理想のキッチン探し㊺・千駄木
物件の動きが鈍い時期になったからか、退去予定が決まった物件でも検索に引っかかるようになりました。そんなわけで、すっかり忘れていた先月内見を申し込んだ物件を見に行きました。場所は谷根千の千駄木。
30年ぐらい前、当時住んでいた実家から、新しくできた市立中央図書館に車でよく通いました。そこで借りて乱読した本の中に、森まゆみさんの『や小さな雑誌で町づくり 谷根千の冒険』がありました。20代初めだった私は一生仕事を続けるうえでは、編集部に子どもたちを連れてきて主婦たちで仕事を始め、やがて町の歴史を掘り起こしていく駆け出し当時の森さんの話はとても面白く、参考になりました。
90年代の終わり頃から、古い家を活用した町おこしが東西で始まり、西は京都だったけれど、東は森さんがかかわった谷根千でした。当然、憧れがあり、交際中だった今の夫とも谷根千に行ってみました。風邪をおして行ったので、大阪の家に帰ったとたん高熱を出して寝込んだ、というオチがあったりしますが。
そんなわけで、憧れと共に長く見てきた谷根千。でも、古い物件が意外に割高で住んだことがなかったのです。その千駄木で割安物件というので申し込んでいたんですね。前置きが長くなりました。
キッチンがそこそこ広くて家電置き場などの食器棚つき、窓もある。というのが魅力だったのですが、家が建ったのが1979年と耐震基準が古く、部屋数が2LDKと仕事部屋を分けづらそうなことが気になっていました。鉄骨造の3階建てとなっていますが、3階は小部屋があるだけのようです。貸し出されたのは1階部分。
キッチンの広さは微妙です。調理台の幅は47センチと狭かったからです。その替わり、図面にはない洗いかご置き場がシンクの左手にあります。3口ガスコンロの右側も、今の部屋と同じぐらいの余裕はあります。2016年にリフォームしたそうで、キッチン下の収納は引き出しで1番下まで引き出しになっているタイプです。
冷蔵庫置き場が奥になっているのは、手前の壁に置けば使いやすくなりそうですが、問題はキッチン以外にありました。まず、1階で隣が接近しているので、ダイニングの奥の庭の前以外は暗い。手前の部屋は12時というのに電気をつけないとダメな暗さです。そしてキッチン前の窓も開ければ隣の壁です。暗い部屋に住んで健康が改善しなかったが、明るい部屋に暮らしてすぐに睡眠障害が解消された私は、もう二度と暗い部屋には暮らしたくありません。
しかも、エアコンがLDにしかなく、個室2つにはエアコンの配管を通す穴が空いていません。ガスは使えるようでファンヒーターは入れられそうですが、夏の過酷な暑さに対し、扇風機しか使えないのは困ったものです。窓に変なパイプが渡っているので、ウインドエアコンすらつけられない。寝に帰るだけの家ならそれでガマンできる可能性もありますが、私は基本的に家で仕事をするので、とてもじゃないけど、エアコンなしでは無理です。
収納はそれなりに考えられていて、クローゼットはパイプ入りが玄関収納部分の上半分だけですが、クローゼットにできそうな収納空間が水回りの横とキッチンの隣にあるので、パイプを買えば何とかなりそうですが……。
82㎡あるのに、壁がちょっと少ないのも心配です。収納の一部を本棚にする手もなくもないですが。最近つくづく思うのですが、本棚を置くスペースを確保するのは、面積ではなく間取りなのだということ。広くても本棚置き場が足りない部屋もありますし、狭くてもそこそこ本棚が置ける部屋もある。この部屋は、割と広いけれど本棚置き場は少なめです。残念です。
谷根千は、商店街が充実しているしカフェも飲食店もたくさんあって、コミュニティもうまくすれば入れるかもしれず、書店も多い。もちろん山手線の内側で交通も便利。物件から西日暮里駅まで6分です。素敵な町ですが、今回は残念ながら見送らざるを得ません。
ランチに入った店が、フランス家庭料理でコース形式で、サラダ、スープ、メインのコック・オー・ヴァンとおいしかったので、よかったです。