ロン・アドナー『エコシステム・ディスラプション』
マネージャーからの推薦図書で読んでみたのですが、23年Top3に入るスーパー名著でした。
本書の副題"Winning the Right Game"にもある通り、この本は昨今の世の中で企業が生き抜くために必要な正しいゲームの捉え方についての本です。
訳者によるこの画像のまとめ方は正直あまり魅力的ではないですが、本書を読んで振り返ると納得できる内容なはずです。
吉村の言葉であえて雑にまとめると「業種や業界の括り方を変えてみる」そして、「自社だけではなし得ない新たな括り方を他社と共にエコシステムを形成して実現する」ことが現代のゲームでは重要になってくるという話です。
著者はさまざまな事例を通じて価値構造とエコシステム構築の重要さを説きます。
どちらの言葉も少し分かりづらいので、本書内で紹介されていた具体例を1つだけ。
家具のECサイトWayfairです。
Wayfairのビジネスモデルは至ってシンプルで、日本で言うと楽天市場のモデル、ECの言葉で言うとモール型のドロップシッピングモデルでした。
本書によればWayfairは2度に渡って価値構造を変化させています。
最初の価値構造は「顧客がインターネットで家具を買える」という価値提案をする最低限の要素です。
この価値構造で成長を描いたWayfaifは、規模が拡大するにつれて注文保留率が上がり、サプライヤーが抱える倉庫や運送、在庫管理が非効率であるという問題に直面します。
これらの問題を解消するために、Wayfairはサプライヤーに対して在庫管理ツールを提供し、サプライヤーからの運送を効率化できるよう、全米にキャッスルゲートと呼ばれる倉庫ネットワークを立ち上げました。
また、これまでバラバラだったサイトの見た目をWayfairブランドに統一してクロスセルの機会を創出したのです。
その結果、価値構造はこのように変化しました。
顧客在庫管理の効率化、配送オペレーションの効率化、「顧客が商品を発見しやすくなる」ことによるクロスセル率の向上によって、Wayfairは大きく収益を伸ばすことに成功します。
しかし、そこに待っていたかのように巨人が参入してきたのです。
そう、Amazonです。2017年Wayfairの成功を嗅ぎつけたAmazonは家具販売プログラムを発表します。言わずもがな、Wayfairにとっては大ピンチです。
そこでWayfairは2度目の価値構造変化に着手します。
Wayfairは家具特化の特性を活かし、顧客への提供価値を「ECで家具を買うこと」から「自分好みの家にする」ことへと変化させたのです。
Wayfairは当時、サプライヤーが抱えていた「カタログ写真撮影の手間」を解消すべく画像テクノロジーに大きな投資をします。これによりサプライヤーは白い背景で撮影した写真を3Dスクリーンに取り込むことで、どんなシーンにもその家具を置いた画像が生成出来るようになったのです。
さらにユーザーの自宅写真からそれに合った商品を提案する機能も作られ、ユーザーの自分好みの家づくりへの体験を大きく向上させることが出来ました。
この2段階の価値構造の変化は、サプライヤーの利便性を改善することによって実現してきたものです。Wayfairはエコシステムの強化を通じて価値構造を変化させ、顧客への提案価値を向上させていたのです。
(書いてて伝わる自信が無くなってきました)
本書では他にも
・フィルムカメラのKodakの失敗要因(DX化は上手くいったのに間違った価値構造に投資をしてしまった)
・SpotifyがAppleMusicを跳ね除けたエコシステムの強さ
・Amazon Echoがスマートスピーカー領域を取ったエコシステム戦略
などが紹介されています。
あまり上手に本の紹介が出来なかった気がしますが、輪読会でもやろうかって話をしているくらい良い本なのでぜひ読んでください笑!
Appendix的にですが、国内SaaSでぶっちぎりでアライアンスを上手に勧めてそうなのがクラウドカメラのSafieさんだと思っているのですが、資本提携以外になぜこんなにも上手くやってるのだろうか?と疑問に思っています。何かしらエコシステムが描けているからなのか分からないのですが、お知り合いの方とかいらっしゃったら是非ご紹介ください。成功の秘訣を聞いてみたいと思っています。
※本noteに含まれる商品紹介はアソシエイトリンクの可能性があります