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『ロスト・イン・トランスレーション』寂しくても、これは幸せ

 東京を舞台に、倦怠期のハリウッド・スターと、孤独な若いアメリカ人妻の淡い出会いと別れを描く。
 20年以上前の東京。ネオン街のがらくたのキラキラ。スカーレット・ヨハンソンのあどけない笑顔。ビル・マーレイの気怠さ。ケヴィン・シールズのギターの歪み。全てが重なって完成する映画。であるので、2人が揃わないシーンは、観ててよく笑ったコメディだが、ずっと寂しかった。寂しさはネガティヴな思考に連なるが、それを回避しながら観ていた。2人の非日常は私を特別なウォームな気持ちにした。観終えると、この映画が愛おしい。
 ソフィア・コッポラはこの2作目にして、もう自分の文法を見つけており、今日まで特別な存在であり続けている。
 今の東京にない、未来時制だった東京。ソフィアにしか映せない東京だった。佳作。

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