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2024年に観た映画の感想 1月~3月編

今年のはじめに書いたnoteで、僕は「2024年は映画の感想をきちんと文章化していきたい」という目標を掲げた。

要約すると、この目標には「今まで他の人の素晴らしい感想を見てきたせいで『自分なんかが感想書く必要ないよね』と思っていたけど、感想を文章化することを怠っていたら鮮明な感想をあとあと思い出せなくなって困ったので、今年からは新鮮な感想をきちんと記録する」という意図が込もっている。

というわけで、早速有言実行。
このnoteでは、1月~3月に鑑賞した映画の感想を書いていく。
ネタバレ込みの感想なので、ネタバレを避けたい方はブラウザバック推奨。


◆1月

BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-

実質的な前作に当たるTVシリーズ『グレイトエスケープ』が自分にとことん合わなかったので正直警戒していたが、『グレイトエスケープ』では原案にとどまっていた谷口悟朗氏が監督・脚本を手掛けた本作は『グレイトエスケープ』のネジの緩んだ雰囲気から一転したバイオレンスで硝煙香る作風になっており、「逃走」と「復讐」を軸にした脚本は最初から最後まで楽しめた。
「ヤクザvs吸血鬼vs改造人間の三つ巴バトル」という内容を宣伝しておきながらヤクザの存在感が若干薄い点は気になったものの、キャラクターは言葉よりも行動で己の心を示していくヒーローのキサラギ(色々と背負い込んでしまうタイプのヒーロー、あまりにも性癖)、戦いの中でしたたかに成長していくルナルゥなどの主人公サイド、そして「個人の幸福よりも種の存続のための奉仕を美徳とする」という価値観の元にキサラギたちを追う不滅騎士団サイドどちらも魅力的で、そんな彼らが火花と血煙を散らし戦う90分はずっと楽しかった。
『グレイトエスケープ』ではあまりにもだるかったアクションが改善されているのも素晴らしく、キサラギの自在に変化する左腕と、終盤に手に入れる義足を使ったアクションは非常に見応えがあった。特に義足のアクションはデビュー戦の鮮烈さもあって印象に残る。

爆死はもったいない、谷口悟朗節が随所に光るバトルアクション。年明けからいいもん見させてもらいました。

カラオケ行こ!

ツイッター(意地でもXとは呼ばない)で話題になっていたので、見るつもりはなかったが知人と鑑賞。
正直ツイッターの一部で持ち上げられるほどにはノレなかったが、普通に楽しめた。

機動戦士ガンダムSEED FREEDOM

個別のnoteとして書いたのでそちらを参照。

◆2月

仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド

言いたいことがないといえば嘘になる。
「オルフェノクの王どこ行った?」「三原くんどこ行った?」
「スマートブレインは倒産したんじゃ?もしかしてこれって『アウトサイダーズ』世界線なの?」
「スマートブレインをオルフェノク掃討の隠れ蓑にする必要なくない?」
「玲菜って結局なんだったの?」
と、ツッコもうと思えばいくらでもツッコめる作品ではあった。

だが、『復活のコアメダル』とかいうドブカスに比べれば遥かに原典を尊重した続編であり、もうそれだけで嬉しい。
乾巧を筆頭とする登場人物たちは「本編と地続き」であることを感じさせてくれたし、作品そのものも(ちょっと…いや結構ドンブラ成分は混入していたが)当時のファイズらしい淀んだ雰囲気をまとっていて、「あいつらが帰ってきたんだ」という喜びを存分に感じさせてくれた。
また、「真理はオルフェノクの人生を尊重してたけど、自分はオルフェノクになりたくはないと潜在的に思っていた」という矛盾を突いたシナリオも新しい切り口で、本編を尊重しつつも「本編の単なる焼き直し」になっていなかったところも好印象。

