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【心と体の不調を解明】子どもの心の傷(ACE)とは?長期的影響とその原因を考察
子ども時代の逆境体験(ACE)が成人後の心と体にどのような影響を与えるのかを解説します。ACEスコアを用いてリスクを早期に把握し、無条件の愛を示す方法について学びましょう。
この記事を読んで学べること
ACE(幼少期の逆境体験)の理解
自分のACEスコアがわかる
大規模研究が証明する、幼少期の体験の重要性
無条件の愛の大切さ
親子の関係を深めるための具体的なアクション
子ども時代の心の傷―今も続く心と体の不調の原因とは?
私たちの現在の心身の健康は、幼少期の経験に大きく影響を受けています。子どもの頃に体験した愛情や安心感、あるいは愛情不足や虐待、ストレスといった経験が、大人になってからの生活の質に大きな影響を与えることが、科学的研究によって証明されています。これは、幼少期の逆境体験(ACE)として知られています。
子ども時代にどんな経験をしましたか?
あなたの子ども時代を思い返してみてください。
両親がいつもケンカしていたり、ちょっとしたことで感情的に怒られるので、常に親の機嫌を伺いながら生活していたことはありませんでしたか?家の中がピリピリしていて、安心できる場所ではなかったかもしれません。もしくは、友達の家で見た家庭の光景が、あなたには遠い存在に感じたことがあったかも知れません。
このような幼少期の辛い出来事の数々が、いわゆる「幼少期の逆境体験:ACEs」と呼ばれるものに該当するかもしれません。
子どもに影響を与える幼少期の逆境体験とは?
ACEとは Adverse Childhood Experiences の略で、日本語では「幼少期の逆境体験」などと言われています。
これは、子どもが幼少期に経験する心的外傷や虐待、ネグレクト、家庭内の暴力や離婚、親の精神疾患など、成長に悪影響を及ぼす体験のことを指します。
子供の頃の不幸体験(ACE)が注目される理由
ACEが注目される理由は、これらの体験が子供時代で終わるのではなく、その後、大人になってからの人生において、心身の健康に長期的で深刻な影響を与えることが研究によって明らかになったためです。
ACEスコアとは?子どもの心と体に及ぼす長期的な影響
子ども時代に有害な体験が多いほど、成人後の心身の健康に悪影響を及ぼすリスクが高くなると言われています。そのため、子ども時代にどれほど有害な体験をしたかを具体的に示す指標としてACEスコアがあります。これは、子ども時代に経験した有害な体験のレベルを数値化したもので、スコアを知ることで健康リスクの度合いを把握しやすくなります。その結果、予防や早期介入が可能になります。例えば、ACEスコアが高い人は以下のような問題を抱えるリスクが高くなります。
例えば、ACEスコアが高い人は、以下のような問題を抱えるリスクが高くなります。
- うつ病や不安などの精神的な問題
- 心臓病、糖尿病、肥満などの身体的問題
- アルコール依存症、薬物乱用、犯罪行為などの社会的な問題
自分の「ACEスコア」はどれくらい?
以下は、幼少期にどれだけの逆境を経験したかを簡単に示す指標で、10の質問に基づいてスコアが算出されます。
ACEスコア質問票
1.十分な食事が与えられない、衣服が汚れている、あるいは守ってくれる人や世話をしてくれる人がいないと感じましたか?
はい ☐ いいえ ☐
2. 親が離婚、別居、または死別によって、親がいなくなったことがありますか?
はい ☐ いいえ ☐
3. うつ病、精神疾患、または自殺未遂をした人と生活していたことがありますか?
はい ☐ いいえ ☐
4. 家族の誰かが、アルコールや薬物(処方薬を含む)に依存していたことがありますか?
はい ☐ いいえ ☐
5. 家庭内で、親や大人が他の家族に対して暴力(突き飛ばす、殴る、叩く、脅すなど)を振るったことがありますか?
はい ☐ いいえ ☐
6. 家族の誰かが刑務所に入っていたり、実刑判決を受けた人と生活したことがありますか?
はい ☐ いいえ ☐
7. 家にいる親や大人が、あなたをののしったり、侮辱したり、けなしたり、感情的に傷つけられたことがありますか?
はい ☐ いいえ ☐
8. 家にいる親や大人から、叩く、殴る、蹴る、噛むなどの身体的な虐待を受けたことがありますか?
はい ☐ いいえ ☐
9. 家族から十分な愛情を感じられなかったり、家族に大事にされていないと感じたり、あるいは特別な存在だと思われたことがないと感じますか?
