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複雑性PTSDがわかるまで(4) 複雑性PTSDの勉強→医師に相談→治療をはじめる

適応障害と診断されて休職することになり、精神科に通院していたものの、回復の兆しは見えませんでした。
適応障害のほかに原因があるのかもしれない…本や論文を調べているときに、複雑性PTSDという病名に出会いました。
そこに書かれていた症状が、私のケースと一致していたことから、複雑性PTSDについて詳しく調べることにしました。

今回は、その続きです。


生い立ちと複雑性PTSDの関係

複雑性PTSDの大きな特徴は、子ども期(おおむね18歳まで)に、虐待などの逆境体験を繰り返し経験してしまい、それがトラウマになっていることです。
虐待や暴力、性被害、ネグレクト、貧困、ヤングケアラー…逆境体験には色々あります。
私は、虐待、ネグレクト、貧困、ヤングケアラーを経験しています。

自分の生い立ちに負い目を感じて、生きてきました。
見苦しい、恥ずかしい、知られたくない、無かったことにしたい…ずっとそう思って生きてきました。
自分は成人した、だから過去のことは関係ない…自分としても、過去に囚われずに生きていきたいと思う反面、子どもの頃のトラウマを思い出さない日は、これまでに1日もありませんでした。
例えば、映画やドラマで暴力的なシーンを見ると、母に手足を縛られたことや、母が離婚後に交際していたパートナーから刃物を向けられたことなどを思い出します。その時の恐怖心や、母やパートナーに対する怒りの感情が込み上げてきてしまうのです。
日常生活のあらゆる場所・場面に、トラウマを思い出させる引き金があるので、避けることは不可能でした。

トラウマと当時の感情を思い出すことは、呼吸のように、無意識下で頻発している自然なことでした。
まさかこれが、精神疾患の症状であるとは、思い至りませんでした。
本によれば、これは複雑性PTSDの代表的な症状で、「感情のフラッシュバック」という言葉で説明されていました。
他にも、恥の感覚、感情・感覚の欠如、対人恐怖、思考の癖といった症状が、全て私にも当てはまることが分かりました。

医師への相談

文献を数編読んだ私は、理解したことと自分の症状を整理して、医師に相談しました。
なんだか、複雑性PTSDという病気の枠に自分をはめ込んで、医師にそれを認めろと迫っているようで、できればこんなことはしたくありませんでした。
しかし、ここで医師に相談することで、別の治療方法が見つかるかもしれない。
自分を奮い立たせて、なるべく客観的に、冷静に、相談しました。

医師は私の話をきちんと聞いてくださいました。
そして、私の見立て通り、複雑性PTSDの可能性が高いから、その治療をはじめましょうと言ってくださったのです。

医師が私の症状に対して複雑性PTSDを疑わなかったのは、私の生い立ちの問題に気づかなかったからだと、後日お話してくれました。
私も、体調不良の原因は仕事のストレスだと思い込んでいたので、仕事以外のこと、例えば生い立ちや私生活のことを、医師に話していませんでした。
子ども期のトラウマを頻繁に思い出すことを異常だと認識して、それを医師に話していれば、もっと早く複雑性PTSDの存在に気づけていたと思います。
こういったことが、精神疾患の診察や治療を難しくしている一面なのだろうと思います。

ようやく、自分が何に苦しんでいるのかが分かり、そのための治療をはじめることができるようになりました。

仕事ができなくなったことと複雑性PTSDとの関連

どうして、複雑性PTSDの発症によって、仕事中に思考停止状態になって働けなくなったのか。
私が勤務していた会社は、同族経営の中小企業でした。
そこでは、社長とその親族の意見や発言は絶対でした。
毎日のように、社長が社員に対して怒鳴り、暴言を吐いており、私に対しても例外ではありませんでした。
この出来事は、母に怒鳴られて叱責され、その後で平手打ちをされ、手足を縛られて押し入れに閉じ込められた記憶、あるいは、夜に手足を縛られた状態で玄関から放り出され、閉め出された記憶…このような、当時の恐怖心を想起するものでした。

いつしか私は、恐怖や理不尽さを感じないように、会社では解離状態になっていたのです。
解離とは、耐え難い苦痛から身を守るために、意識や感覚、思考、行動、記憶などをバラバラにして、自分から切り離してしまうことをいいます。
毎日、こんな状態で仕事していたのですから、仕事内容が分からなくなったり、思考停止状態になったりしたのは、当然の成り行きだったのだと思います。
今でも、当時の仕事内容や同僚の名前など、ある時期以降の記憶が抜け落ちていて、思い出せすことができません。

おわりに

複雑性PTSDの治療には、画期的なものもいくつか考案されているようですが、私は一般外来と、カウンセリングを続けてきました。

カウンセリングでは、生い立ちと会社での出来事を詳しく話した上で、それらの関連性を整理しました。それも一区切りして、今はカウンセリングには通っていません。
現在は、数種類を服用して症状(フラッシュバック)を抑えつつ、規則正しい生活を送るためのリハビリに励んでいます。

まだ回復の途上ではありますが、生きることに肯定的になり、以前よりもずっと楽になったことを実感しています。
引き続き、回復に向けてマイペースでやっていこうと考えています。


このシリーズは、これで終わりです。
私の個人的な内容なのにもかかわらず、最後までご覧いただきまして、本当にありがとうございました。

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