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学会発表:どこで発表するか、どのスタイルで発表するか?

 新年度開始のバタバタに追われ、気がつけばもうゴールデンウィークに突入してしまいました。日本のアカデミアにとっては、5月から秋末までの間が学会シーズンのピークになるのではないかと思います。

 学会発表のイロハや準備の要点については、下記のコラムも参考にしてください。
学会とはどんなところ?学会発表の準備や学会の雰囲気について解説
https://acaric.jp/articles/column/2885

 本篇は学会の選択と発表スタイルに関する経験をまとめていきます。特に大学院生やポスドクなどの若手研究者の皆様のお役に立てることができると嬉しいです。

数ある学会の中から自分に合うものを選ぶ

 自分の研究成果をどの学会で発表すれば良いかに関して悩む若手研究者も少なくないでしょう。自分のテーマに合う分野を扱う学会であることが大前提になりますが、そのなかにも、大きな学会から小さな学会まで、分野・テーマに特化した学会から学際的な学会まで、選択肢が多すぎるくらいあります。学会参加は時間的・金銭的コストも発生するため、ある程度の取捨選択も必要でしょう。
 迷ってしまったときは、自分は誰にこの研究を知ってほしいか、どこまでディープな議論を期待するかなど、自分が発表を通して達成したい目標を考えながら選んでいくと良いかもしれません。

学会規模によって何が違う?

 数十人程度から数千人レベルまで、学会の規模はさまざまです。

大きい学会
 一般的には規模が大きいほど扱うテーマが多様になりますので、そこで発表すると自分の研究がより多くの研究者の目に留まる可能性があります。若手が広く「顔を売る」には最適かもしれません。
その一方、大きな学会では発表数が多いため、並行セッションが多数存在したり、限られた時間にたくさんの研究を回りたくなったりして、参加者の注意が分散されてしまうことがしばしば問題視されています。また、オーディエンスが持っている予備知識のレベルのバラツキが大きいため、発表内容の構成は基礎的な知識に偏りやすく、ディープな議論まで達しにくいです。

小さい学会:
 逆に、小規模な学会の方は特定の分野・トピックに集中した構成が多いため、並行セッションの数や発表数が比較的少ないです。オーディエンスの範囲が限定されている代わり、プロの集まりになりますので、ディープな議論を行ったり、特定のテーマに特化した情報交換をするのには最適です。決まった顔ぶれが参加することが多いため、安定したアカデミック・ネットワークを作ることにも向いています。

専門性の高い学会と学際的な学会

 伝統的な学会は、分野によって分けられる(例えば日本社会学会、日本応用数理学会)ことが多いですが、同じテーマに対する複数の分野からのアプローチを扱う学会(例えば日本認知科学会)もあります。昨今では学際的研究に対する注目が高まっているため、後者のような学際的な学会も規模を拡大しつつあります。
 専門性の高い学会では、該当分野の歴史的流れも含めた知識の共有があり、専門的な理論・方法論に関する議論が展開されやすいです
 一方、学際的な学会では広い視野からの問題の捉え方を知ったり、研究成果を展開する方向を広げたりすることができます

初心者の学会選び

 筆者の私見ですが、院生や若手の方にとっては、該当分野の知識と方法についての基礎を固めることや、アカデミックネットワークを形成することの優先度が高いように思います。
 比較的に小規模な、専門性の高い学会の中で最も自分のテーマと関心に合致するものを「ホーム学会」とし、その上で中規模の学会にも定期的に顔を出せると尚良いです。さらに、研究成果に応じて、そして求職時期などのキャリアステージに応じて大規模な学会に出向くと、多くの研究者に自分の研究をアピールすることにもつながります。
 学際的な会合を選ぶかどうかは個々人のテーマによって変わってきます。ただし、駆け出しの段階では自分の基礎知識と専門性を高め、「○○研究者」として自信をつけることが重要であることを考慮すると、専門性の高い学会が向いている人のほうが多いかもしません。

学会発表申込にあたって

 自分が発表したい学会が決まれば、いざ申込です。そのためには申込の時期・条件の確認を忘れずにやっておきましょう。
 学会自体の開催時期、申込締め切り、参加費支払い締め切り、原稿提出締め切りなどのスケジュールはもちろん確認が必要です
ほかに重要なことは、発表するために発表者や連名発表者が会員である必要があるか、あるとすればどのタイミングまでに学会入会と年会費の支払いを済ませる必要があるかについて、早い段階で確認しておきましょう。例えば筆者がよくいく学会の一つでは、9月に開催される学会で発表するためには4月中に入会・年会費支払いをする必要がありますが、うっかりしていると年会費を払い忘れて参加できなくなります(筆者は何度かやらかしました)。

発表スタイルを選ぶ

次に発表スタイルを選ぶ必要がありますが、まずはどんなスタイルがあるかをご紹介します。

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