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【読めば痩せるダイエット】第1章 痩せる薬 編

ダイエットの後のような簡潔な前書き

断食して、一日一〇キロ走ってりゃ、そりゃ馬鹿でもカバでも痩せるでしょ。
でも、そんな辛いダイエット、炭水化物がどのくらい、タンパク質がどのくらいと計算しまくりの面倒臭いダイエットは、もう勘弁。
この出版史上初「何もしなくても、痩せる方法」を網羅した「読むだけで痩せるダイエット」をぜひ買って読んでみてください。楽ですよ、何もしなくてもいいんですから! 
ただし、わたしは全てのダイエット法を試したわけではないし、あくまでも「こんな方法があるみたい」と紹介しているだけなので、全ては自己責任でお願いしますね。



01.「セマグルチド」GLP-1受容体作動薬

〜商品名:リベルサス(錠剤)、オゼンピック(注射剤)〜

 今本邦の、ダイエットフリークの女性の間で、「飲むだけでラクに痩せられる薬なんて夢物語でしょ?」「でもあるらしいわよ」「で、その革新的な痩せる薬を厚生省が認可するって噂は本当なの?」って、話題沸騰です。
 糖尿病治療の世界では、ここ最近、毎年のように画期的な新薬が登場しているのはご存じですか? ものすごくシンプルに言うと、糖尿病の薬=痩せる、と考えて間違いないんです。だから、海外では、糖尿病の治療薬開発の過去の経験を活かして、巨大製薬会社は、肥満治療を目的に開発された斬新な新薬がどんどんと発売し、大変な人気を集めていることはご存知ですよね? 
 知らないですって? そりゃ驚いた。太っているわけだわ。
 でも、残念なことに、日本では肥満治療のこの新薬、保険での診療は「糖尿病患者」に限定されています。ただし、日本でも「自由診療」(全額自己負担になります)で処方してもらうことは可能です。
 そのため、安全に楽して痩せたいと切に願う美容目的の人たちが、「わたし糖尿病です」とか言って医療機関に押し寄せたり、インターネットで薬を購入しまくったため(今でもできます。合法)、二〇二三年には、しばらくの間、この革新的な新薬を本物の糖尿病患者さんたちが利用できないという状態になり、社会問題にまで発展してしまいました。
 この問題について、専門医に質問したところ、すぐに答えをいただきました。
 「セマグルチド(商品名:リベルサス(錠剤)、オゼンピック(注射剤))は、GLP−1受容体作動薬です。もともとアメリカで糖尿病の症状緩和薬として試験、開発、承認、発売されたものです。二〇二三年二月に糖尿病患者向けの処方箋薬として日本でも発売され、症状の緩和に目覚ましい効果を発揮することに加え、顕著な減量効果もあることが口コミで広がりました。
 そのため、ご存じのように糖尿病ではないのに糖尿病と偽り、オンライン診療を悪用して「リベルサス」を購入する人が急増したのです。糖尿病で来院されたご主人が、処方された「リベルサス」を美容目的で奥様に渡していたというケースもありましたね」
 GLP−1受容体作動薬ってなに? とか興味がある人は自分でネットで調べてください。この本では、難解なことはあえて説明しません。目的は痩せることにあって、薬理学のお勉強本じゃないんですから。あと、わたしもよくわからないしね。
 なにしろ三か月で一〇キロ痩せたという人もいるくらいですから、これは正直驚くべき数字です。人によっては吐き気や便秘が出る場合があるみたいだけど、それほど深刻なものではないそうです。三か月で一〇キロは魅力的ですね。わたしも試してみたいです。
 その医師は続けて極秘情報を教えてくださいました。
 「一時期はクスリが不足して、本来使うべき糖尿病患者の人たちが困ってしまいました。それで、二〇二四年二月から、国が承認した保険適用の肥満治療薬として、GLP−1と同じ受動体作動薬の「ウゴービ」(注射剤、成分は同じ)が処方されることになったのです。アメリカの「サイエンス」誌が二〇二三年の革新技術に選んだ薬です!」
 そうなんですね! ウゴウゴルーピー! いいこと聞きました!!
 ウゴービは週に一回、使い捨て注射器で自分でお腹に刺します。インスリンの分泌促進、食欲の抑制、胃の動きの鈍化により、「痩せること」にターゲットにしぼったこの薬が、日本国内で人気を集めることは間違いありません。単なる肥満ではなく、高血圧、脂質異常症、あるいは二型糖尿病があるなど、処方には一定の基準が定められていますが、まあ何とかなるでしょう。
欧米では、大手製薬会社を中心とした熾烈な競争の中、今も新たな「痩せるクスリ」の研究開発が続けられています。
 やがて、さらに効果的なクスリが登場することは間違いないでしょう。いい時代になったと思いません?

