お金を受け取ることは感謝を受け取ること
2022年1月、アパレルブランド「ADDIXY」として初めての展示受注会を開いた。
約1年間の準備を経て、ついにリリースとなる瞬間だった。
この1年間は、0から何かを生み出す難しさと向き合い続けた時間だった。自分の中に確かに存在する、形にしたいかけらたち。しかし、それらは手を伸ばせばすり抜け、一瞬でも気を抜くと再び見えなくなってしまう。
その断片をかき集めながら、少しずつブランドの輪郭を描いていった。まさに一進一退で、作っては壊す作業の繰り返しだった。
そしてついに自分が生み出したプロダクトが世に出る瞬間を迎えた。
心臓が跳ねるような緊張と期待が入り混じる中、会場に商品を並べた瞬間、これまで自分が作り上げてきたものに対して、どのような反応をいただけるのかを見守る緊張感が押し寄せた。
お金が動くということは、感謝を受け取ること
私にとってこの展示会は、単に商品を見せる場ではなかった。自分の想い、魂を注ぎ込んだ一枚一枚の服が、まるで自分の分身のように並んでいた。
そしてその日、初めて自分の服が売れお金を頂いた瞬間、私はこのことに気づいた。
誰かが自分の手で服を選び、その価値に対する感謝の気持ちとして、お金を支払っていただける。
服が売れた瞬間に感じたのは、単なる取引ではなく、感謝の気持ちが形になって伝わってくる感覚だった。そして同時に、お金が動くということにはシビアな現実も伴うことを実感した。
本当に価値を感じ、感謝が生まれた時だけ、お金が動くという厳しさ。
それは、こちらが提供する価値がフラットに評価される瞬間でもある。
アパレルブランドをビジネスとして続けていく以上、ただ良いものを作るだけではなく、相手にその価値を伝え、心を動かさなければお金は動かない。
ましてや、作り手の自己表現の場ではない。
お客様の手に渡ったときに初めて、その商品が持つ本当の価値が認められる瞬間が訪れる。
それこそが感謝の形として表れる瞬間であり、同時にそのシビアさを実感する瞬間でもあった。
B to Bのビジネスもきっと本質は同じだが、もう少し複雑な事情が絡むことが多い。だからこそ、B to Cのビジネスでは、感謝という形がよりシンプルに表れるのだと思った。
お客様が目の前で価値を認めてくれた時、そこには余計なものがなく、純粋にその価値が問われる。
商売とはお客様からの感謝の気持ちが対価として返ってくるものだという考え方が、今も私の原動力になっている。その瞬間こそが、ビジネスの本質であり、私がこの道を歩み続ける理由でもある。
シビアな側面があるからこそ、ファッションを形にすることには面白さがあり、怖さがあり、そしてやりがいを感じる。
すぐに結果が出るわけではないけれど、そのプロセスを通じて、まだ見たことがない世界を見たいという強い思いが湧いてくる。