ただ、敵方である北崎と草加(のコピーロボット)の存在感が薄いのは気になった。
スマートブレイン関係者が琢磨くん以外全員死んでいる以上ファイズ本編のキャラが敵として出せない、という事情は理解できるが、二人は日本政府の意を受けてオルフェノクを絶滅させるだけの存在でしかなく、キャラクターが薄い。
特に草加は、「オリジナルから複製されたAIであっても真理への愛は変わらなかった」ことがわかる描写は良かったが、あっさり草加雅人本来の人格を消されて北崎と同じオルフェノク殲滅マシーンになってしまうため、いまいち敵としての魅力に欠ける。
ていうか、「流星塾生(というか真理)がオルフェノクに覚醒した際にそれを排除するために草加雅人に擬態していた」という設定だったけど、「将来オルフェノクになる危険性がある」ってわかってるならオルフェノクへの覚醒を待たずにぶっ殺しちゃえばいいのに。西洋洗濯舗菊池の場所がわかってるなら尚更。

SNSでは賛否分かれる「巧と真理のセックス」についてだが、個人的には
「巧と真理の友情に近い関係性は、愛を証明するために一方的な性暴力に走った草加との対比であり、二人が理想とするオルフェノクと人間の関係性のモデルケースになってるんだから、セックスしたら台無しだろ」
という自分と
「でもふたりとも弱ってたしなあ、セックスに溺れるのもやむなしかぁ」
という自分で心が2つある~!

ラストについては、オルフェノクになった真理を通して「真の『オルフェノクと人類の平等』とは、オルフェノクであることが単なる個性として受け入れられること」と主張したいのはわかる。だが、オルフェノクの寿命問題は一切解決していないわけで、「たっくん、真理の寿命が下手したら半分ぐらい縮んだけど笑ってる場合か?」と思ってしまいノレなかった。

「完璧なTV本編の続編」という人の意見も「ファイズの最終回は『仮面ライダー4号』」という人の意見もわかる作品。
個人的には60分という尺で「ファイズの続編」をきちんと描こうとしている部分は楽しめたものの、手放しには褒められない、というのが正直な感想。
ただ、なんだかんだオートバジンのあの頃と変わらぬ忠義から始まるラストバトルを見たら満足してしまっている自分もいる。

ブラスターフォームの活躍はどこ…ここ…?

◆3月

マダム・ウェブ

とりあえず、この映画を「本格ミステリー・サスペンス」って宣伝しようと思った人、ちょっと表出よっか。
『エイジ・オブ・ウルトロン』の「愛を知る全人類に捧ぐ──」とか、『マイティ・ソー ラグナロク』の改題問題など、なぜ定期的にマーベル映画の宣伝はやらかしてしまうのか。

世間では先述した国内での「本格ミステリー・サスペンス」という事前の宣伝を裏切る内容や、ロッテン・トマトなどの辛辣な評価を根拠に「第2の『モービウス』」だの何だの言われている本作。個人的にはかなり言いたいことはあるし、この感想を書いている時点では2024年ワースト映画ではあるものの、一部の人が言うほど「クソ映画」ではなかったと思う。

「終盤までキャラクターを好きになれない」のがキツかった。
主人公のキャシーは未来視を無視したことで救えたはずの同僚を見殺しにしてしまうが、未来視では死ぬはずだったハトの命を救ったことで「私が見た未来は変えられる」と気付き、シムズに殺されそうだった3人の少女を助けることを決意した…割に、シムズの超常的なパワーを見てなお「私はもう知らない。警察とあなた方の両親に任せよう」と無責任なことを言う(最初はまだしも、シムズと2度目に出会った後にその脅威を認識しないで「警察に任せよう」は無理がある)し、あまつさえ彼女らを見捨てて逃げようとする。
立ち寄ったモーテルでシムズの脅威を改めて認識し、3人を守ることを改めて決意する…のはいいのだが、そのモーテルに立ち寄るシーンも「どうしてモーテルに立ち寄ろうとしたのかわからない」というシナリオ上の問題があるのがキツい。
キャシーが守ろうとするジュリア・マティ・アーニャも、いきなり「私は未来が見える、あなた達はこのままだと殺される」と主張する謎の女性に振り回されたことには同情するものの、身勝手な行動を取って問題を起こす印象しかなく、同じく好きになれない。
3人もいるせいで一人ひとりの個性が薄まっているのも気になった。
終盤は4人が一致団結することでストレスが消えてクライマックスを楽しめるものの、そこまでが遅く、いまいちシナリオには乗り切れなかった。

