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ストレスとメンタルヘルス①

 魚が焼き魚の姿で泳いでいると思っていた子どもがいるという冗談のような話を聞いたことがあります。ネグレクトのケースでしょうか。

 適切に物事を理解する機会がなければ、人が物事をどのように理解するか(しないか)ということですが、ストレスやメンタルヘルスという言葉の一般的な使われ方に、似たような印象を受けます。

1.心の健康と豊かな人格

 メンタルヘルスとはどういうことでしようか。
 精神科医の小此木啓吾は著書の中で

「心の健康とは、憎しみ、悲しみ、不安、罪意識のない、幸せと満足がいっぱいの快適なだけの世界のことではない。むしろ悲しみを悲しみ、怒りを怒り、恐れを恐れとして感じることができる世界である。」

と述べています。
また、心理学者ユングは、豊かな人格を

「心が何にでも対応できる状態であるということ」

と表現しています。

私たちにとって大切なことは、
ストレスそのものを無くそうとすることよりも、ストレスに対応できる状態を作り、保つということです。
ただし、過剰なストレスは当然、調整される必要があります。


 したがって、豊かな人格と健康的な心で充実した人生を送りたいならば、「悲しみや怒り、恐れをそれらとして感じながら、できる限り柔軟に対応できるようになること」が大切です。また、ストレスを理解すれば、「ストレスフリー」という状況が真に実現するのは麻痺と言える状態であることが分かります。

2.ストレスとは

 「ストレス」は応力と訳される物理学由来の用語です。ゴムボールを指で押すと、ボールには外からの指の力とボール自体がもとに戻ろうとする内からの力が生じます。「ストレス因」は外的な力、「ストレス反応」はその力による内的な影響です。前者をストレッサー、後者をストレインと呼ぶこともあります。

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 また、ストレスは苦境とも言えるようなネガティブな出来事だけでなく、人生において好ましいと思われている変化からも生じます。結婚や出産、職場での昇進などもストレス因(ストレッサー)であることが知られています。ストレスとは、「それまでの生活様式や価値観における変化を迫まるもの」です。

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 その「変化」が好ましい形で達成されれば、それは「成長」と言えるかもしれません。今まさに苦しんでいる人に言うのは酷なことになりますが、ストレスつまり苦悩が人を成長させる可能性を含んでいることは様々な文脈で語られています。トラウマを克服した後の人の成長を「心的外傷後成長」と呼びます。

3.ダーウィンの教えから

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 「最も強い者が生き延びるのでもなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。生き残るのは変化できるものである。」

というダーウィンの論旨がよく語られますが、
ストレスやメンタルヘルスも同様です。

重要なのは、環境への適応力で、種のレベルならこれを進化、個人においては成長と呼ぶということです。

 このことは、回避することのできるストレスや困難を放置すること、つまり改善を怠ることを正当化する理屈ではありません。問題点を見つけて改善することを繰り返して文明やテクノロジーを進歩させてきたのが人間です。そして、苦しんでいる人に何らかの形で手を差し伸べることができるのも人間です。

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