次の段階へ行くとき~瀬尾まいこ『君が夏を走らせる』
私の中で再読決定の瀬尾作品『あと少し、もう少し』
この中の登場人物「大田」の、その後の話だとはつゆ知らず手にとった本書。
金髪、ピアス、「走る」。
ん?と思ったら、やはりあの「大田」だった。
「一生懸命」な時代は、財産だ。
しかし人は、そこから離れて次の段階へ行く。「あと少し、もう少し」と思えるところで。
瀬尾さんは、「そんな思いを持てるのは、きっと幸せなことだ。」と、主人公に語らせている。
そう、この段階こそ、次の流れに飛び移っていくベスト・タイミングなのかもしれない。
打ち込んできたものから離れていく。
大事にしていたものを手放していく。
そういう時、寂しさとも悲しみとも違う、大切な何かが、自分の真ん中からすっぽりと抜け落ちるような感覚を覚えるだろう。
けれど、これは惜しいことではない。
これから先へとつながる道の途中でしかない。
もう振り返らないんだ。
次の扉に手をかけるんだ。
そして超えていくんだ。
そんな眩しい光を見させてもらえる作品だった。
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