キャシーが真の力である分身(?)に目覚める展開も雑で、警察に追われておりおそらくアメリカ中に顔が割れている状況で、3人の少女をベンに預けて(ベンもよく事情を理解してくれたな)自身のルーツであるペルーに飛び、かつて母を助けたラス・アラニャスの力で過去を垣間見て「キャシーの母は身ごもっていた彼女の病気を治すためにペルーに飛び、クモを研究していた」という真実を知る…というシナリオは、いきなりペルーに飛ぶ、という突飛な展開もさることながら「キャシーが母をどこかで恨んでいた」という伏線は非常に薄く、それなのに「母への恨みが解消されて心がクリアになったから全力で予知の力を振るえるようになったよ」と言われてもいまいち頭に入ってこない。

バトルシーンは、終盤の予知能力を交えたアクションは面白いものの、「後にスパイダーウーマンとなる」とされる3人の少女が全然活躍しないため、彼女らが後にスパイダーウーマンとなるという説得力がないし、絵面も面白くない。

繰り返しになるが、色々文句を書いたが「クソ」と言えるほどつまらなくはなかった。ただ「同じ値段を払うなら『アーガイル』とか『劇場版ハイキュー!!』見たほうが良かったかなぁ」と思ってしまったことも確かな、手放しに褒めることは出来なかった一作。
ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース、こんなんで本当に大丈夫なんだろうか。

鷹嶺ルイ女史、感想をひねり出すのに困っただろうなあ。

仮面ライダーギーツ ジャマト・アウェイキング

ギーツでは道長推しだったので、道長が活躍しているだけで結構満足できた。

坂本監督の真骨頂である生身・変身後共に工夫をこらしたアクションは今回も見応え抜群。プロージョンレイジのチェーンソーでの壁登りや、久々に登場したコマンドバックルのアクション、ギーツⅨ vs ドゥームズギーツの神同士のド派手CG&ワイヤーバトルなど、Vシネらしい気合の入ったアクションはよかった。

「道長を蝕むジャマト」の設定は「TV本編でガン無視しといて今更掘り返すのかよ」と思わなくもないものの、そんな彼が本編でエースが掲げた「みんなが幸せになれる世界」を守るために立ち上がり、プロージョンレイジという新たな力を得て、春樹を決死で救おうとする姿には心打たれた。
本編でずっと、何かを倒すために剣を振るい続けてきた道長が最後に手に入れるのが「ジャマトと仮面ライダーの強さをかけ合わせた力」「剣ではなく、誰かを守るための『盾』」っていうのもエモくて大満足。

道長以外の登場人物も、相変わらずの厄介道長推しぶりを見せつけて散っていったベロバを筆頭にそれぞれきちっと活躍していて視聴者を飽きさせない。

ただ、同じライダーVシネの『パラダイスリゲインド』でも思ったことだが、敵の存在感が薄味なのが惜しいところ。
蒼斗/キングジャマトは「人間とジャマトは共存できない!人間を滅ぼすしか道はない!」と言っていたけど、その思想に至るまでの道のりが全く示されていないのがマイナス(大智からジャマトの歩んだ歴史などを聞いていた可能性はあるが、それだけで「人間なんか滅ぼしてやる~!」とはならない気がする)。
ニチアサVシネ、こうした敵側の掘り下げも含めて最低でも90分欲しい(n回目)。

コヴェナント 約束の救出

この筋書きで燃えないほうが無理だろ~~~!!!

過酷なアフガンで繰り広げられるリアルな銃撃戦や、瀕死のジョンを守りながら徒歩で米軍基地への帰還を目指すアーメッドの決死行は常に緊張感に溢れ、アーメッドがタリバン兵とニアミスする度に手に汗握る。
過激な動きだけでなく、動静の「静」で魅せる戦闘シーンは一級品と言っていい。

映画を観ていて、最初こそ「アーメッド、ジョンを見捨てればいいのに」と思ってしまったが、アーメッドは米軍に自身の潔白を証明するため、何より家で待つ家族との暮らしを守るために「そうせざるを得なかった」のだと気づいた瞬間、アーメッド、というか我々の住む現実にもいるアフガニスタンの人々が置かれている、アフガン人からもアメリカ人からも信頼されないあまりに過酷な境遇を思って僕は心の中で唸るしかなかった。
互いに苦しむ、劇中の台詞を借りるなら「呪われ」てしまった二人が、今度はジョンの同じく命をかけた戦いの果てに救いを得るラストシーンには心の底から安堵…したのだが、エンドロールで観客に突きつけられる現実のアフガニスタンの過酷さには現実の残酷さを痛感する。我々が当たり前に享受する「平和」とはなんと尊いものか…。

