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博士の日常

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海外でポスドクをしよう—滞在編(10) 海外ポスドクの後の道

明けましておめでとうございます。今年がみなさまにとって素晴らしい一年になりますようにお祈り申し上げます。 新年は新たなスタートを切るタイミングですが、何かを始めることは何かが締めくくられることも意味しています。海外ポスドクシリーズも今回を持ってひと段落となります。長いようで短い間、大変お世話になりました。心より御礼を申し上げます。 さて最終回では、海外ポスドク期間が終わりを迎える時、次に歩む道について話します。 ポスドク期間は平均して3年くらい。始める時には果てしなく長

研究者の体のメンテナンス

2023年になりました。皆様は楽しい年末休暇をお過ごしになりましたでしょうか?  筆者に関しては、大晦日でも共同研究者からのメールが飛んできたりして、自分の気持ちがなかなか休まらないと同時に、日本の(そして世界の)研究者のみなさんは十分にリラックスできたのか、という疑問を持ちました。 過去のイメージでは、大学教員は週の数回だけふらっと教室に現れて授業をして、その後は優雅に本を読んだり研究を行ったりする、時間的にのんびりとした生活スタイルを送っているように思われていました。しか

研究者の年末年始

時が過ぎるのは速いものです。あっという間に師走に入りました。年末年始のシーズンは、みな忙しく過ごしていますが、研究者、特に大学教員にとっては、公私ともにイベントが盛りだくさんです。たとえば卒業論文や修士論文の指導、クリスマス、冬休み、小規模の学会やシンポジウムなど、いろいろなイベントがあります。 卒論・修論の指導:走れ、大学教「師」ほとんどの大学では卒業論文の提出期限が12月半ばから1月末の間に設定されています。そして修士論文は卒業論文の提出の少しあとに期限を迎えることが多

研究者のショッピングカートには何が入っている?

あっというまに11月になり、街中でもインターネット上でもクリスマスとお正月に向けた年末商戦が動き出します。研究者にとっても、これは買い物リストを消化するチャンスになります。今回はブラック・フライデー・セールを例に、研究者が年末商戦でどんな買い物をするかについて、ご紹介します。 ブラック・フライデーとはブラック・フライデーはアメリカから舶来したセール日ですが、アメリカ内でも実はまだ歴史が長くなく、2005年頃にフィラデルフィアから流行し始めた概念です。現地では感謝祭(Than

研究者にも衣裳? 研究者の服事情

10月が近づいてくると、街中はハロウィン一色になり、さまざまな仮装コスチューム・道具が店頭を賑わせます。アニメや映画の〇〇博士の役など、研究者も時には仮装の対象になりますが、そのコスチュームは決まって長めの白衣、それも前のボタンが開いているものですよね。 実際のところ、研究者は日常や学会などのシーンで、どんな装いをするのでしょうか?今日は研究者の日常を少し覗いてみましょう。 白衣は特定の場面にしか出番がない研究者のイメージと深く結び付けられている白衣ですが、実際のところでは

コロナ禍の海外学会:事前準備・実体験・注意事項

コロナ禍も3年目の折り返し地点を過ぎました。マスクの着用、人々の移動や集まりなど、諸方面においての規制も緩和の兆しが見え、昨年まではほとんどオンライン開催だった学会も、少しずつ対面開催もしくはハイブリッド式に切り替わりました。 特に欧米ではマスクの規制や入国の制限がなくなることによって、世界中の参加者を迎え入れる国際学会も開催されるようになってきました。筆者もつい先日にデンマークで開催された小規模の学会に参加してきました。 久々の対面学会にはとても興奮させられましたが、コロ

研究者の食生活について

8月31日は食料品流通改善協会や全国青果物商業協同組合連合会など、9団体が1983年に制定した「野菜の日」です。この日を機に、日頃の食生活における野菜摂取量を見直したり、人間と野菜、そして食品全般との関係性を考え直したりするのは、良い過ごし方かもしれません。 大学院生や研究者の食生活はどういう状況になっているのでしょうか?大学院や研究生活の経験がない方にとってはなかなか想像しにくいかもしれません。人生のステージやご家庭事情はそれぞれ異なるので、研究者の食生活も多様なスタイルが

