【乙庭植物図鑑】20230106 ハイドランジア クエルシフォリア(= カシワバアジサイ) ‘リトルハニー’ (Hydrangea quercifolia ‘Little Honey’)
これまで、著書や歴代ブログやwebメディアなど、さまざまな媒体に植物の解説を書いてきましたが、結構情報が散逸している状態になってきたので、マイペースではありますが、note.に私の植物や植栽に関する知識をまとめていきたいと思います(ライフワークにできたらいいな😊)。
今日は、乙庭オンラインショップの年始出荷品の中で、皮革質感で濃厚ダークな冬葉色がとても印象的だったカシワバアジサイの黄金葉品種 ‘リトルハニー’ を紹介します。
基本種のハイドランジア クエルシフォリアはアメリカ南東部の森林地帯原産の落葉低木です。
アジサイの仲間の中でも、葉の形状が柏餅を包むの使われるカシワ(Quercus dentata)にちょい似ていることから和名ではカシワバアジサイとも呼ばれます。
カシワバアジサイは、日本ではいわゆる「イングリッシュガーデンブーム」が興った1990年台後半頃から一般の園芸店などにも多く流通するようになった種で、一般のセイヨウアジサイに見られるような球状の花序ではなく円錐状の穂咲きとなるクリーム色〜白緑色みの花がガーデニング好きの方の間でも人気が高いです。
本種 ‘リトルハニー’ は、カシワバアジサイの比較的矮性樹形の黄金葉品種です。
春から秋までは下写真のように美しい黄金葉が半日影の植栽でとても映えます。
ちょっとゴワゴワした質感で裂けこみの深い黄金葉が、他にはあまり似たものがない個性的なキャラクターで植栽の中でもほどよく目立って存在感を主張してくれます。
関東地方では5月中旬から6月の前半頃に開花します。カシワバアジサイ特有の円錐形の花序にかすかに緑みを帯びた白花がとても美しいです。
原産地よりも降水量が多い日本の気候だと、通常サイズのカシワバアジサイは開花期に花の重みと梅雨時期の雨量で花茎が急速に伸びることで花茎が倒れやすいのがやや難点なのですが、本種 ‘リトルハニー’ は、やや緩慢に1.2mほどに成長する矮性品種のため、花茎が倒れて樹姿が暴れることも少なく、美しい黄金葉と花も含めて、春〜秋までの長い期間観賞できる素敵な品種です。
カシワバアジサイ特有のゴワゴワした葉のテクスチャーも面白いですし面積のある黄金葉でつくられるまとまったボリュームはガーデニング素材としては意外と少なく、なかなか貴重な存在といえるでしょう。
カシワバアジサイは基本的には冬季落葉性なのですが、比較的落葉時期が遅く、暖冬の年や温暖地では真冬の時期まで葉が残ります。
晩秋の以降の寒さと日照に当たることで葉のゴワゴワ質感が一層増して皮革のようなテクスチャーと赤紫褐色の濃厚ダークな色みとなり、冬季限定の個性的な紅葉姿も楽しめます。
日本の気候環境にも合い、育てやすい低木ですが、初夏〜夏の直射で葉が日焼けしやすいので、植え場所は直射を避けた明るめの半日陰となる場所を選ぶとよいでしょう。初夏のシェードガーデンを明るくしてくれる素敵な植物です。
半日影の定番的な宿根草 ギボウシやアスチルベ、各種シダ類などと合わせると
多様な葉色、葉形の組合せがカッコいいシェード植栽を作ることができます。
アジサイの仲間に多く見られる傾向ですが、夏の終わり頃には次年の花芽が形成されるので、秋〜冬に枝先を剪定すると翌年に開花しません。
剪定は花を観賞した後に花茎の切り戻しも兼ねて行うとよいでしょう。
【プランツデータ】
■ ハイドランジア クエルシフォリア(= カシワバアジサイ) ‘リトルハニー’
■ 学名 : Hydrangea quercifolia ‘Little Honey’
■ アジサイ科(ユキノシタ科)
耐寒性落葉低木
■ 花期 : 晩春〜初夏(関東では5月中旬~6月前半頃)
■ 樹高 : 1.2m程度
■ 耐寒性 : 強い
■ 耐暑性 : 強い
■ 原産地 : アメリカ南東部(原種の主な生息地)
最後に私 太田敦雄の著作をいくつかご紹介します。
私と、おぎはら植物園の荻原範雄さん、フローラ黒田園芸の黒田健太郎さん・和義さんご兄弟との共著作「グリーントータルプランツブック」。前半の1/3を私が執筆担当しており、実例も交えた植栽論と植物の解説をしています。
私の最初の著作本「刺激的・ガーデンプランツブック」は、出版社のご都合で現在絶版となっていますが、この本に書いた内容も含めて、今後の出版物に盛り込んで、なんらかの形で情報としてこれからも手に入るようにはしていきたいと思っています。
noteの「乙庭植物図鑑」では、これまでの著書では解説していない植物も積極的に取り上げていく予定です。
自分だけの特別なお庭造りの参考になれば幸いです😊✨