私たちはどこへでも行ける…はず。
3日前の出来事である。
故郷札幌で亡くなった友人のお通夜が金曜日の18:00からあった。
ただ、それに参列すると、翌日土曜日の長男の運動会に間に合わない。
お通夜の直前の16:00〜18:00に「焼香」
というスケジュールが組まれていると同級生から教えてもらったため、その時間めがけて、奈良から札幌の日帰り旅を決行した。
直前の航空券購入で、極力安く行こうと検索した結果、ジェットスター航空を選んだ。
我が家から一番近いのは、伊丹空港だが、ジェットスターは関空出発である。
関空には、これまで、3回行ったことがあった。
1回目は2002年、留学先の天津へ行くために新千歳から乗り継ぎで。
2回目は2018年、夫のルーツを訪ねて奄美大島へ行くのに、大阪の上本町駅からリムジンバスで。
3回目は2019年、空港のイベントに参加するために、夫の運転する車で。
そう、電車で行ったことはなかった。
だいたい、この日は朝から不調だった。
なんとなくダルく、ボーっとしていた。
「ママ行かないで」と泣く3歳、
「ママ本当に今日帰ってくるよね?」と不安そうな9歳、
「え?ママ今から札幌に行くの?」と目を丸くする6歳を横目に、
リモートワークと半休を組み合わせて仕事を調整してくれた夫へ、よろしくお願いしますと託し、慌てて家を出たが、この時点で予定より10分遅れていた。
結果、予定していた電車にあと1分のところで乗り遅れた。
焦りつつもどこか空回っていると自覚しながら最寄り駅まで自転車を漕ぎ、結果、最短の道を選ばず、ちょっと遠回りしてしまったのだった。
予定の電車に間に合っていれば、大阪難波で乗り換え、そこから関空までは「南海電鉄」に乗る予定だった。
予定より1本遅れて近鉄電車に乗り、スマホで最速の乗り換え検索をした結果、南海電鉄よりJRが早そう。
大阪鶴橋でJRに乗り換え、天王寺駅から、関西空港行きの同じくJRへ乗り換えた。
駅のホームで、「関西空港行き」と「和歌山行き」の表示が並んでおり、同じホームでも乗り間違いさえしなきゃいいんだよな、と不安になる。
関西の地図がいまだにきちんと頭に入っていない私は、そうか、関空と和歌山って近いんだぁ。としみじみ思いながら、
なんて心の中で独りごちた。
乗り換え検索で出てきた通りの電車に乗り込んだものの、少し不安だった私は、近くにいた若い女性2人に
「この電車って関空に行きますか?」
と訊くも、
「あ、私たちも観光なんで」と言われ、あぁすみません、と引っ込む。
「後ろ〜両、切り離します」
というアナウンスがそのうち聞こえてきたが、
「へぇ切り離すんだ…」となぜかここで友人を思い出し、涙ぐむ。
………
…そういえば、ずいぶん長いこと停車してるなぁ、と思った瞬間、出発した。
電車に揺られながら、ふと違和感を覚え始める。
この電車、本当に関空に向かってるんだろうか?
Googleマップを見た時、どう考えても関空には行かなさそうなルートに目を疑った。
慌てて降り、階段を駆け下り、駅員さんに、
「あの!!私関空に行きたいんです!!どうしたらいいですか?」
と叫んだ。
駅員さんは、慣れた様子で、しかし誠実な態度で、
「前の4両に乗っていただく必要があったんです。今から日根野に戻って、そこから関空行きに乗ってください」と爽やかな笑顔で教えてくれた。
まるで、言う通りにすれば間に合うかのような錯覚を覚えるほど…
日根野に戻る間、気が気じゃなかった。
間に合うのか?間に合わないのか?
10:45出発の飛行機だが、確かもうこの時点で10:20くらいだった。
とりあえず関空に向かおう…
電車の中では慌てても仕方ないと観念した私は、ネットで
「後ろ四両切り離し」と検索してみた。
Yahoo!知恵袋のサイトの次に、こちらが出てきた。
結構間違える人が多いらしい。
そんな…もっと真っ赤っかな字で電車中垂れ幕つけてくれよ…
そして私は、数ヶ月前に、関連する記事をnoteで読んでいたことを急に思い出した。
関西空港駅に着くやいなや、走って走って、ジェットスターのカウンターに着いたのは、10:35。出発の10分前だった。
若い女性スタッフに、
すみません…と名前を告げるも、
「もうドアを閉めてしまったので…」
と断られる。
「私…今日行って今日帰ってくるんですよ…!お願いします、ダメですか…」
泣きながら懇願したが、40女の泣き落としなんて若い女性には通用しなかった。
「5000円で次の便に振り替えることが可能ですが…次の便は、出発17時で到着は19時ですが、意味ないですよね」
「はい、意味ないです(何言ってんだよ、19:35の便で帰ってくるんだぞ…)」
「そうしましたら、お客様ご自身で別の航空会社の便をご予約いただくしか。全日空やピーチ航空…」
「…わかりました…」と背を向けると、
女性スタッフが無線で、
「お客様がお引き取りになりました」と社内連絡しているのが背後から聞こえた。
曲がりなりにも、航空会社で働いた記憶が蘇り、「こういう客は迷惑だったよな…恥ずかしすぎる」
わずかばかりの自尊心がズタズタになった。
結局私は、ここまで来たんだからと引き返す選択肢はなく、2時間後のピーチ航空で、札幌へ向かった。
夫には言えない…
この航空券は、自分のカードで切った。
札幌の滞在時間は、約3時間。
会いたかった友人には感謝とお別れを言えたから、目的は果たせた。
そして私には、新たな目標ができた。
できたら「1歳まではちみつは食べちゃいけない」くらいの常識にしたい。
何にも方法は思いつかないけど。
私たちは行こうと思えばどこだって行けるし、
生きてりゃなんでもやれるはず。