あのときの一言(10)「大事なことは自分の周りにしかない」

挨拶こんにちは、みっつです。工学部化学系の研究室で博士課程を修了したのちに、現在は国内のメーカーで働いています。 この連載では、これまで大学院生活や社会人として過ごす中で出会った、印象的だった言葉について振り返っています。言葉をかけてくださった方や自分の当時の状況、その時の気持ちなどを振り返りながら、その言葉が自分にとって重要だった理由や、今の自分にどう影響しているのかについて改めて考えてみています。 どのエピソードも他人からすると些細なものかもしれませんが、自分にとって

研究者とお酒

暑い日が続いておりますが、こんな季節はビールが美味しいですよね。コロナ禍に伴う飲食面の制限が解除されてきたこともあり、久しぶりにビールを片手に研究談義する研究者の姿を各所で見えてくるかも知れません。 酒飲み研究者の印象みなさんは研究者とお酒の関係について、どのようなイメージを持っていますか? 筆者の周辺にいる非研究者から聞こえる研究者と酒の印象は、割と両極化していて面白いです。書籍や分析機械に埋もれてひたすら研究に励み、全くお酒を飲まないお堅い研究者をイメージする方もいれば

海外でポスドクをしようー滞在編(6)

病気・ケガ・アクシデントに備えて日本列島が途轍もない暑さに包まれる中ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?どの土地で生活していようと、病気やケガなどのリスクは常に存在しています。特に慣れ親しんでいない土地での病気やケガは心細いものです。しかし、ポスドクをやっている方は若くて健康な方が多いため、実際に病気に罹ってしまうまでには、そうしたリスクに備えることを軽視してしまいがちです。 本編では筆者や周辺から聞いた話をベースに、病気やケガ、アクシデントなどに事前にできる準備などをま

海外でポスドクをしよう―滞在編(5)

人間関係や文化 どこでポスドクをするにしても、周囲とのやり取りは避けては通れません。人間関係や社会生活は文化差を感じやすいところですから、初めて海外で生活する方は戸惑うことも多いかもしれません。国・組織・相手の性格などによって、さまざまな関係性があり得ますが、本編では筆者のオーストラリアにおける経験をもとに少し考察しました。参考になりましたら幸いです。 呼び方とフラットな関係性 日本の大学でも研究室によって関係性のあり方はさまざまですが、オーストラリアの大学で見た限りでは、

学会発表:どこで発表するか、どのスタイルで発表するか?

 新年度開始のバタバタに追われ、気がつけばもうゴールデンウィークに突入してしまいました。日本のアカデミアにとっては、5月から秋末までの間が学会シーズンのピークになるのではないかと思います。  学会発表のイロハや準備の要点については、下記のコラムも参考にしてください。 学会とはどんなところ?学会発表の準備や学会の雰囲気について解説 https://acaric.jp/articles/column/2885  本篇は学会の選択と発表スタイルに関する経験をまとめていきます。特

ポスドクの保活事情…のその後 「小1の壁」

 小1の壁、という言葉があります。子どもの小学校入学を機に、親の仕事と育児の両立生活に困難をもたらす様々な課題が壁のように立ち上がってくるということを示しています。  子が成長し、またいわゆる「保活」が必要だった保育園と異なり、公立小学校には必ず入学できるわけですから多少楽になりそうなものですが、別の事情があるのです。  保育園や幼稚園での預かり保育が親の就労を前提としているのに対し、小学校はあくまで児童を中心とした教育施設です。    たとえば、学校の時間割は家庭の事情に

新年度始動:スタートアップもろもろ

新しい年度がはじまりましたね!今年から新たに研究者としてスタートした方、そして新しい職場に移動された方々にとっては、新しい環境への適応が重要なタスクになると思います。以下に新しい研究生活をスタートする際に確認すべき事項を羅列しましたので、皆様の参考になることを願っています。 事務関連の確認 職場の変動などがあると、真っ先に直面するのが事務手続きの山ですよね。煩雑な手続きに取り掛かるのは体力も精神力も大変かもしれませんが、人事や財務などの手続きは仕事を始める前に満たすべき必要