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本屋になる #001|今日から、本屋を始めます。〜まったくの素人が「本屋×クラフトビールの店」を計画する話
本日12月14日(土)は新しいことを始めるのに良いという一粒万倍日。しかも天恩日も重なってさらに縁起が良いらしい。六曜では赤口でもあるので完璧に吉日というわけではないけれど正午のみ吉に転じるというので、この記事は正午にアップしました。商売には験担ぎが大事ですからね。
改めて自己紹介します。店主の伊藤ケンジと申します。
これを機に名前をカタカナ表記にしました。漢字だと画数がとても悪いことをこの歳になって初めて知ったからです。商売には験担ぎが大事ですからね(2回目)。
グラフィックデザイナー・アートディレクターとして28年間、大手企業のグラフィック広告やテレビCMの制作に携わった後、40代後半でクラフトビールの醸造家に転身して2つのブルワリーの立ち上げを行いました。そして5年間の佐賀県でのブルワリー立ち上げを終えて、この夏に埼玉県飯能市というところに戻ってきました。ここは最初のブルワリーを立ち上げた時に都内から移住してきた場所なんです。
さて、また関東でブルワリーの立ち上げでもやるか、とか考えていたのですが、引越すための物件を探している時に、蔵書の置き場所にとても困ったんですね。といっても本棚4本、800冊ほどで、気合の入った読書家の人とは比べようもない量なんですが、それでもなかなか十分な広さの物件が見つかりません。
一時はいっそのこと「本」との縁を絶って潔く処分しようかとまで思い詰めたのですが、やはり切なくて手放せないのです。せめて本棚1本くらいまで減らそう、と妥協して3日間格闘した結果、処分していいかとなったのは15冊だけ…。やはり手放す本なんて選べない。やるなら全部手放すか全部持っていくかしかないな、と思いました。
最終的には、割と広い家が見つかったので本は手放さずにすみましたが、自分にとって「本」の存在が思った以上に大きいことが身に沁みてわかりました。
佐賀県では小さいながらも政令都市である佐賀市に住んでいたのですが、既に街の本屋はほぼなくなっており、飯能市でも同じ状況です。ショッピングモールや駅ビル、百貨店に大型〜中型書店はあるものの、地方都市では個人商店としての本屋は、既に成り立たないというのが常識のようです。
そうして飯能に戻った頃、ちょうど内田樹氏の近著『図書館には人がいないほうがいい』(内田樹 著・朴東燮 翻訳/ARTES)を読みました。コモン〜共有地〜としての本の重要性が繰り返し語られており、失われつつある場所の守り人として抗い続ける図書館員、書店員、そしてひとり書店の店主たちへのエールが送られていたのです。そして偶然にも内田氏が飯能に講演に訪れ直に話を聞く機会にも恵まれました。こういうのが重なるタイミングは、きっとなにかが僕を突き動かそうとしているんです。
そうした巡り合わせの中で、僕はこれから一生本と関わり続けられる仕事を始めよう、と決めました。
とはいっても全国各地でどんどん本屋が潰れているこの状況です。書店員の経験もない素人の僕が普通に本屋をやっても成功する見込みは薄いでしょう。いろいろなやり方を研究して、自分なりのやり方を見つけることにします。これって、8年前に「クラフトビールを自分でつくりたい」と思った時とまったく同じなんです。まだ登山口にも着いていないのですが、新しい山を登るのは初めてではないってことです。こういう状況はわりと好きみたいです。
この業界は出版〜取次〜書店という独特の流通システムがあって新規参入が難しいとされていたのですが、ちょうど後押しするようにこの10月に取次大手のトーハンが個人書店の開業をサポートする「HONYAL」(ホンヤル)というサービスを開始したと聞きました。これは追い風なのかな。でもあまりに調子がいい時にはちょっと慎重になりますね。
HONYAL : あたらしい本屋をつくる仕組み https://honyal.jp
そういうわけでなんとなく本屋を始めるのですが、クラフトビールのブルワーを辞めるつもりはなくて、何らかの形で続けていく予定です。本屋×クラフトビール。あまり儲からない二つを掛け合わせてどうするんだ、という声も(自分の中で)ありますが、なんか面白そうでしょう?
何を大切にするのかという優先順位は、人生の流れの中で変わってきます。お金が必要な時期もありますし、時間を惜しんで仕事に打ち込まなくてはならない時期もあるでしょう。ブルワリーの立ち上げに苦闘した飯能での3年間、佐賀での5年間は無駄ではなかったけれど、もう次のフェーズに行くべき時期だったのだと思います。
家族と一緒に飯能で暮らすことを決めたので、ここをベースに、歳を重ねても続けられる仕事のあり方を見つけたい。そう考えると既にある企業に就職するのではなくて、街に根付いた商いを始めるのがいい。
さて、具体的には実店舗を構える前に、まずはネットショップや一箱古本市などの活動から始めて、本屋になるには何をしたらよいのかを探っていこうと思います。
全くの手探りなんですが、その一次体験をnoteで記事にしていこうと思います。同じように本屋を始めたい人、街に本屋が増えてくれたら嬉しいという人、クラフトビールに興味がある人、新しいことに挑戦したいと思っている(けど一歩踏み出せないでいる)人。そんな人たちに読んでいただければ幸いです。またご意見、アドバイスなどもビシバシいただけたらとても嬉しいです。
まずは開店まで、もちろんその後も。どうぞよろしくお願いします。
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