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健康成人に対する四肢への灸刺激が 深部温度、自律神経活動および入眠に与える影響
この研究では、健常成人の四肢末梢への灸刺激が入眠時の深部体温、自律神経活動、および入眠潜時に与える影響を検証しました。
目的
入眠前に四肢末梢の皮膚温度が上昇すると放熱が促進され、深部体温が低下することで睡眠に移行しやすくなると考えられています。本研究では、市販のスモークレス台座灸を四肢末梢に用い、その影響を調べました。
方法
対象者: 森ノ宮医療大学の学生および教職員8名(平均年齢35.6±12.1歳)。
研究デザイン: ランダム化クロスオーバー法を採用し、同一被験者に灸刺激(Mox群)と台座灸を置くだけ(対照群、Cont群)を実施しました。
介入:
Mox群は左右の合谷穴および太衝穴に台座灸を2壮施灸しました。
実験手順は、安静座位5分 → 介入10分 → 安静仰臥位5分 → 消灯して30分間の睡眠指示。
評価項目: 鼓膜温度、心電図、睡眠脳波を計測しました。
結果
睡眠および心理状態: 2群間に差は認められませんでした。
鼓膜温度:
Mox群: 消灯6分後から低下。
Cont群: 消灯後10分まで上昇し、その後緩やかに低下。
両群間に有意差なし。
自律神経活動:
LF/HF値(交感神経活動の指標)に群間差なし。
HF(%)値(副交感神経活動の指標)は介入中にMox群で上昇傾向が見られたが、消灯後は群間差なし。
入眠状態: 両群とも消灯後7分以内に入眠し、入眠潜時に群間差なし。
考察
四肢末梢への灸刺激は深部体温や自律神経活動に影響を与えず、入眠潜時への効果も認められませんでした。
Mox群の鼓膜温度低下は灸刺激による末梢血管拡張が原因と考えられますが、LF/HF値に差が見られなかったことから、心臓交感神経への影響は少ないと推測されます。
台座灸によるHF(%)値の上昇傾向は、過去の研究と一致しました。
入眠潜時に差が見られなかった要因として、灸刺激の熱量が不十分であった可能性が考えられます。
先行研究では、不眠症患者において灸セルフケアが入眠潜時短縮に寄与する可能性が示唆されていますが、本研究の対象が健常成人であったため、結果が異なった可能性があります。
結論
本研究において、健常成人に対する四肢末梢へのスモークレス台座灸は、入眠時の深部体温、自律神経活動、入眠潜時に影響を与えませんでした。
今後の課題として、以下が挙げられます:
灸刺激量の再検討
四肢の皮膚温度測定
不眠患者を対象とした研究
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