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映画感想文 【JOY 奇跡が生まれたとき】

Netflixで配信が始まった
【JOY 奇跡が生まれたとき】を観た。

体外受精を成功させた3人の、実話を元にしたストーリー。

今では「体外受精」は不妊治療の選択肢の一つとして認知されているが、
この技術を成功させるまでには、科学的な面だけでなく社会的・倫理的にも困難が多くあった。
それらを乗り越えるまでの長い年月を描いた作品。
とても良かった。


私が子供の頃、テレビなどで「試験管ベイビー」と騒がれていたのを覚えている。
その多くは好意的ではない扱い、もしくは好奇心中心の扱いだったように思う。
この映画で描かれているような、その技術を成功させるまでの苦難の道のりに考え至らせるようなものではなかった。

いつの時代も新しい技術に対しては「危険じゃないのか?」という意見が先行するのだなぁと、つくづく思う。

インターネットが世間一般に普及した頃もそうだったし、今なら自動運転やAI、エネルギーに関する技術などだろうか。
やがてそれらの新技術も、進歩し、世の中とのすり合わせも出来上がり、普及し始めて「当たり前」のものとして認識されるようになるのだろう。
そして旧技術は「時代遅れ・間違いだらけ」なものとなる。

大昔、瀉血(体から血を抜く)が医療行為として当たり前だったのが、今では投薬や手術が普通に行われている。大昔の人からすれば「悪魔の行為」みたいなことが、現代では「当たり前」。逆に「なんで血ぃ抜くねん」だ。


ほんの数十年で、世の中の常識は変化する。
そして人は、常に身近にあるものには、それらはずっと昔から変わらずそこにあったかのように錯覚してしまう。

24時間営業は50年前は当たり前ではなかったし、
郵便が翌日に届くのも当たり前ではなかった。
設備が整った病院や、医薬品も多くはなかったし、
食品衛生はお粗末なもの。
ゴミや公害が大きな社会問題だった。
いつでもどこでも清潔で安全に物やサービスが受けられるのって、50年前には全然当たり前じゃなかった。
昭和の大阪万博では「月の石」がアメリカ館に展示されていたけど、今は宇宙空間で働いてる人たちがいる。

進歩のスピードが速すぎて「あれ?」と思った時にはすっかり常識が変わってるような昨今。

ちょっと前まで「年寄りにスマホなんて」と言われていたのが、今日、お昼に弁当を買いに行ったら、私の前にいた高齢男性二人ともスマホで決済してたよ。小銭出すより早い、という感覚に変わってきてる。

こんなふうに人は徐々に新しいものに馴染んでいく。
初めは怖がっていても、普及すればするほど「大丈夫」と思えてくるし、
やがてそれは「当たり前」になる。


【JOY 奇跡が生まれたとき】は、そうして「当たり前」になった多くのもの、技術やサービスの裏側や始まりには、困難と戦い道を開いた人たちがいることに、時には思い巡らさないとな、と思えた映画でした。
体外受精の技術確立のために協力した、多くの不妊に悩む夫婦、特に女性たちにも感銘を受けました。


あと、
ビル・ナイはいいねぇ。
「ラブ・アクチュアリー」の落ちぶれたロックスターが、こんな渋い役が似合うようになるなんて。
歳をとるって素敵だねと思えるわ。




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