医療機器メーカーにとってのブランディングとは　- 基本的な考え方 -

はじめに

医療機器メーカーのブランディングを理解するにあたり、基本的な考え方をまとめます。
2024/9/22作成

1. 医療機器メーカーにとってのブランドとは

一般的に企業ブランドとは、自社の商品やサービスを他社のものと区別するための、企業名・製品名・ロゴ・デザイン・言葉などの目に見える部分（有形価値）と、その企業から想起されるイメージや価値観などの目に見えない部分（無形価値）との組み合わせで構成されています。

業態によって、BtoC（企業から一般消費者へ商品やサービスを提供する）、BtoB（企業が企業に対して商品やサービスを提供する）、BtoB & BtoC向けのブランディングがあります。

医療機器業界においては、血圧計のように一般消費者向けの製品はBtoC、MRIのように病院向けの製品はBtoBに該当します。

ブランドには階層があり、上位にコーポレートブランド（企業・組織）が、その下にプロダクトブランド（製品・サービス）があります。

2. 医療機器メーカーのブランディング

医療機器メーカーでは、社会における企業の存在意義（パーパス・企業が社会に貢献するための方向性）を実現するために、お客様・株主・社員などの全てのステークホルダーに対して、あらゆる企業活動において一貫した姿勢を示すことで、ブランド価値を向上しています。

医療は人の命に直結するものであり、どのような医療機器でも最終的には患者様のヘルスケアの維持・向上に資するものなので、患者第一のブランディングが行われています。

3. 「ブランドエクイティ」と「ブランド価値」の違い

「ブランドエクイティ」と「ブランド価値」は似ていますが、同じではありません。それぞれの違いについて、現代ブランディングの父と称されるDavid Aaker氏の説明を引用します。

Brand Equity vs. Brand Value: What’s the Difference?Brand Equity vs. Brand Value: What’s the Difference?

ブランドエクイティは、顧客の目から見たブランドの重要性を指し、
ブランド価値は、ブランドが持つ経済的重要性を指します。
ブランドエクイティとブランド価値はどちらも、ブランドの価値を科学的に推定したものです。

ブランドエクイティとは？

ブランドエクイティとは、ブランド認知度、ブランド連想、顧客ロイヤルティといった形で表される資産または負債の集合であり、ブランドによって推進される現在のまたは潜在的な製品のサービスの価値を増減させます。
これは、マーケティングだけでなくビジネス戦略の管理においても重要な構成要素です。

ブランド価値とは？

ブランド価値は、ブランドの金銭的価値です。
ブランド価値を決定するには、企業はそのブランドが市場でどれだけの価値があるかを見積もる必要があります。言い換えれば、そのブランドを購入する人がいくら支払うかということです。

ポジティブなブランド価値が必ずしもポジティブなブランドエクイティにつながるわけではないことに注意することが重要です。

4. ブランドエクイティの業界による違い

ブランドエクイティが小さい業界

ブランドエクイティが小さい業界すなわち、企業価値におけるブランド資産の影響が小さい業界は、「公共事業・重工業」です。
事業価値がほとんどを占め、業界内で同様の価値を持つ選択肢が少ないからです。

ブランドエクイティが中程度の業界

ブランド・エクイティが中程度の業界は、「医薬品関連・自動車」です。

医薬品関連業界では、新薬や医療機器開発に大きく力を入れているため開発部門の価値とブランド・エクイティは同程度となります。業界内で同様の価値を持つ選択肢も増えてきます。

自動車産業では、走ることは共通ですが、自分に似合うかや自分の好みに合っているかなどのブランドの力が効いてきます。

ブランドエクイティが大きい業界

ブランド・エクイティが大きい業界、すなわちブランド力が経営に大きく影響を与える業界は、「飲料・アパレル」です。飲料業界では、お茶やビールなどの同じカテゴリー内で味の違いを出すのは難しいです。

ラグジュアリー業界は、一番ブランド・エクイティが大きいです。高価格帯のアイテム・サービスを展開する歴史ある高級ブランド（ファッション、レストランなど）は、商品の昨日よりもブランド価値が企業価値の大半を占めています。

5. ブランド価値の評価方法

業界標準として使用されているブランド価値評価方法はありませんが、以下の3つの評価方法が知られています。

1. コストアプローチ：ブランドを作り上げるために要したコストで評価

2. マーケットアプローチ：類似のブランドがM&Aで売買された価値で評価

3. インカムアプローチ：ブランドが生み出す将来のキャッシュフローの割引価格で評価

英国のブランディング会社であるインターブランド社は、ブランド価値評価方法として「ブランドの金銭的価値評価を行うための手法および手順」を制定しISO10668の認定を受けていますが、3のインカムアプローチを推奨しています。