橙の香木 1月10日〜365日の香水
豊かな中東の香りの世界
蒸留機の発明も錬金術の実験の過程でのアルコールの発見も中世イスラム文化圏でのことだった。
暗黒時代と言われたヨーロッパに比べ、イスラム文化は豊穣で先進的であったらしい。
スペインやポルトガルを訪れれば、その勢力がイベリア半島まで及んだことがよくわかる。
香りの文化も同様で、特に蒸留技術が人と香料の関係を一気に躍進させたと言っていい。
香りの良い花々などを蒸留し、芳香物質を液状で抽出する。
より使いやすくよりそのものの香りを楽しめるようになった。
現在も魅力的な香料の集積地
訪れたことはないけれど今でも中東の香料文化はとても豊かで、沈香、乳香や没薬そしてさまざまなスパイスなどが集まってくる。
サウジアラビアのタイフという高地ではローズが栽培されていてタイフローズは昨今、優秀なローズの香料としてライジングしてる。
モンタル氏
サウジアラビアでは日本のサブカルチャーも人気で大規模なEXPOも開催されている。
この国で20年ほど、王族のために香りを提供していた調香師がピエール・モンタル氏。
私は彼の立ち上げた「モンタル」の香りのいずれ劣らぬ濃厚さから、ドバイあたりのブランドと思い込んでいた。
その背景には、20年の間に受けた中東からのたくさんの刺激があったのだろう。
沈香木を蒸留する
Aoudとは香木、沈香のこと。昨今いろいろな香水に沈香“が調合されているけれど、2008年に設立されたモンタルがその先駆けになったのかもしれない。
香道の世界では「馬尾蚊足」といって、香木は馬の尾、蚊の足のようにか細く細かく刻んで嗜むものだけれど、サウジアラビアの大きなマーケットの香料商の店に入れば、様々なランクの沈香木が山積みされている。
中国、日本にもたらされた沈香は薫香料として、加熱され揮発したその香りをゆっくり味わうようなやり方で珍重された。
沈香樹もどんどん減少しているけれど、ラオスやタイ、インドネシアなどで植樹が試みられ、樹脂のたまった木片を蒸留してオイルを得ることがされているらしい。
収率は0.2%ほどというから、ローズやジャスミンに引けを取らない希少性だ。
橙の沈香 MONTALE AOUD ORANGE/ MONTALE/2014
私の好きなレザーやバイオレットも調合されているけれど、シャネルのMISIAやサンローランのPARISとも異なるその使われ方。
重厚だけれど暗くはなく、ウッディやアンバーが滑らかな低音を響かせるような匂い立ち。
モンタルはフランスのブランドだけれど、やはり中東の異世界感が香りの構成の中に充満している。
この文化圏には、西洋とも極東とも異なる魅力がある。
それぞれを、敬いたい。
香り、思い、呼吸。
1月10日お誕生日の方、今日が記念日の方おめでとうございます。
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