議な力を持っていた』｜ベッシー・ヘッドの言葉｜Novel
Inspection over, the women were taken through a number of gates to an open, sunny yard, fenced in by high, barbed-wire where they did their daily work. The prison was a rehabilitation centre where the prisoners produced goods which were sold in the prison store; the women produced garments of cloth and wool; the men did carpentry, shoe-making, brick-making, and vegetable production.
Dikeledi had a number of skills - she could knit, sew and weave baskets. All the women at present were busy knitting woollen garments; some were learners and did their work slowly and painstakingly. They looked at Dikeledi with interest as she took a ball of wool and a pair of knitting needles and rapidly cast on stitches. She had soft, caressing, almost oneless, hands of strange power- work of a beautiful design grew from those hands. By mid-morning she had completed the front part of a jersey and they all stopped to admire the pattern she had invented in her own head.
'You are a gifted person,' Kebonye remarked, admiringly.
'All my friends say so,' Dikeledi replied smiling.
刑務所の点検が終わると、女性たちはいくつもの門をくぐって、高い鉄条網で囲まれた日当たりのよい庭に出ると、そこで日々の仕事に取り組んだ。この刑務所はリハビリテーションセンターであり、囚人たちは刑務所の売店で販売する商品を作っていた。女性は織物や羊毛の衣服、男性は大工仕事、靴作り、レンガ作り、野菜作りをしていた。
ディケレディには、編み物、裁縫、カゴ編みなど、いくつもの特技があった。集まった女性たちは皆、毛糸を編むのに忙しく、中には初心者の人もいて、ゆっくり根気よく仕事をこなしていた。ディケレディが毛糸玉と編み針を手に取り、どんどん編み進めていくのを、皆は興味深げに見ていた。彼女の手は柔らかく、慈しむようにほとんど一糸乱れず、不思議な力を持っていた。ーその手から、美しいデザインの作品が生み出されいくのだ。午前中にはセーターの前身頃を完成させ、全員が手を止めて、彼女が頭の中で生み出した模様に見入っていた。
ケボニェが「あなたは才能があるのね」と感心した。
「お友だちはみんなそう言ってくれるわ」ディケレディは微笑みながら答えた。
短編集『The Collector of Treasures』の表題作。
これはもちろん、村の女たちの長閑な風景ではなく、刑務所に服役中の彼女たちの様子を描いたシーンだ。
主人公ディケレディは、心優しく才能にあふれた女性。だが、生まれ落ちた時から環境に恵まれず苦労をして育ち、年上の男と結婚させられ子どもをもうけるものの、どうしようもない夫に苦しめられある日、彼を殺してしまう。
この物語は、そんなディケレディが刑務所に連れていかれる美しいボツワナの風景から始まる。
ディケレディと一緒に服役している女たちもまた、同じように夫殺しの罪で服役している。当時の社会を描き、ここでも鋭いメッセージを発している。
この作品は、（前にも書いたけれど）本当に美しいのでいつか訳したいと思っている。
ちなみに、日本語版はずいぶん昔に出版されている。（が、絶版かも？）
作家ベッシー・ヘッドについてはこちらのマガジンをご参照
メインブログ『あふりかくじらの自由時間』
いいなと思ったら応援しよう！