02.MDMA─エクスタシー

〜メチレンジオキシメタンフェタミン〜

 MDMAは一九一二年にドイツの製薬会社、メルク社によって開発され、一九八〇年代にレイブ・カルチャーが台頭するきっかけとなった「危ない薬」です。
やったことがある? あなた、悪い子ですね。やった人でも知らない情報を一つ。この薬、元々は食欲抑制剤として開発されたものなんですよね。元祖食欲抑制剤と言っていいでしょうね。
 一九六〇年代にMDMAの継父ともいえる著名な薬理学者、アレクサンダー・シュルギン博士によって再合成されたのですが、すぐに世界中で違法になってしまいました。
 それは、 なぜ?
 MDMAは、メタアンフェタミンにやや似た、ラブラブムードで強烈な快感をもたらすため、乱用され、死者が多数出たからです。したがって、製薬会社は、今後、食欲抑制剤を開発する際に、薬自体に副作用の大きな危険性がないことに加えて、以下の二点に注意を払う必要があります。
1・快楽を与えないこと。
2・覚醒剤の原料として使用されないこと。
 ところで、MDMAに含まれるアンフェプラモンという物質は、ジエチルプロピオンとしても知られ、フェネチルアミン、メタアンフェタミン(覚醒剤)、カチノン系に分類される精神刺激剤でして、食欲抑制剤としても使用されているんですね。肥満の短期治療にも使われており、食欲低下薬として、体重を減少させるのには優れた効果をもたらします。
 しかし、アンフェプラモンはアメリカではスケジュールⅣの規制物質に分類されています。一方、イギリスではクラスC薬物扱いで、医薬品としては安全な保管が必要なスケジュール3規制薬物に指定されています。つまり、アンフェプラモン自体が麻薬扱いなんですね。
 二〇二二年六月、欧州医薬品庁(EMA)の安全委員会はアンフェプラモンの販売承認の撤回を勧告しました。肺動脈性肺高血圧症(肺の高血圧症)や依存症などといった重篤な副作用があるからです。精神疾患の既往歴がある人は、再発のリスクが高まる危険性もあるそうです。加えて、妊娠中に使用すれば、生まれてくる子どもに障害をもたらす可能性もあります。もう入手は不可能と思っておいた方がいいですね。
 しかし、法律の抜け穴があるのです。
 それは「ブプロピオン」と言うお薬です。アンフェプラモンと極めて似た構造を持ち、アメリカでは「ウェルブトリン」という商品名で知られる抗うつ剤で、ジェネリック医薬品も多数発売されています。
 ブプロピオンは禁煙補助薬としても有効であることも判明して、「ザイバン」という商品名で販売され、ナルトレキソンと併用する体重減量薬も開発されました。ブプロピオンに対する規制は緩く、少なくとも日本ではオンラインで個人輸入が可能です。
 日本では今のところ合法なので、わたし、試してみました。一日一錠服用しましたが、二週間もしないうちにまったく食欲がなくなくってしまいました。何も食べなくてすむほど食欲が完全消失し、一か月で一〇キロも体重が減りました。その時点で、あまりの効果に怖くなって、わたしは飲むのをやめてしまいました。痩せたいけれど、骸骨になりたいわけじゃないので。
 長期の使用はおすすめできませんが、ダイエットを成功させようと思うなら、まずは食欲を減らさないと、あなたは地獄に落ちることになります。それはよくご存知でしょ? 
 まず、この薬を短期間使用して食欲を抑えるのが、ダイエット利用には賢明な方法だと思います。

