食べる御朱印
僕は権禰宜。白い龍の御働きで、この神社に来た。
ここは、虹色の料理人が200年前に「食べる御朱印」を作った神社だ。
たった一度だけ作られたその御朱印を食べた人たちが元気になった噂が広がり、使われた食材の分析やレシピの研究を世界中の様々な機関で今も行われている。
本当かどうかわからないけど、魔術学校の同期の女の子のひいひいひいひいひいおばあちゃんが、「食べたら摂食障害が治った」と言っていたらしい。
僕は「食べる御朱印」は、虹色の料理人にしか作れないと思っている。
地の時代後期から風の時代初期のデータは、殆どがデジタルで、しかも既に改ざんされた後のデータしか残っていない。「真実は誰にもわからない」なんてことは水の時代の当たり前だ。
僕は、色彩学のテキスト「ピンクのみそ汁」を読んで、虹色の料理人を卒研のテーマに決めた。
去年履修した地域学のレポート課題は、虹色の料理人の壁画「紫色のピラミッド型ソルト」をテーマに書いた。海に沈んだ大陸とレイラインの共時性の学びは刺激的だった。なにより初めてS評価をもらい、A評価の上があったことに驚いた。
伝説の虹色の料理人が、いつかまたこの神社に現れて「食べる御朱印」を作る時が来ることを僕は信じて待つことにした。