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Project siranui episode 1

久々の投稿

 2018年に開始したnoteの記事は、2021年を最後に更新が滞っていました。設立当初は、前職であるGoogleでの経験をもとに代理店様や広告主様に、システムの仕様面から効率的な広告運用業務のトレーニングやアカウントパフォーマンス改善に関してコンサルティングを提供していましたが、ここ数年はダイレクトの広告運用のお取引が増加したことで、自らも運用業務にガッツリ入り込むことになり、それ以外の時間が取れない状況が続いていました。

 数年間、立て続けに大型アカウントを運用していたわけですが、それらの業務も落ち着き、そもそも当社の理念である”Streamline the complexity”(複雑なものを整理する)を運用型広告の領域において実現した上で、それらを全体へ拡めていくためのシステム:siranui(シラヌイ)は、一度テスト的にリリースはしたものの、機能面にフォーカスするあまり、UI/UX面での課題が解決できず、外部への販売は一度断念…、社内システムとして粛々と機能追加と改善を行ってきました。

Project hagakureから12年

 私がGoogleに入社してアカウント再構築の施策である”Project hagakure”を開始したのは、2013年11月。早いもので約12年の年月が過ぎようとしています。その間に運用型広告のプロダクト面、機能面、それらに関連するシステムがさらに広告主の売上向上に寄与するものへと進化を遂げました。その一方で、自動化が前提となった広告アカウントの運用業務において、パフォーマンスの改善ポイントや悪化要因が分かりにくく、それらの数値的変化への対応が難しい局面も増えてきていると感じています。

 自動化が前提となった運用業務は、過去の手動による運用業務と異なり、運用業務における3つのレバーであるターゲティング、入札、クリエーティブにおいて設定した初期値に対して、データによる根拠をもって適切な変更を加えることが主たる業務です。手動による運用業務では主にターゲットキーワードに対する入札単価の調整によって1コンバージョンあたりのコストを改善してきましたが、自動化による運用業務は、過去に取得されたデータからユーザーシグナルを分析し、統計学に基づいて算出されるユーザーアクションの確度(予測コンバージョン率などキャンペーンの目的によって算出される予測値)から、参加するオークション機会の識別と拡張入札による入札の深度が自動調整されます。自動化のベースとなる機械学習では良いデータと悪いデータの統計的有意差によって各レバーの調整が自動で図られるため、手動によるムダコストをカットする運用業務とは概念的な矛盾が生じるものです。

過去と現在の運用概念の違い
過去の運用概念と自動化で生じる矛盾

 自動化による運用業務の本質は、検索広告で例えるなら、手動運用では難しかった、同一文字列での検索ユーザーのアクションの確度を、統計学をベースに過去のコンバージョンシグナルの分析によって導き出される類似性から識別できることであり、運用担当者の業務効率化のためではありません。これは検索広告だけではなく、比較してしまうとどうにもこうにも検索広告に対して分が悪かった、受動的な広告接触となるディスプレイ広告やビデオ広告でも、統計的なボリュームとシグナルの識別精度によって、そのパフォーマンスは担保されます。直近で言うならば、P-MAXがその最たる例です。検索広告のデータを基にGoogleプロパティを横断して広告を配信するからこそ、広告配信とユーザーシグナルのデータ量が担保され、検索広告と同様のパフォーマンスを発揮できるのです。

 では自動化による運用業務において、価値が見出される運用業務とは何か?それは広告パフォーマンスの数値の裏に隠れている改善ポイントを、根拠をもって導き出し、スピーディにアカウントへ反映させることだと考えています。

 そして12年一回り、ではないですが、運用型広告がこの12年間でさらに進化したからこそ、あらためてプロダクトの仕様に立ち返り、正しく利用することが求められると思います。

課題抽出と施策実行スピード

 広告の管理画面には過去の広告の掲載結果としての数値に様々な改善のヒントが隠されています。そのヒントの元となる様々な指標の定義とその相関を把握することは、課題の抽出から改善のヒントを見つけ出すプロセスにおいて非常に重要です。そして上記にも記載した通り、それらの指標が適切にアカウントのパフォーマンスと紐づく数値であり、そのボリュームが担保されていることは、分析と課題抽出後にアカウントに加える改善施策の適切さ、すなわち”正しさ”に繋がるのです。

 話を大元に戻すと、社内システムとして粛々と機能改善と追加を行っていたsiranui(シラヌイ)は、外部の協力のもとUI/UXの大幅な見直しを行い、提供できる機能も増えてきました。siranuiのこだわりはただ1つ、煩雑かつ多様化しやすい広告アカウントの課題抽出方法をプロダクトの仕様に基づいて処理を行い、抽出後そのまま改善施策を反映できるように設計しているところです。(現段階では開発中のものも存在しますが、すべてその思想で設計、開発を進めています。)

