天使なんかじゃない(そりゃそうじゃ!)
こんなにも雨を待ち望んだ日々はなかった。
私自身、自他ともに認めるほどの雨女で、正直雨には飽き飽きしている。自身のペンネームに「雨」の字を入れておきながら、私はやっぱり晴れているほうが好きだし、いつもなら青空を見上げるだけで気分が上がる。
だがしかーし!!!(大声)
ここ数日の私は「はやく雨よ降ってくれ」と切望していた。それも、できることなら折りたたみ傘では心細いほどの雨を。
普段なら「雨か風かどっちかにしてよ~」と言ってしまうところだが「いっそのこと雨と風とセットで来てくれ(災害にはならない程度に……)」とまで思っていた。
どうかアイツらが姿を現せなくなるほどの雨風を。
すべてはアイツらを消し去るために——
今日は珍しく小見出しなるものを従来の用途で使ってみる。
雪虫の大群に突っ込む勇気はあるか
ニュースにまで取り上げられていたので、ご存じの方もいらっしゃるだろう。雪虫の大量発生。
積極的に公言はしていないが、別に隠しているわけでもないのでこれを機に言うが、私はその地域に住んでいる。
いや、まじ、あれ、ほんとキツイんすよ……
写真や動画だけを見ると、一見ただの「視界が真っ白になるくらいの吹雪・粉雪」に見えなくもないが、想像してみてくれたまえ。あれが全部虫なんだぜ?
雪虫をご存じない方は「白い綿をお尻に付けた飛ぶスピードが少し遅めのコバエ」があの量飛びまわっていると思ってくれたまえ。
……気が狂いそうだろう?
しかし、恨んでも嘆いても、雪虫大量発生の中、会社へ出勤しなければならない事実は変わらない。
こうなりゃ自分で対策を講じるしかない。
そこで私は3つの方法を考えた。
1.シンプルに完全防備
ウイルス感染予防としてのマスク着用が解消された現在だが、ここ最近は地下鉄の中ではマスクなし、屋外に出る前にマスクを装着、という人をよく見かける。気持ちはわかるぜ。
正直マスク無しでは外を歩けない。マスクせずに外を歩いたが最後、鼻の穴に何匹の雪虫が入るかわからないし、油断をすれば不本意にタンパク質の摂取を強制されることだろう。アイツら我が物顔で人の唇の上でくつろぐからな。
というわけで、雪虫対策の完全防備コーデを考えてみた。
帽子
ヘッドホンあるいはイヤーマフ
サングラスあるいは伊達眼鏡
マスク
そのうえで雨ガッパ(もちろんフードも被る)
……不審者ですか?
こんなん毎日職質に遭いそうだ。
うーむ。完全防備作戦却下。
今のところマスクのみで頑張っている。
2.シンプルに避ける
雪の降る地域にお住まいの方には伝わるかなと思うのだが、冬になるとたまに、ふわふわっとした大きめの軽い雪が、ふんわりふんわり降ってくる時がある。
桜の花びらや紙吹雪が舞い落ちるよりもスローな雪。
私はあれを「避けれる雪」と呼んでいる。
その雪が降ると「この雪は避けれる」とSNSでつぶやく後輩がいるのだ。そのつぶやきを見ると「冬だなあ(笑)」と思う。もはや私にとって冬の風物詩となっている。
それみたいに避ければいいんじゃね?と思ったわけだが。
いや、もうね、到底無理だった。避けようと思ったら車道に飛び出してしまいそうだ。
ちなみにその後輩に、この雪虫は避けれるかと聞いたら「正直あれは避けれないですね、雪以上に避けれない笑」と返ってきた。
……雪以上に避けれない虫とは?
3.シンプル(?)に雪虫を天使だと思う
いろいろ考えたけど、どうやらあの大量の雪虫との共存は免れないようなので、自分の考え方・感じ方を変える方向にシフトしてみよう。
そう。冬を知らせる、彼らは皆天使。白くて羽が生えて、私を見守るかのように周りをふわふわと飛んで、なんて神秘的……!
うわあ……!♡♡♡
まるでスノードームの中の世界にいるみたーい!♡♡♡
……きつい。
ごめん。無理だ。
半日妄想しつづけられる私の妄想力を以てしても無理だ。
というか天使はもっと希少な存在であってほしい。
こんなに大量だと偽物感が凄い……(そこ?)
さらに、きついのはその数だけじゃない。
少し身体に当たっただけで亡くなるほど脆い雪虫たち。儚い命を思うと死後にまで文句を言うのは申し訳ないとも思うが。
路上を埋め尽くす死骸の臭いがきつい。
何やら広い分類だとカメムシの仲間なんだとかで。
つまりあの数の大量の雪虫が、大量の死骸となるわけだ。
街に漂う生乾き臭。
牛乳を拭いて放置した雑巾のような悪臭。
……まじできつい。
そんなわけで「雪虫が飛びまわるのを抑制する」「街中の臭いを洗い流す」両方の意味でいちばん効果がありそうだと感じた対策が、
雨乞いである。
雨よ。街を洗ってくれと。
雨女の本領発揮所はここだぞと。
しかーし。
私が雨女たる所以は、降らないでほしい時に雨が降る残念な部分にある。
ゆえに、降ってほしい時に雨が降らん。どこまでも残念である。
ちなみに、アウターに付いた雪虫は、そのまま手で払うと潰れるし、そもそもできれば触れたくない。そんな時はアウターの内側やポケットの内側からデコピンすると潰れることなく跳んでいきますよ☆(※ただし素材による)
(2,054文字)
何が悲しくて雪虫について2000字も
語ってしまったのか。