掌編小説「白い髭を蓄えて」
夜の繁華街に、サンタクロースが立っている。何とも髭の似合わない、いや、そもそも髭など生えるはずのないそのサンタクロースは、こそこそと身をよじりながら、健気にも道行く大人たちに声をかけ続けている。何かのキャンペーンなのだろう。私は、その可愛いらしいサンタクロースにしばらく目を奪われた。
クリスマスなど、もう何十年も意識してこなかった。毎年人手の少なくなるこの日は、私にとって年に数回の稼ぎ時の一つでしかない。私はいつも蚊帳の外で、無心に赤色のLEDライトを振り回してきた。サ