03.ツイミーグ

〜経口血糖降下薬〜

 ツイミーグは体内のミトコンドリアを刺激して脂肪や糖分を効果的に燃焼させる、今注目を集めているお薬です。アメリカではミトコンドリアを刺激する減量薬で、患者が一五キロの減量に成功したという報告もあるくらいです。
 ミトコンドリアは体に溜まった脂肪や糖分を強力に燃焼する味方であり、特定の薬でその働きを活性化させることがダイエット効果につながることが期待されています。
 その一つが、イメグリミン塩酸塩こと、商品名「ツイミーグ」です。ツイミーグは、ミトコンドリア機能を改善することにより、正常な脂肪と糖の燃焼を回復させます。
 さまざまなミトコンドリアの異常が人間に起こり得ますが、一般にミトコンドリアの機能は年齢とともに低下します。
 ツイミーグのメカニズムは、ミトコンドリアに作用して、インスリンの分泌を改善します。医師の指導のもとで適切に使用すれば、数か月で体重を一五キロ減らすことが可能です。
 さらに、ミトコンドリアの機能を向上させることで、長寿遺伝子を活性化させるなど、さまざまな効果が期待されています。

04.メトホルミン

〜経口糖尿病治療薬〜

 メトホルミンは、もともと一九五〇年頃から糖尿病の治療薬として使用されてきた、七〇年以上の実績のある薬です。しかし、近年、それ以外にも多くの優れた効果があることが判明し、糖尿病でない医者がこっそり飲んでいる「魔法のクスリ」として注目されています。
 ご存知でした? 知らなかった? 
 こういう情報が山のように開示してある「危ないイチゴ」の本に期待していてくださいね。
 まず、メトホルミンには若返りの効果があり、「飲めば飲むほど健康になる」と言われています。 メトホルミンを服用する糖尿病患者は、むしろ健康な人より長生きすると言われ、摂取者は平均寿命が約八年延びたというデータもあります。
 メトホルミンは、血管にダメージを与える活性酸素を防ぐ「アンチエイジング効果」が期待できるため、老化の抑制に非常に効果的な内服治療薬です。
 以下、メトホルミンの主な効果をあげてみます。 腸内環境の改善、体力の向上、集中力の向上、認知症の予防、睡眠の質の向上、しわ、たるみ、くすみを改善し肌のつやを向上、食欲の抑制、肥満の予防、生活習慣病や糖尿病の予防、循環器病の予防などなどです。
 すごいクスリなのは分かったけど、糖尿病患者じゃない私が飲んでも良いの? 
 はい、大丈夫です。実際、危険な副作用は報告されておらず、健康な人が長く摂取し続ければするほど、アンチエイジング効果が強くなることが研究によって証明されています。インターネットで簡単に購入できます。
 それに驚くほど安いんです、これがまた。 実はわたしも毎日欠かさず飲んでいます。
 さらに、最近では劇的な抗がん作用や認知症リスクの軽減効果があることまで研究機関から発表されました。
 人工知能の開発を進める非営利法人「オープンAI」のCEO、サム・アルトマン氏(三八歳)は、アンチエイジングの秘密を解き明かすことに強い興味を持っています。時価総額約三〇〇億ドルとされるChatGPTを運営するテクノロジー企業のCEOであるアルトマン氏はベジタリアンで、アンチエイジングのために定期的に運動し、メトホルミンを服用しているのだそうです。
 メトホルミンは、寿命を延ばすことを願う「バイオハッカーズ」が常用している安価で最優秀な長寿薬なのです。

