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パントテン酸(ビタミンB5)

 パントテン酸(ビタミンB5)は、全ての生命活動に不可欠な水溶性ビタミンです。3大栄養素の代謝やCoA(補酵素A)の合成に関わり、特にエネルギー代謝において中心的な役割を果たします。語源はギリシャ語の「panto(全て)」に由来し、多くの食品に含まれることからこの名が付きました。


【基礎知識】

化学的性質

  • 水溶性ビタミンの一種

  • CoA(補酵素A)の前駆体として機能

  • 熱や酸に対して比較的安定



体内での代謝経路

  • 消化管で吸収後、CoAに変換

  • アセチルCoAの形で3大栄養素の代謝に関与

  • 余剰分は尿中に排出

他の栄養素との関係

  • 糖質、脂質、タンパク質全ての代謝に関与

  • CoAを介してTCAサイクルに参加

  • エネルギー代謝全般のコーディネーターとして機能

吸収・代謝のメカニズム

  • 小腸で能動輸送により吸収

  • 組織内でCoAに変換

  • 過剰分は腎臓から排出


【最新の研究知見】

エネルギー代謝における新発見

  • CoAを介したエネルギー代謝の制御機構が解明

  • ミトコンドリア機能の維持に必須であることが判明

  • 脂質代謝におけるアセチルCoAの重要性が確認

  • 細胞のエネルギー産生能力に直接的な影響を与えることが示唆

神経系への影響

  • 記憶力や学習能力との関連性が報告

  • 神経伝達物質の合成に関与

  • ストレス耐性の向上に寄与する可能性

代謝疾患との関連

  • 糖尿病患者での不足傾向が指摘

  • 肥満との関連性を示す研究結果

  • 代謝症候群予防への可能性


【相互作用】

栄養素との相乗効果

・他のビタミンB群との協調作用
・マグネシウムとの相互作用による代謝促進
・亜鉛との協働による酵素活性の向上

生活習慣による影響

・適度な運動による吸収率向上
・規則正しい食事による利用効率の改善
・十分な睡眠による代謝効率の向上

食事パターン

・たんぱく質を含む食事との同時摂取
・複数の食品からの摂取
・新鮮な食材の使用

阻害要因

生活習慣要因

・過度な飲酒
・不規則な食生活
・慢性的な睡眠不足
・過度なストレス

食事関連

・精製度の高い加工食品の過剰摂取
・偏った食事
・過度な糖質摂取

医薬品との相互作用

・抗生物質による吸収阻害
・制酸剤による吸収低下
・利尿薬による排出促進
・経口避妊薬による代謝変化

効率的な摂取のポイント

タイミング

・朝食での摂取が最も効果的
・3食に分けての摂取
・運動前後の摂取

組み合わせ

・たんぱく質食品との併用
・他のビタミンB群との同時摂取
・新鮮な野菜との組み合わせ

調理方法

・過度な加熱を避ける
・水さらしを控える
・新鮮な状態での摂取を心がける

【機能】

エネルギー代謝の中心的役割

・3大栄養素すべての代謝に関与
・ミトコンドリアでのATP産生を促進
・グルコースからのエネルギー産生を補助

細胞の新陳代謝維持

・細胞膜の構成成分として機能
・タンパク質・脂質の合成に関与
・細胞の修復・再生をサポート

神経系の機能維持

・神経伝達物質の合成に関与
・記憶力・集中力の向上に寄与
・ストレス耐性の向上をサポート

ホルモンバランスの調整

・副腎皮質ホルモンの合成に関与
・性ホルモンの産生を補助
・甲状腺ホルモンの働きをサポート

【不足すると…】

身体的症状

• 極度の疲労感
• 筋力低下
• 頭痛
• 吐き気
• めまい
• 不眠
• 手足のしびれ
• 副腎障害

精神的症状

• 記憶力の低下
• 集中力の欠如
• イライラ感の増加
• うつ症状
• 不安感の増大

代謝関連の問題

• エネルギー代謝の低下
• 脂質代謝の乱れ
• 血糖値の不安定化
• 体重管理の困難
• 運動能力の低下

免疫機能への影響

• 抵抗力の低下
• 感染症へのかかりやすさ
• 傷の治りの遅延
• アレルギー症状の悪化

【摂取した方がいい人】

• 過度な運動をする人
• ストレス過多の人
• 妊婦・授乳婦
• 高齢者
• 偏食傾向のある人
• 糖尿病患者
• アルコールを多く摂取する人
• 不規則な生活を送る人
• 精製食品中心の食生活の人