話題作の影に隠れるのはもったいない名作でした。

デューン 砂の惑星 PART2

「信仰」ってこわい。

IMAXで鑑賞したのだが、やっぱりドゥニ・ヴィルヌーヴ映画はどこを切り取っても画になる。
果てしなく続くアラキスの砂漠とそこで暮らすフレメンたちの群居洞(シエチ)は前作から引き続き美しいが、度肝を抜いたのがハルコンネン家の拠点であるジエディ・プライムの色のない風景。誇りの、理性のないハルコンネン家の風土を表し、色鮮やかなアラキスと対比しているようで面白かったし、フェイド・ラウサの決闘シーンも端的に彼とハルコンネンの民の狂気を表していた。
見どころは言わずもがな、フレメンたちが総力を挙げてハルコンネン軍に攻め込んでいくクライマックス。核の炎とサンドワームがハルコンネン軍を呑み込み、あの「救世主になんかならない」と言っていたポールがフレメンを率い、冷徹に皇帝とハルコンネン男爵の眼前に迫るシーンは息を呑む。
それらの名シーンの良さをさらに引き出すのがIMAXの音響。ハルコンネンの民の熱狂、預言を成就したポールを称えるフレメンの絶叫、SEとハンス・ジマーの劇伴が全身を打つ体験は、心から「IMAXで観てよかった」と思わせた。

満を持してのフレメンの反撃が描かれるストーリーは、中盤までは仲を深めるポールとチャニや、ポールがフレメンに溶け込み成長していく様子、そして少人数のフレメンが地の利を活かしてハルコンネン軍と渡り合うバトルシーンといかにもなSFアクション映画として楽しめるのだが、中盤、もう一人の救世主候補であるフェイド・ラウサの参戦と、彼が参入したハルコンネン軍によるフレメンたちの群居洞襲撃から話が変わってくる。
「アラキスの南に赴けば、宇宙を巻き込んだ戦いが始まり、多くの犠牲を生む」という未来視を拒んでいたポールは、群居洞襲撃をきっかけに母・ジェシカの言葉に従い、アラキスの南に向かいそこに住む原理主義のフレメンたちを仲間に加えようとする。
原理主義のフレメンを仲間にするべく、ジェシカが利用したのはフレメンたちの間に伝わる救世主伝説(リサーン・アル=ガイブ)。彼女は伝説に従ってポールに「命の水」という劇薬を飲ませ、それに耐えたポールを「伝説にある救世主」だと祭り上げる。

命の水を飲んだことでこの世界の未来を知る存在となったポールは「救世主」としてフレメンを統率していくのだが、「救世主にはならない、一人の戦士として戦う」と未来視を拒み続けたポールが、未来を知ったことで苦悩を捨て、求められるままに救世主として振る舞い、その振る舞いを見たフレメンたちが「リサーン・アル=ガイブ!!」と絶叫する様子には、劇中のチャニと同じように、空恐ろしさ、虚しさを覚えた。
まるでヴィルヌーヴ監督から「英雄譚は美しいばかりではない。英雄になる、信仰されるということは人間を捨てること」というメッセージを突きつけられているようで、本来カタルシスがあるべきクライマックスに、悲しさを覚えている自分がいた。

ちょっとこの人のことを思い出したりして

オンリーワンの体験をもたらしてくれた素晴らしいSF映画…ではあるのだが、一つだけ文句があるとすれば約3時間の上映時間。
3時間ともなると膀胱が気になって集中できないときもあるし、どんなに美しかろうとエモかろうと疲れてくる。「映画は2時間前後がちょうどいいのよ教」を推進する自分としては、最近の映画が長時間化していく風潮には異を唱えたい。

もっと咀嚼するために、もう一回見に行きたい。
でも近所のIMAXは「オッペンハイマー」に取られちゃったんだよなぁ。

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