40歳からの勇気〜なりたい自分になるためのアドラー心理学〜 【第8章:なりたい自分になるための準備】
なりたい自分になるための心構え
さて、ここからは「なりたい自分になる」ための方法について具体的に提案していきたいと思う。が、まず初めにあなたに言っておきたいのは「なりたい自分になる」ためにはそれにふさわしい「準備」と「心構え」が必要になるということだ。
アドラーは『個人心理学講義』(アルテ)の中で、次のように言っている。
【勇気があり、自信があり、リラックスしている人だけが、人生の有利な面からだけでなく、困難からも益を受けることができる。そのような人は、決して恐れたりはしない。困難があることは知っているが、それを克服できることも知っており、すべて例外なく対人関係の問題である人生のあらゆる問題に対して準備ができているからである。人間的な観点からすると、対人関係的な行動に対して準備ができていることが必要である。16P】
そう、アドラーの言う準備とは「対人関係に対する準備」であり「心構え」なのだ。なぜなら「人生のあらゆる問題は対人関係から生じる」ものであり、それ以上でもなくそれ以下でもないからだ。
人は誰もがライフタスクと呼ばれる人生の課題に直面するが、それら(「仕事の課題」「交友の課題」「愛の課題」)はその関係性の深さに差はあるものの、いずれも対人関係の課題であることに違いはない。
そしてあなたが覚悟すべきことは、あなたを取り囲む「社会」は時としてあなたに対して「理不尽である」という事実だ。正確には「あなたにとって理不尽と思える」ようなことが、「社会」では頻繁に起こり得る可能性があるいうことである。
例えば、精一杯努力した甲斐もなく受験に失敗することもあるだろうし、自分よりも業績の低い同僚が自分よりも出世してしまうこともあるだろう。あるいは信頼していた友人から裏切られることもあるだろうし、自分には非がないにも関わらず「あらぬ疑い」をかけられることもあるかもしれない。あるいは周りの人たちが立て続けに病気になることだってあるだろうし、愛している人から愛されなかったり、あんなにも愛し合っていた彼(もしくは彼女)と突然の別れをむかえることだってあるかもしれないのだ。
経験豊かなあなたに、社会の理不尽さについて説明するのは釈迦に説法かもしれないが、社会の中で感じるこのような理不尽さを、アドラー心理学では「困難」と呼ぶ。
「なりたい自分になる」ために、あなたには二つの心構えが必要となる。
まずひとつめは、「人生にはあらゆる困難が、まるで雨あられのように降りかかるものである」という適切な認識を持つこと。
そしてふたつめは、「それらの困難は正しく準備することによって、必ず克服することができる」という信念を持つことだ。
困難に直面すると、「なぜ自分ばかりがこんなに酷い目に遭うのだろう」と、時に人は嘆き、絶望し、孤立する。しかし困難は自分だけに降りかかるものではなく、「誰もが直面するものである」ということを認識し、まずはそれをそのままに受け入れる必要がある。
しかし、その「困難」は克服することができるということを一つの真理として理解しておくことが大事だ。
アドラーの言葉を借りるならば、『すべて例外なく対人関係の問題である、人生のあらゆる問題に対して準備ができていれば』、あなたは自らに降りかかる困難を克服することができるのである。
そう、「全てはありとあらゆる問題に対処する」という準備と心構えなのだ。
アドラー心理学では、いわゆる神経症的な人はあらゆる問題に対して準備ができていないと考える。神経症的な人は「限定された問題だけを解決できればそれでいい」と考えているからだ。
しかし「それは誤りである」とアドラーは言う。
「仕事の課題」「交友の課題」「愛の課題」は、人生のありとあらゆる問題を包括しているのであり、この3つの問題を偏りなく、バランスよく解決していくことが我々には求められているからだ。
つまり限定的な問題解決とは「脇舞台」で立ち回ることに過ぎないのである。
例えばビジネスで大成功している人がいたとしても、その人が「仕事の課題」に対してしか準備をしていないのであれば、それは単なる「ワークホリック」という名の神経症だ。
周りの友人に対する「交友の課題」や、家族に対する「愛の課題」への準備ができていなければ、それは脇舞台の住人に過ぎないのである。少なくともアドラー心理学ではそのように考える。
「なりたい自分になる」ためには神経症的な傾向とはおさらばしなくてはならない。
つまり、あなたにはありとあらゆる「対人関係の問題」に対する準備と、その問題によってもたらされる「困難」を克服するという決意が必要になるのだ。
その準備と決意が備わった時に、あなたはアドラーのいう『勇気があり、自信があり、リラックスしている』人間になることができるだろう。そしてこれが、「なりたい自分になる」ためのはじめの一歩となる。
困難に対する「意味付け」を変える
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