「草食系男子に教えられたこと」#毎週ショートショートnote
肉食系。
という人々が、過去にいたそうだ。俄には信じ難いその人々の噺を、私は近隣にただ一人の老爺から何度も聞いてきた。
しかし、今となってはその戯言も、あるいは本当の事のように感じる。ある時から人類は、セイショクという行為をしなくなったそうだ。それは子を成すプロセスであったけれど、科学技術がその代替となった。ただ、次第にそれすらも行われなくなった。
人類は種の存続を放棄したのだ。私は、広い土地でただ一人、若い情念を燃やす。人類は、穏やかに終焉へと向かっている。
私は、数年ぶりに老爺を訪れた。不自然なほど穏やかな表情で、老爺は語る。
ある時から「草食系」という人々が現れ、瞬く間に人類普遍の価値観となった。しかし、それは進化だったのだ。我々は、イブのDNAを運ぶ器なのだ。長い争いと無数の犠牲の基に洗練された、人類の到達点なのだ。
それから、老爺は息絶えた。最期の刹那、彼は私に囁いた。
「これからは、君が歴史を創るんだよ。エバ」
「草食系男子に教えられたこと」(完) — 410文字
参加させていただきました。
最近少しバタバタしていたので、久しぶりの投稿です。
今後ともよろしくお願いいたします。
かしお