目標/評価の納得度について考える
目標設定や評価制度は、組織の成功に不可欠な要素です。
しかし、どんなに優れた目標設定の手法や評価基準を用いても、個々のメンバーがそれに納得しなければ、期待する成果は得られません。
特に、「自分を見てくれてもいない人が、達成できそうもない目標を押し付けてくる」と感じた場合、その納得度は低くなります。
本記事では、目標設定の種類や手法を体系的に説明し、それらがどのように納得度に影響を与えるかについて考えてみます。
目標設定の種類と手法
目標設定にはいくつかの方法があります。それぞれの手法には特有の利点と課題がありますが、ここでは主に以下の3つの手法について説明します。
1. SMART目標
SMART目標は、以下の5つの要素を満たす目標設定の手法です。
Specific(具体的):目標は明確で具体的でなければなりません。
Measurable(測定可能):進捗や達成度を測るための基準が必要です。
Achievable(達成可能):現実的に達成可能なものである必要があります。
Relevant(関連性):組織の目標と関連していることが重要です。
Time-bound(期限付き):達成するための明確な期限が設定されています。
この手法は目標をなるべく定量的にし、達成に向けての道筋を示すために非常に有効です。
2. OKR(Objectives and Key Results)
OKRは、目標(Objective)と主要な成果(Key Results)から構成されます。目標は達成したい大きな方向性を示し、主要な成果はその目標に向かうための具体的なマイルストーンとなりえます。
OKRは特にスタートアップ企業やイノベーションを重視する企業で多く採用されています。
3. Moonshot
Moonshotは、ストレッチングな目標を設定する手法です。
アメリカの宇宙計画「アポロ計画」が名前の由来で、非常に難易度の高い挑戦を意味します。
この手法は、革新や大規模な進展を目指す際に使用されますが、現実的でないと感じられることが多いため、納得度が低くなるリスクが高くなることは注意です。
組織文化としてチャレンジが根付いていている環境であれば、馴染むことでしょう。
目標設定の納得度に影響を与える要因
ここまで目標設定の種類に関して見てきましたが、目標設定の手法がどんなに優れていても、個々のメンバーがその目標に納得しなければ、効果は限定的です。
納得度に影響を与える主要な要因は以下の通りです。
1. 信頼関係の欠如
「自分を見てくれてもいない人が、達成できそうもない目標を押し付けてくる」と感じると、メンバーの納得度は大きく低下します。
信頼関係が欠如した状態では、どんなに良い目標設定手法を用いても、その目標に対するモチベーションは上がりません。
2. 無理な目標設定
どんなに優れた目標設定の手法を用いても、現実的でない目標はメンバーのやる気を削ぎます。
OKRやMoonshotが典型例で、挑戦的すぎる目標は時として絶望感を与え、納得度を下げることがあるという点にも注意しましょう。
一方で、挑戦的な目標をあえてすることで硬直化を排除することもできます。
その時々の組織状態に合わせてアレンジしていきましょう。
3. コミュニケーション不足
目標設定や評価において、上司やマネージャーとの十分なコミュニケーションが欠かせません。
目標を設定する際には、メンバーとの対話を通じて目標の妥当性や意義を理解してもらうことが重要です。
納得度を高めるための具体的アプローチ
目標設定と評価の納得度を高めるためには、以下のような具体的なアプローチが有効です。
1. 個々の目標と組織の目標を連動させる
目標設定の際には、組織全体の目標と個々の目標を連動させることが重要です。
これにより、メンバーは自分の役割と貢献が組織全体の成功にどうつながるかを理解しやすくなります。
例えば、営業部門の目標が売上増加である場合、個々の営業担当者の目標もその達成に向けて具体的に設定されるべきです。
2. 定期的なフィードバックとサポート
目標設定後も定期的なフィードバックとサポートが不可欠です。
メンバーが目標に向けてどのように進んでいるかを確認し、必要なサポートやリソースを提供することで、達成感と納得度を高めることができます。
また評価に対しての期待値調整をすることも可能です。
3. 成果だけでなく努力を評価する
目標達成だけでなく、過程や努力も評価することが重要です。
これは特に難易度の高い目標に対して有効です。
例えば、月間売上目標に届かなかったとしても、新たなアプローチや顧客開拓に挑戦した姿勢を評価することで、メンバーのモチベーションを維持できます。
4. メンバーの意見を尊重する
目標設定のプロセスにメンバーを積極的に参加させることで、納得度を高めることができます。
上司やマネージャーが一方的に目標を押し付けるのではなく、対話を通じて目標を共に設定することが大切です。
具体的には、「この目標についてどう思いますか?」「達成するためにどのようなサポートが必要ですか?」といった質問を通じて、メンバーの意見を取り入れます。
場合によっては目標をメンバーに考えてもらい、その目標をベースに半期目標や通期目標を設定していくのが良いでしょう。
結論
目標設定や評価は、組織の成功に不可欠な要素ですが、メンバーの納得度を高めることが最も重要です。
信頼関係の構築、現実的な目標設定、十分なコミュニケーションが不可欠であり、メンバーと共に目標を設定し、成長を支援する姿勢が求められます。特に、新しい手法(OKRやMoonshotなど)を導入する際には、メンバーの納得度を高めるための工夫が重要です。
最終的には、「この人とすり合わせた目標なら仕方ない」「この人に評価されるなら仕方がない」という信頼関係がなければ、どんな目標や評価でも納得されないという現実を認識し、それに基づいたマネジメントを実践することが求められます。