品質スコアを数えても広告パフォーマンスは改善しない

 品質スコアについては、過去の記事でも言及していますが、ターゲットキーワードに関して文字列レベルで現状設定されている広告クリエーティブとの親和性をスコアリングしたものです。品質スコアを数えても広告パフォーマンスは改善しないというのは、運用されている方であれば百も承知のお話だと思いますが、品質スコアが変われば広告パフォーマンスが良くなるという誤解はまだまだ蔓延しています。

siranuiでは、過去と現在の比較と課題要因となっているキーワード特定が可能

 広告ランクは、広告の質と上限単価の掛け合わせにより決まりますが、広告の質を構成するコンポーネントは、推定クリック率・広告の関連性・ランディングページの利便性であり、広告の質をターゲットキーワードレベルで分割したものが品質スコアなので、品質スコアを構成するコンポーネントも推定クリック率・広告の関連性・ランディングページの利便性なのです。そして広告クリエーティブの改善によって実績のクリック率やクリック単価は変化していきますが、推定クリック率は推定値ですのですぐには変化しません。そのため、広告クリエーティブを変えたのに品質スコアが期待値通りに改善していないように見えてしまいます。結論、品質スコアの変化には広告クリエーティブの変更からタイムラグがあるため、品質スコアが変化したかどうかで広告クリエーティブの改善があったかどうかを変更後すぐに確認しているようでは、結果を見誤ってしまうし、仮に1ヶ月後に変化を確認して変化要因を探っているようでは施策のスピードとしては遅すぎるのです。

 siranuiでは、広告クリエーティブの作成支援機能とともに文字列解析機能を有しており、過去30日の掲載結果から各ターゲットキーワードの文字列と広告クリエーティブの文字列を照合し、広告クリエーティブ上の視認性の課題を持つ文字列はどの文字列かを特定することができます。主に運用上でスピーディな改善が可能である2つのコンポーネント、推定クリック率と広告の関連性に関して、それらが示唆する課題点を文字列レベルで抽出する機能です。

推定クリック率が平均より下の要因となっている文字列抽出例。広告の関連性とは文字列も対応方法も異なります。

 またそれらの抽出画面において、課題のある文字列を含むターゲットキーワードの抽出とカスタマイザ属性の設定、既存広告の編集と入稿を実現することで改善のスピードを速めます。(開発完了)
参考:Unlocking the power of Google Ads 05

想定ターゲットと利用シーン

 基本的には多くの広告アカウントを管理・運用している代理店向けのシステムですが、昨今増加しているインハウスで運用している広告主向けでも利用可能と考えています。

 広告パフォーマンスの改善に繋がる施策立案への活用を主軸としつつも、新規クリエーティブ作成機能や予算管理機能など、複数の広告プラットフォームを活用する場合に煩雑になりがちな基本的な運用業務に関しての機能も充実しているので、実際の運用業務においても運用人材のトレーニングにも活用できると考えています。

提供機能一覧(開発中の機能を含む)とご利用料金

 siranuiは、まだまだ自動化が困難な広告クリエーティブの作成・改善の機能を主たる機能として開発を進めてきましたが、先に述べた通り、広告パフォーマンスの改善における3つのレバーに関して、広告管理画面上ではいくつもプロセスが必要な業務、分析〜課題点抽出〜改善、の流れをいかにスピーディに実施できるかに主眼を置いて開発を進めていきます。

クリエーティブ|Creatives
  作成・編集
  -新規クリエーティブ作成
     -既存クリエーティブ編集
     分析・改善
     -品質スコア分析
     -文字列解析
     -広告の改善効果
     ‐広告診断/訴求要素検証(開発中)
バジェット&ビッディング|Budget & Bidding
 
管理・予測
  -予算管理
     -着地見込み予測
     -入札戦略診断(開発中)
    分析・最適化(開発中)
     -パフォーマンス分析・改善サジェスト(開発中)
     -曜日別、週別、月別費用対効果分析・コストアロケーション機能(開発中)
ターゲティング|Targeting(開発中)
 
作成・編集
 分析・予測
  -定量分析(日別、週別、月別キーワード、クエリ数×表示回数、クリック、CV)
    -文字列解析(キーワード、クエリ × 表示回数、クリック、CV)
    -オーディエンス分析(新規・既存)オーディエンス別効果予測

月額:¥100,000、6ヵ月契約(自動更新)
※利用開始月は無償で利用可能
※広告アカウントの月額費用が¥1,000万以下の場合。月額¥1,000万を超える場合は別途お見積もり致します。

本日、9月17日より提供開始

 そして本日、9月17日より外部への提供を開始致します。利用開始月は無償で利用可能です。今後も現在開発中機能の提供開始のお知らせや改善点や有効な利用方法等をこちらでアップしていきたいと考えていますので、どうぞ宜しくお願い致します。

設計者略歴

米満 智之
2002年よりデジタルマーケティング事業に従事し、大手2社での運用型広告事業の経験を基に2013年グーグル合同会社に入社、アカウント再構築施策である"Project hagakure"や"GORIN Project"を企画推進。2018年3月、株式会社unknown設立。

当社設立後もグーグル広告のシステムおよびプロダクトの仕様に基づいたアカウント分析及び改善施策の立案や大型アカウントの運用業務をサービスとして提供し、自動化を前提とした効率的な運用業務を遂行するために今回リリースするsiranuiの前身となる社内システムを2018年より構築。運用型広告のパフォーマンスの最大化および最適化と業務効率の改善を市場全体に浸透させることが当社の使命と考えております。

お問い合わせ
電話:03-5562-8823
ウェブサイト:https://un-known.co.jp/
info@un-known.co.jp

リリースURL:https://newsrelea.se/wJLrZ8



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Tomoyuki Yonemitsu / un-known inc.
株式会社アンノウンとは、”葉隠” 葉陰に隠れて見えない=まだ知られていない、”はやい、うまい、やすい”を生み出していくために設立した会社です。各種アドプラットフォームの運用業務、コンサルティング業務、データ分析に基づくクリエーティブ制作やデジタル人材の育成業務を行っております。