はい ☐ いいえ ☐
10.自分が望まない性的接触(愛撫、あるいは内/肛門/膣内の性交/挿入など)を強制されたことがありますか?
はい ☐ いいえ ☐
【ACES Aware】
スコアが高いほど、成人後の心身の健康リスクが高まる可能性があります。もしスコアが高い場合は、専門家に相談することをお勧めします。
科学的に証明された幼少期の経験の影響:大規模研究の結果
幼少期の経験がその後の人生の質を決定するということを示す強力な証拠があります。これは、ペリー就学前プロジェクトと呼ばれる大規模な研究の結果によって示されています。
これは、1960年代に米国で行われた長期的な研究で、経済的に恵まれない3~4歳児を対象に、質の高い幼児教育プログラムに参加させたグループと、そうでないグループを50年以上にわたり追跡調査しました。
結果、幼児期に質の高い教育を受けた子どもたちは、以下の点で顕著な違いが見られました。
- 学業成績の向上:プログラムに参加した子どもたちは、高校卒業率が高く、学業成績も優れた結果を残しました。
- 経済的安定:大人になってからの就職率が高く、収入も高い傾向がありました。
- 犯罪率の低下:犯罪行為への関与が少なく、地域社会においても健全な生活を送ることができました。
この結果は、幼児期にどのような経験をするかが、長期的にその人の人生に大きな影響を与えることを示しています。
親としてできること:子どもに無条件の愛を示す方法
親として、自分の子どもが未来に向かって健やかに成長してほしいと願わない親はいません。しかし、日々の忙しさやプレッシャーの中で、どうすれば子どもが安心感と愛情を感じながら成長できるか、不安に感じることもあるでしょう。
無条件の愛
裕福でなくても、忙しくて子どもと過ごす時間が限られていても、できることはたくさんあります。たとえ時間が少なくても、子どもにとって何よりも大切なのは、無条件の愛を感じることです。無条件の愛とは、子どもが何をしても、どんな状況にいても、あなたが変わらず子どもを愛し、大切に思っていることを伝えることです。
子どもの反抗はSOS:愛を求めるサインに気づいていますか?
子どもは、時に反抗的な態度を取ったり、親を侮辱するような憎たらしいことを言ったりすることがあります。そんなとき、感情的に反応して叱ったり、拒絶したり、子どもを嫌ってしまうのは自然な反応かもしれません。
しかし、子どもがそんな言動をする裏には、寂しさや不安、そして親への期待が隠れていることがあります。子どもの心の奥底にある本当の気持ちに気づいてあげることが大切です。子どもがそういった言動に至ってしまった理由を理解し、そのまま受け入れ、愛し続けることが、子どもが本当に求めているものなのです。
もちろん、これは決して簡単なことではありません。親としても感情を揺さぶられ、傷つくこともあるでしょう。それでも、子どもが最も求めているのは、無条件の愛と受容です。親がその愛を持ち続けることで、子どもはいつかその愛に応えてくれるようになります。
忙しい日々の中でもできる、小さなアクション
愛情は、特別な時間や特別な状況を待たなくても伝えられます。忙しい毎日の中でも、次のようなシンプルなアクションで、子どもに無条件の愛を伝えることができます。
- スマホを置いて耳を傾ける
短い会話の時間でも、スマホや仕事の手を止めて、子どもにしっかり向き合うことが大切です。スマホを操作しながら話を聞かれると、子どもはとても寂しい気持ちになります。
- 適当に対応せず、確実に時間が取れる時を設定し、必ずその約束を守る
忙しい時に子供に話しかけれた時、適当に対応してはいけません。
「今は時間が取れないから、夕ご飯のときに話を聞くね」と具体的に時間を指定しましょう。そして必ず、100%それを守ることが重要です。
- 会話タイムを設定し、ルーティンにする
とても忙しくても、10分程度の時間は捻出できると思います。例えば、お風呂に一緒に入るときや、寝る前の10分間などを親子二人だけの時間として設定し、ルーティン化しましょう。
愛が子供の将来を変える
ACEスコアは、子どもの心と体の健康に大きな影響を与える指標です。スコアが高い場合は、早めに専門家に相談し、適切なサポートを受けることが重要です。また、日常生活の中で無条件の愛を示すことが、子どもの健やかな成長を支える最も効果的な方法です。
忙しい日々の中でも、少しの時間を使って愛情を注ぎ、子どもとの関係を深めることは、将来にわたって大きな影響を与えます。今日のあなたの小さな行動が、子どもの未来をより良いものにする第一歩です。
みなさんの経験や考えをぜひ聞かせてください!