理想のキッチン探し59長原
豪徳寺の散歩を切り上げ、各停の電車を3つ乗り換えて、東急池上線の長原へ。長原と言えば、『小さいおうち』の映画で愛人役の吉岡秀隆が住んでいる、という設定の町。実はこの先の石川台は山田洋二監督ほか、さまざまな映画やドラマ、CMでよく撮影される町なんですよねー。と盛り上げたところで、古巣へ戻ってまいりました。長原は、東京で最初に暮らした馬込の町から自転車圏内で、種類は少ないけどいい魚を扱う魚屋さんがあって、ちょっと高めだけと手は届くお値段の大山地鶏の店があります。味は今一つだけどフランスパンも売っている小さなパン屋もできました。「わがしあそび」の開業も、散歩の途中で見ていました。そして、今や友人になったジョージアワインの輸入販売を行う本間真理子さんが、最初に店を開いた町です。なかなか思い出もありますが、何しろ大田区は坂の町。石川台が撮影でよく使われるのも、恐ろしく急な坂がたくさんあって、絵になるからです。長原にはオリンピックもありますが、売っているママチャリはすべて変速ギアつき。変速ができないと自転車は使えないですし、おそらく電動自転車の普及率も高いです。ああ、私は長原をよく知っている……!
一応、歩いてみて、新しいカフェができていたり、私が最近気に入っている地産マルシェもあるし、八百屋も増えている。前より使いやすくなっているようです。徒歩で行ける隣の旗の台は最近『アド街っく天国』にも取り上げられ、新しい店が増えたとのことですが、商店街自体の規模が大きいせいかあまり変化は感じられません。ただ、若い人向けの店は増えたようです。そしてオオゼキは健在です。私が暇な時期に歩きすぎて飽きちゃったところではありますが、使える町ではあります。
この部屋は1ヶ月以上前に情報が公開されていて、内見の申し込みはだいぶ前にしていました。地場で仕事する不動産屋さんの応対が紳士的、と夫は気に入っていました。数日前に会社で契約していた家族が退去したので、ようやく昨日、観ることができました。
駅からは徒歩7分、大家さんの家と隣り合ったテラスハウスの木造住宅で、1・2階合わせて80㎡弱の3LDK。建ったのは1992年。木造は寒いですが、雨戸がついていて、1階はガスファンヒーターも使えます。隣の家との距離はそれほどないけど、日が射さないほどではありません。隣の家ともろに接するためか、2階の真ん中の4・5畳の部屋は目隠し付きでちょっと暗めです。奥には和室があって障子と床の間までありますが、6畳なので布団を敷く生活を変えずに済みます。和室の前はベランダなので干したものがそのまま取り込めます。その前は大家さんの畑なので東向きですが日当たりはよい。
収納は手前の洋室6畳の上部分に少しあるだけで、あとは1階廊下に押入れ的収納と、1800ミリ幅のクローゼット。それぞれおそらく1間ずつ。着替えや洗濯などの動線は階段を挟んで長くはなるのですが、まあ使えます。雪谷のときも、2階のクローゼットから服を出して1階の和室で着替えていました。洗濯物をフロアを超えて移動するのは、実家の時にそうでした。
この部屋の魅力は、LDKにあります。8畳ほどのLDは、横長で小さな庭があって、その向こうに畑。畑の手前に梅の木が何本も植わっているので、1月2月は梅の花が見放題です。天井が高いので、本棚の上置きを置くこともできる。レイアウトを工夫すれば、ソファも置けます。
そしてキッチンはもともと4畳半のDKだったのでリノベしたそうで、かなり広い。キッチン自体も2800ミリもあって、調理台が950ミリ、シンクの横には水切りかごも置けます。3口ガスコンロです。シンクの横に壁を立てて冷蔵庫置き場が確保されています。コンロ側の奥の通路は少し狭くなっていて1100ミリですが、調理台~シンクのところは1980ミリもあるので、ここに棚類を置けば、2人で行きかうことも可能です。そして、今の部屋と同じく、廊下から入る引き戸と、ドアのないダイニングへ通じる開口部と2ウェイ動線になっているので使いやすいです。
パントリーは通路の押入れにしてもいいし、ボックスなどを買って足してもいい。何しろ、背面の棚は自由にレイアウトを組めるので何とでも置ける。何なら冷蔵庫を今のように調理台前に置いて、シンク横に棚を置いたっていいんです。
大家さんの面接というか顔合わせもさせていただいて、いい感じの老婦人という感じで、料理が好きみたいで、これから来る梅仕事の季節の話で盛り上がりました。部屋が気に入った理由を知りたがって目を細めてくださったんですね。ただ、この部屋はクリーニング業者さんが今なかなか時間が取れないことと、洗面台の陶器を前の人が割ったようで、大きなひびが入っていて交換の交渉が必要とかで、5月末から6月頭にならないと入居できないとのこと。私たちはむしろ時間ができるので助かります。
入居申し込みまではとんとん拍子だったのですが、問題は、不動産屋さんが「工務店さんに、1階はいいけど2階は常識の範囲内でモノを置いてください」と念を押された話。私たちの本棚の数は常識の範囲を超えているのではないでしょうか? 何しろ40センチから110センチまで、さまざまは幅の2列置きの本棚が11本あって、さらにボックス収納なども使っているんですね。この数カ月で、古本屋に段ボール4箱分の本を送りましたけど、でも資料として減らせない本もずいぶんたくさんあります。ないと仕事にならない。
1階は何しろLDKなので、本棚は置けて4本、3分の1程度です。それ以外の本が、分散されるにせよ2階に集中しますし、仕事机も2つ入る。ベッドは入らないけど、布団や衣類もある程度置きます。前に、鉄骨住宅なら耐荷重もあるけど、木造の家だとあまりたくさん本は置けない、と不動産屋さんに言われたこともあります。豪徳寺のキッチンに難があり、何より競合が多いことを考えれば、この部屋を押さえておきたい。でも、もし床が抜けたら……。
もう一つ、気になるのは大家さんがかなりの高齢で1人暮らしということ。お子さんはいらっしゃらないそうで、近所にいくつも物件を持っているそうですが、何かあったらこの部屋はどうなるのでしょうか?
やはり一番の不安は本棚。さてどうするべきでしょうか?