40歳からの勇気〜なりたい自分になるためのアドラー心理学〜 【第9章:「なりたい自分になる」ための目的論的生き方】
「原因論」から「目的論」へ
「なりたい自分になる」ための準備が整った上で、いよいよその具体的な方法論へと移ろう。
前章でもふれたように、「コモンセンス」に従って考えるならば、世の中には「変えられるもの」と「変えられないもの」とがある。そして「変えられるもの」とは実はこの世界中でたった一つしかない。
それはあなた自身だ。
あなたは、あなたを変えることができる。そしてあなたが変われば、世界は変わる。なぜならその世界とは、あなたに見えている(あなたにしか見えない)世界だからだ。
あなたは自分自身を変えるために、まずは「原因論的」思考から「目的論的」思考に切り替えていかねばならない。
「目的論的」な考え方については第3章で詳しく述べたが、ここではまた別の切り口で話を進めてみよう。つまり「原因論と目的論の違い」という観点からだ。
原因論と目的論は、実は「立っている場所」は同じである。
図(18)のように、原因論と目的論の違いは、向いている方向の違いだ。原因論は「過去」を向いているのに対して、目的論は「未来」の方向を向いている。
そして両者が立っている場所は、「今ここ」だ。
つまり原因論と目的論の違いは、「今ここ」をどうとらえるかの問題なのである。原因論は過去の方向を向いているので、「今ここ」にいる自分は過去によって作りあげられたものだと考える。しかし「目的論」は未来を向いているので、「今ここ」にいる自分は「未来の方向に導かれている」と考えるのだ。
今あなたが直面している課題があるとしよう。
あなたにしてみれば、それは「降りかかった困難」である。もしあなたが原因論的にそれをとらえたならば、この困難は「過去の何かの原因」によってもたされたものであると考えるだろう。
しかし目的論的にそれをとらえたならば、この困難は「未来に向けて意味のある何か」であると考えるのだ。つまり、目的論はポジティブ思考なのである。
しかし、そうは言っても未来は目には見えないものだ。それは「そのように信じる」しかない。いやもっと突っ込んで言うならば、それは自ら作り上げるしかない、いわば「虚構」なのである。
一方で、過去は自らが体験した目に見える「真実」である。
それは実際に「起きたことだ」と誰もがそう思い込んでいるものだ。だからこそ原因論は強いのである。
しかし、ここまでこの記事を読み進めてきたあなたなら、一般的には性格と呼ばれる「ライフスタイル」が、幼い頃に自ら作り上げた仮想の目標によって、その行動までをも支配していることを理解しているはずだ。
子どもは、まだ自らの体験を言語化できない頃に、その体験を「感覚」を通して解釈し、極めて未熟な目標を作りあげる。それは、自らの劣等感を補償するための仮想の目標なのだ。つまりアドラー心理学的に考えるならば、人はみな自ら作り上げた目標に導かれて生きているのである。
「なりたい自分になる」ための目的論的思考とは、幼い頃に無意識に作り上げた仮想の目標を、大人になった今、「感覚」だけではなく「イメージ」や「言語」を使って、それをより「建設的な」目標に書き換えていくことを意味する。
つまり、あなたは目的論的思考を使って「新たな虚構」を作り直すのだ。
今のあなたにピッタリ合った仮想の目標を、意図的に、そして戦略的に作り上げる方法を以下に紹介していこう。
仮想の目標を意図的に作る
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