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一羽の小鳥


さあ、思い浮かべてごらん。
梢に小鳥が一羽とまっている。
澄んだ声でさえずる鳥だ。
くちばしは愛らしく、
羽根には綺麗な模様がある。
思わず見惚れて、
ふっと息をした瞬間、
小鳥は飛び去る。
もはや梢には影さえ残っていない。
ただ枯葉が揺れているだけだ。
『博士の愛した数式』小川洋子 p.220
1-1=0
美しいと思わないかい?
同書p.221

数学を愛する博士が
0という数字の美しさを
鳥の羽ばたきを通して語る場面

僕には
余韻という言葉が浮かんだ
鳥の確かにそこにいたという残像
影が残らずとも
枯葉が揺れて
脳裏には未だ小鳥の輪郭が
その美しさと共に香っている

0は余韻?
0は輪郭?
0は『?』

美しいものを見るたびに
時がふわっと持ち上がる
そんな感覚が湧いてくる

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