【どんな食材に入ってる?】

植物性食品

• 玄米(0.8mg/100g)
• アボカド(1.2mg/100g)
• えだまめ(0.9mg/100g)
• さつまいも(1.0mg/100g)
• しめじ(1.5mg/100g)

動物性食品

• レバー(4.8mg/100g)
• 鶏肉(1.2mg/100g)
• マグロ(0.9mg/100g)
• サケ(0.8mg/100g)
• 卵黄(3.2mg/100g)

調理のポイント

• 水さらしを控える
• 過度な加熱を避ける
• 新鮮な状態で調理
• ビタミンB群との同時摂取を意識

【摂取量】

目安量:5~6mg/日

推奨量(1日あたり)

• 成人男性:5mg
• 成人女性:4mg
• 妊婦:+0.5mg
• 授乳婦:+2mg
• 高齢者:4-5mg
• 乳児:2-3mg
• 小児:3-4mg

上限摂取量:該当なし

食品含有量

• 納豆 180g
• ひきわり 130g
• モロヘイヤ 300g
• アボカド 300g
• 鶏レバー 50g
• ささみ 200g
• たらこ 180g
• ひらたけ 220g
• えのき 400g

その他の食品含有量

• レバー(4.8mg/100g)
• 卵黄(3.2mg/100g)
• しめじ(1.5mg/100g)
• 鶏肉(1.2mg/100g)
• マグロ(0.9mg/100g)
• サケ(0.8mg/100g)

【摂りすぎると…】

過剰摂取のリスク

• 一般的な食事からの過剰摂取の危険性は低い
• 水溶性のため過剰分は尿中に排出

注意が必要な場合

• 大量サプリメント摂取
• 特定の医薬品との併用
• 腎機能が低下している人

症状

• 軽度の胃腸障害
• 頭痛
• めまい
• 吐き気

【効率の良い食べ方】


・他のビタミンB群との同時摂取
・朝食での摂取が効率的
・たんぱく質食品との組み合わせ

調理のポイント

・水さらしを最小限に
・過度な加熱を避ける
・新鮮な状態での調理を心がける

組み合わせ例

・納豆+卵
・レバー+ビタミンC豊富な野菜
・ささみ+キノコ類

【レシピ】

パントテン酸たっぷり!栄養満点丼

材料(2人分)

  • 納豆 180g

  • ささみ 200g

  • えのき 100g

  • モロヘイヤ 50g

  • 温かいご飯 2膳

作り方

  1. ささみを一口大に切り、塩こしょうで下味をつける

  2. えのきは石づきを取り、3cm長さに切る

  3. モロヘイヤは茹でて細かく刻む

  4. ささみを軽く炒め、えのきを加える

  5. ご飯の上に具材を盛り付け、最後に納豆をのせる


【専門用語】

  • パントテン酸:ビタミンB5の化学名。全ての生物に必要な水溶性ビタミン

  • CoA(補酵素A):エネルギー代謝に必須の補酵素。パントテン酸から合成

  • アセチルCoA:エネルギー代謝の中心的な物質。3大栄養素の代謝に関与

  • TCAサイクル:細胞内でエネルギーを産生する主要な代謝経路

  • ATP:生体内で利用されるエネルギーの形態

  • 水溶性ビタミン:水に溶ける性質を持つビタミン類。過剰摂取による危険性が低い


【引用】

  • Shimooka S, Tanaka H, Hatta H. CoAと運動によるエネルギー代謝の調節:相互作用と制御について. HJU Repository, 2020.

  • 「エネルギー代謝とミトコンドリア機能」. J-STAGE.

  • Miyajima R, Honda A. タウリンとカルニチンがミトコンドリア内アセチルCoA量の調節と脂肪酸代謝に与える影響. J-STAGE, 2022.

  • 「ミトコンドリア代謝を知るためのメタボロミクス」. 生科学会, 2023.

  • 糖尿病ネットワーク. 「糖尿病とビタミンB群」. DM Media, 2020.

  • 化学と生物. 「ビタミンの多様な機能」. J-STAGE, 46(6): 400, 2013.

  • 化学と生物. 「代謝症候群予防に向けたビタミンB群の可能性」. J-STAGE, 46(6): 400, 2013.


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JUNYA/パーソナルトレーナー
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