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理想のキッチン探し㊷阿佐ヶ谷
「10月・11月は忙しいから、物件探しは無理」と言っていた夫が日曜日の夜、「こんな物件を見つけた」とスマホで見せてくれたのが、なんと阿佐ヶ谷駅から徒歩6分で88㎡、覚悟していた予算より2万円も家賃が安い掘り出し物でした。独立型キッチンに窓があり、棚も十分置けるし3口コンロだし、コンロ横には鍋も置けるしシンク横には、普通サイズの水切りかごも置けるというすばらしい部屋なんです。
不動産屋さんが、私たちの住所を見て、この間まで隣のマンションに住んでいたと話してくれました。そういえばあのマンションで夏に引っ越ししている人を見た! 奇遇です。ご近所という発見に気をよくしたのですが、不動産屋さんが事情を話してくださいました。お子さんが3歳と5歳で、小学校入学前に何としても家を買いたかった。子どもを育てられる広い部屋は賃貸でなかなか見つからないから。しかし、コロナ禍以降、家の価格は上がる一方で手ごろなモノが見つからず(プロなのに!)結局、一駅あまり先に子育て向きの家を見つけて買ったけど、急に買い物が不便になって奥さんが困ったと。駅前にスーパーもないんですって。本当にちょっと西へ行っただけなのに、スーパーだらけのこのあたりとは全く環境が違うそうで、結局奥さんはこのへんまで買い物に来ているそうなんです。そんな郊外が実は珍しくないところに、日本の貧しさを感じてしまいました。
さて、間取りにちょっと問題がありそうな気配はありましたが、見てみないとわからない、と夫が月曜の朝一で電話をし、私たちは無理やり時間を作って観に行くことにしたのです。中央線の中野~吉祥寺は人気のエリアで、朝一で電話したのにすでに埋まっている、というケースも目立ちますが、今回は内見できたのです。もしかすると、もう引っ越し? まだ地元を堪能しきってないし、そもそも私だって秋は多忙。いつどうやって引っ越しするのか。お金はどう工面するのか。ドキドキしながら出かけました。キッチンの位置はこんな感じです。
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キッチンに開口部が三つもある!でもキッチンの面積が大き過ぎるかもしれません。かといって、ダイニングテーブルを置くほどのスペースはない。隣にダイニングとして使える部屋がありますが、その隣が和室、そして洋室となっている3DK プラス納戸という間取り。玄関が広いので、奥に本棚が置けそうです。しかし、和室は両サイドに収納があり、仏壇と神棚の置き場がそれぞれあり、床の間もついています。
困ったのは、ダイニング以外はすべて奥行きが押入れサイズなこと。しかもダイニングはクローゼットになるポールがわたっていますが、真ん中に段があり、コートやワンピースはかけられない。間取り図で観た3・5畳のサービスルームを、夫は「本棚を別のところへ置けば、俺の仕事部屋にできる」と言っていたのですが、広い空間の真ん中に段があって押入れ状態で暗く、ここに洋服掛けのポールを入れるしか、クローゼットが作れない部屋でした。奥行きが深い収納は、押入れ用のプラスチックボックス類を固めるなどしないと取り出しにくくて不便です。何とも使いにくい収納ばかりの部屋です。
そのうえやたらと収納があることと、各部屋がつながっているために開口部が多過ぎて、壁が少ない。この部屋はもともと大家さんが使っていたもので、二世帯住宅らしい1戸建ての1階です。またしても、開口部が多過ぎる一戸建て。何で日本人はこんなに開口部だらけにするのでしょう。昔から、一戸建ては収納が多いと聞いてはいましたが、それは結局、壁が少ないということとイコールだったのです。私は本棚を置く壁が欲しい。
しかもこの間取りだと、仕事部屋が一か所になるかもしれないし、夫は片方がダイニングに机を持ってくる方が無理がないと言います。二個前までの部屋はダイニング空間に仕事部屋が浸出していてくつろげませんでした。仕事部屋に間借りしている感覚で、前の部屋で机を別の小部屋に動かして見えなくしたら、初めて「生活している」気持ちになれたことを思い出します。またそうした間借り生活に逆戻りですかーと思ったら、テンションがダダ下がりでした。
なぜでしょう。そうした使いやすそうだが広いキッチンと、収納だらけの和室のせいでしょうか。今の部屋より10㎡も広いのに、かえって狭くなったように見えます。こちらの建物はヘーベルハウスだそうです。と聞いて、去年観た鶴見の部屋を思い出しました。もしかすると、メーカー住宅は狭く見える特質があるのでしょうか?
