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「ソウルの春」この下剋上が、たった45年前の出来事とは…

どうも、安部スナヲです。

ハイパー韓国ノワール「アシュラ」の布陣=キム・ソシン監督&ファン・ジョンミン、チョンウソンW主演で、今度は実録軍事クーデターを描くというので、楽しみにしていました。

ところで、役に応じて七変化する役者のことを「カメレオンアクター」といいますが、別の文脈でファン・ジョンミンって爬虫類っぽいなぁー、と思いながら感想を述べます。

【あらましのあらすじ】

1979年10月26日、軍事独裁政権下の韓国にて、パク・チョンヒ大統領が側近に暗殺された。

国民のあいだでは民主化への気運に期待が高まるが、暗殺事件の捜査本部長に就任したチョン・ドゥグァン少将(ファン・ジョンミン)は、そのドス黒い野心を滾らせ、この機に乗じて大統領の座を狙う。

ドゥグァンは自らが手懐ける軍の秘密組織“ハナ会”(派閥のようなものと、筆者は理解)を巧みに動かし、クーデターによる国家転覆計画をすすめる。

出典:映画.com

ドゥグァンを以前から危険視していた参謀総長のチョン・サンホ大将(イ・ソンミン)は、彼の脅威からソウルを守るべく、その高潔な人柄に固い信頼を置くイ・テシン少将(チョン・ウソン)を首都警備司令官に任命する。

出典:映画.com

やがてハナ会一派は、ドゥグァンにとって不都合な存在であるサンホ大将に、パク大統領暗殺に関与しているとの嫌疑をかけ、拉致してしまう。

抜かりないドゥグァンは、この拉致を合法的な“逮捕”とするため、チェ大統領(パクの後任)に承諾署名を迫るが、もうひとりの決済者である国防長官オ・グクサン大将(キム・ウィソン)が行方をくらませていて、うまくことが運ばない。

それでも彼は権謀術数の限りを尽くし、軍部の中枢を掌握、ハナ会以下反乱軍も徐々にソウルへ侵攻して行く。

首都警備司令官であるイ少将は、暴走する反乱軍を抑えるべく、本格的な戦闘体制に入る。

首都警備隊を蹴散らすべく、ドゥグァンはとうとう軍きっての精鋭部隊、空挺旅団を動かし、よもや史上最悪の内戦に突入するか?

出典:映画.com

【感想】

韓国が民主化になるまでの経緯を、それほど詳しく知らなかったが、この映画でチョン・ドゥファン(役名はドゥグァン)という人物のことを知り、軍事政権というのは、舵取りをするヤツが狂ってると本当に地獄だと思った。

この映画はフィクションではあるけれど、アウトラインは概ね史実のとおりで、少将にすぎなかったチョン・ドゥファンがその狡猾さと大胆さだけで軍部を乗っ取り、最終的に大統領の座についたのは事実。

こんな戦国時代の下剋上のようなハナシが、たかだか45年前の出来事なのだ。

しかも、のちに「12.12.クーデター」として歴史に刻まれるその事件は、軍部によって長年隠蔽されていたという。

ちなみにその翌年の1980年5月、ドゥファンは光州で民主化デモを行う一般市民を軍によって圧殺しているのだが、大統領になったのは、その後だと知ってさらに驚いた。

ひるがえって今のミャンマーのことなどを思うと、やはり軍事政権は地獄と背中合わせだ。

悲しいけど、世界は平和ではない。

その根源的な要因は軍事という、戦闘のための制度そのものにあると思えてならない。

そんな考えはオハナバタケと言う人がいる、だけど平和が理想だとして、それを目指さないでどうする。

ハナシが完全に逸れてしまうが、日本国憲法の前文に書かれているのも、そういうことだろ?“崇高な理想”の達成を誓うんだろ?一旦、誓った覚悟を変えてしまっては、いつまで経っても平和にならないんじゃないのか。

ーと、こういう映画を観て逡巡するのもまた自然なこと。

映画のハナシに戻る。

反乱軍に対抗したイ・テシンのモデルになったのはチャン・テワンという人物。

出典:映画.com

実際のその人が、果たして真に正義の人だったかどうかは疑問だが、映画のなかでは“クロ”のドゥグァンに対し“シロ”=悪に立ち向かう正義として描かれている。が、模範的な軍人の正義というのも、やはり飲み込めない。

終盤、鎮圧部隊が劣勢になった時、イ・テシンが「国家と国民を守ることが軍人としての私の使命」と言い放つシーンがある。

苦味走ったイケメンのチョン・ウソンにこれを言われると、ついウットリしてしまうが、正直複雑だ。

この人が守ろうとしている国家が軍によって統制されている以上、こういう争いの因子を絶やすことは出来ないのではないか、それは国家国民を守ることになるのか…と、また禅問答的逡巡に陥ってしまう。

キタとの冷戦下にある韓国にとっての軍のあり方を、一定程度理解したつもりではいるが、どうしても心にシコリが残る。

あと、軍の統制システムの良いところと悪いところが極端に浮き彫りになっているのが興味深い。

反乱軍と鎮圧部隊、それぞれからの命令が錯綜した時、“絶対服従”という大原則はニッチもサッチも行かなくなる。

注目すべきは将校たちの動向。なかでもコン司令官といまわの際を共にするオ・ジノ少佐や、鎮圧部隊の負けを確信した時、強い態度でイ・テシンに生き残りを進言するカン大佐の葛藤。

出典:映画.com

本作でいちばん感情移入させられたのは、この2人だった。

それまで敬意と忠誠を貫いて来た彼らが、あのカオスのなかで、人としての信念を見せてくれたことに、私は救われた。

それに引き換え、上層部のだらしないこと。

いちばんクズなのは、オ・グクサン国防長官。ヒエラルキーのなかでは大統領に次ぐ立場なのに、ドゥグァンに金で抱き込まれるわ、ハナ会に脅されて、ここいちばんって時に鎮圧部隊を妨げるわ、あんな保身しか頭にないヤツがなんで国防長官やってんだ。

いやはや、絶対に権力を持たせてはいけない人が持つとどうなるか。厭というほどわからされた。

そして今作でも、悪魔級の人たらしと、胸クソあざといあの笑顔で楽しませてくれたファン・ジョンミンに忠誠🫡

出典:映画.com

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