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(途中感想)コンテナ物語 - 2回目

コンテナ物語の続きで、キリが良さそうなので一旦感想を書きたいと思います。

全14章のうち5章から10章を読みました。
4章まではマクリーンを主人公として、コンテナ輸送システムを作り上げるまでのストーリーを主軸として、コンテナ黎明期の歴史を説明していました。

5章からは、国や自治体、港湾、労働組合等のが、コンテナリゼーションによってどのような影響を受けたかを説明しています。

5章から10章までを通して振り返ってみると、当初は多くの組織や港町はコンテナリゼーションに反対するか、消極的な立場だったようです。
しかし、一部の先見性のある人たちがコンテナシステムを導入することで、いつの間にか既存のシステム(混載輸送、荷役作業の不文律、保管方法、陸運への接続方法)を置いてきぼりにしてしまった、という印象を受けました。

文中で一番多く語られているコンテナ反対運動は、労働組合によるものです。

労働組合の抵抗について感じたこと

コンテナシステムは基本的には自動化の流れなので、労働者としては仕事を奪われると感じるのは当然です。もちろん経営側も人件費を削減したいですし、人が減っていくのは目に見えていたようです。

私のいる職場の雰囲気から考えると、非論理的な抵抗だと感じます。ただ、当時の労働者のように低賃金で日雇いに近い人にとっては、効率化よりも自身の生活を守ることが大切なので、理解できないことはないような気がします。

私自身も組合役員を経験したことがあるので、いろいろ考えさせられました。
日本の現代では組合の影響力ってそんなに感じませんが、産業が大きく変化するときには、組合がある会社とない会社で色々なことが変わってくるのだと感じました。

経営だけを考えると組合がないほうが、イノベーションの流れになるのは楽そうに見えます。

とはいえ、コンテナシステム導入の1950~60年代の闘争・交渉の流れを読むと、なんだかんだと言って、労働者と経営側が妥協しあうことでコンテナシステムの発展にはつながっているのだと感じました。

妥協しながらもなんとかコンテナリゼーションを進めた結果、こういう話にありがちなのですが、輸送の効率化と世界経済の発展によって荷物の取扱量が急増し、人員削減どころか人員不足になってしまったということでした。

削減する人員分の保証基金が不要になる程、とも書かれており、このような歴史もあって、最近の労働組合の主張は経営の効率化と会社の発展に向けて活動に主軸を置いているのかもしれません。

港湾の抵抗について

コンテナを扱う場としては、やはり港湾というか港町の存在が重要になると思います。
前章まででコンテナシステム効果について知っている読者から見ると、コンテナで効率化できるので、どんどんやればいいと感じるのですが、そういうわけではないようです。

当時はコンテナに対して、そこまで効率化できると考える人は少なかったようです。
その理由は、コンテナを単なる箱として考えたためだと感じました。
輸送船や港の設備、荷下ろしや陸運との連結の仕組みが、しっかりとシステムとして成り立っていないと、投資に見合う合理化にはつながらなかったようです。

これって、トヨタ生産方式の導入でも同じようなことはよく聞きますね。
トヨタ生産方式は、いろいろな書籍も出ているのと、分かりやすいキーワードで説明される場合も多いので、システムとしての導入ではなく、要素だけを導入するので上手くいかない、と聞くことが多いです。

小単位の組織や個人がいくら頑張って導入しようとしても、トップが無関心だとシステムとして機能しないということですね。

生産方式よりも、もっと広い範囲に影響を与える輸送システムですから、経営者が理解してトップダウンで推進しないとなかなかうまくいかなかったのではないかと思います。

コンテナの規格について

第7章はコンテナの規格についてですが、規格化というと色々な団体の思惑が入り混じって大変なイメージがありますが、それを具体的に、なるほど、こういう感じで規格が決まらないんだな、というのを感じました。

この辺の話は、今後の仕事とかでも参考になりそうなので、いつか読み返してみたいと思います。

アメリカで生まれて、シンガポールの発展につながったらしいです

アメリカで生まれたコンテナシステムですが、60~80年代にかけて世界に広がり、特にアジアの発展に大きく影響したようです。

アジア諸国は、アメリカであった労働組合や港湾のごたごたの歴史をしっかり分析おり、最小限の抵抗でコンテナシステムを導入して急速に発展することができました。

日本の経済成長期にもあたりますが、このあたりの書き方が、少し前の中国に対する日本経済界の意見のような書き方で、歴史は繰り返すというのを感じました。
(ただ、少しずつ変わっているので完全な予想は難しいですね)

コンテナシステムを導入するかどうかで、ヨーロッパやアジアの様々な港湾の発展に明暗が分かれているように書かれています。
恐らくほかの要因もありますが、コンテナシステムは少なくとも影響していたのでしょう。

アジア諸国で最も発展したのは、シンガポールです。積極的な港湾への投資によるコンテナシステム化で世界最大の荷物取扱港になったということでした。

シンガポールって、ITで発展したイメージだったんですが、貿易で最大拠点となったことで、次イノベーションへも積極的な投資できるような基礎体力をつけることができたのかもしれません。

グーグルマップでシンガポールの航空写真を見ると、カクカクとした港とその周りに小魚みたいな船群がみられます。

シンガポール周辺の航空写真

本で見つけた知識を別のデータで確認するのって面白いですよね。

以上です。結構情報量が多い本なので、時間がかかりますが、引き続き読んでいきたいと思います。

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