そしていくつも内見したおかげで、オーナー物件は前の住人がどんな人たちだったか想像できるようになってしまいました。ここもおそらく1階を使っていたのはお年寄り。だから仏壇置き場や神棚があって、押入れ収納ばかりになっているのです。東京と言えども、シニア世代までは和室や押入れ中心の和風住まいを求めているのですね。などとリサーチとしては面白いけれど、自分たちの部屋を切実に求める私たちの好みとは全く違います。阿佐ヶ谷でとても便利で安くてステキ、と期待しただけにそのがっかり度は高い。
しかも、夫が推測するにこの家賃の安さは、設備更新などしてお金をかけたくないから。確かに神楽坂の部屋がまさにそうした大家さんでした。この家は築22年で設備交換時期かどうかというと微妙なタイミングです。今は大丈夫でも、数年もすればお風呂が壊れたり、キッチンのコンロがダメになったりするかもしれません。それ以外にも家はいろいろなトラブルが生じます。そのときに迅速に対応してくれる方なのか……。
前の家が平成初期に建ったマンションで、キッチンの引き出しが壊れたのを、ガムテープで修繕した大家さんを思い出しました。そういえばお風呂も壊れました。さすがに浴槽に穴が空いたので交換してくださいましたが。あ、今回のキッチンはこんな感じです。
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広くていいなあ、このきっちキッチンが魅力だったの、と思ったのですが、下の収納の扉を開けてみると、余計な収納と、真ん中で大きく陣取っている排水管が。こんなに場所を取る排水管は初めて見ました。
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そして一戸建てにありがちですが、窓はたくさんあるのに、隣の家の壁が迫っていて暗い。唯一道路に面しているのが、トップの写真の洋室ですが、ご覧の通り生け垣があるので暗いです。日当たりの悪い世界に逆戻りしたら、睡眠障害が再発しそうです。
何より、開口部が多過ぎるので本棚置き場を確保しきれません。一部は開口部をつぶすにしても、10㎡狭い今の部屋にすっきり納まっている本棚が半分ぐらいしか入らないです。無理です。
こうなると、再び私たちは、「本が多過ぎるからいけないのよ!」という状態に陥ってしまいそうです。生き方を否定されるような部屋。資料があってこその仕事なのに、資料のために引っ越しすることもできない。いったい誰がこの生活を保障してくれるというのでしょう。資料があってこそとはいえ、ギャラが上がるわけではないのです。家賃代負担してくれる得意先なんているわけありません。会社員なら会社が保障してくれますけどね、でも今はそういう会社も減っているかも。日本には公的な家賃補助制度はないのです。本当に、再び、日本の住宅の貧しさを痛感してしまいました。いや、資料に囲まれている、普通じゃないライフスタイルのお前が悪いんだろ!いやじゃあ普通って何?型にはめ込んで効率よく人間を暮らさせる国って……堂々巡りです。
周りの人たちには、利便性も失わず高額家賃も払わず広い部屋を求めるのは無理、と言われます。本当にそうなのでしょうか? 私たちが求めるのは、たった一つの部屋です。たくさんある必要はない。もちろん条件が厳しいからこそ、住んですぐに新しい部屋を探し始めているのです。定期借家じゃない部屋を。結論はどこへ向かうのでしょうか。私たちの部屋探しは続きます。