05.サクセンダ

〜リラグルチド〜

 「サクセンダ」(リラグルチド)は、二型糖尿病治療用の長時間作用型GLP−1受容体作用薬です。またまた出てきましたね。GLP−1受容体作動薬。日本にもそのうち導入されるだろうという、「危ないイチゴ」ならではの先見性を持って紹介する次第ですよ。
 この薬は、血糖値が高い時にのみインスリン分泌作用を発揮し、臨床的に有意な血糖降下作用を有しています。
 日本での製品名は「ビクトーザ」で、米国での製品名が「サクセンダ」です。 ただし、インスリンの代替品として使用することはできません。
 サクセンダ は 米国食品医薬品局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)によって肥満治療薬として承認されています。肥満とされるBMI三〇キロ/平方メートル以上で、運動療法を受けている人が対象です。
 アメリカでは、一つ以上の過体重関連疾患を持つ肥満の治療にも承認されており、ご紹介した「オゼンピック」や「リベルサス」、「ウゴービ」などの肥満症治療薬より効果があるとも噂されています。

06.GDF-11

〜成長分化因子11〜

 二〇〇〇年代初頭、スタンフォード大学の若い科学者による少人数のグループが、カリフォルニア州パロアルトのキャンパスを「マウス・ステッチング」(ネズミ縫い付け)実験の世界的中心地に変えました。
 これは、何世紀も前に開発された「パラバイオーシス」(循環系共有)と呼ばれる実験を復活させたもので、その中には数十組の若いマウスと老いたマウスの血管を接続して、老若マウス間で血液が交流するようにすることも含まれています。一見、むごたらしく思える実験でしたが、年老いたマウスは実験前よりも強くて健康になったのです。
 このため、長寿を切望する我々現代人のあいだで、若者の血液が「治療薬」と見做される時代が到来することとなったわけ。昔、中国では、美少女のおしっこを飲むと若返るとか言われてましたけどね(笑)。
 若返りの過程で、わたしたちにどんなことが起こるのかを理解するにはまだ長い道のりが必要ですが、スタンフォード大学のパラバイオーシス研究から、人間にも同様の劇的な若返り効果を実現させることを目指す野心的な企業が誕生しました。
 その会社「エレビアン」は、若者の血液から抽出された製品を製造するメーカーであり、五五〇万ドルもの投資によって誕生しました。死というものを打ち砕こうとするシリコンバレーの大物、ピーター・ディアマンディス氏も、その投資家の一人です。ちなみに、彼とイーロン・マスクは億万長者の同志です。残念ながらわたしは彼らの仲間ではありません。
 老人の血液には、細胞の成長と修復を促進する化合物を多く含む若者の血液よりも、組織損傷の兆候が多く見られます。ま、そりゃそうでしょう。
 エレビアンは、若返り効果をもたらす物質として、若者の血漿タンパク質に含まれる成長分化因子「GDF−11」に着目しました。同社は当初、アルツハイマー病、冠状動脈性心疾患、加齢に伴う筋機能不全を治療するためにGDF−11ベースの薬を開発していました。
 しかし、同社の創業者らは、今後は肥満や骨粗鬆症を含むあらゆる加齢関連疾患をターゲットにできるだろうと宣言しています。
 「私たちはこのことに非常に興奮しています」と、ハーバード大学の神経科学者で、エレビアンの創業者の一人であるリー・ルービン氏は語ります。
 「私たちの研究は、すでに損傷を受けた組織の機能を改善できる際立ったものであり、この道は様々な病気の治療につながる可能性があります」
 この実験をすでに実行した人がいます。ニューヨーク・ポスト紙やインサイダー紙によると、「若返り」に執念を燃やすアメリカの億万長者ブライアン・ジョンソン氏(四六歳)は、父親に自分の血液を輸血したところ、「私の‘スーパー・ブラッド’のおかげで父の体が二五歳も若返った」と主張しています。
 ジョンソン氏は、一七歳の息子と七〇歳の父親、そして四六歳の自分との三世代にわたる「血液交換」実験を実行したのです。 実験のために、各人から一リットルの血液が採取されました。
 息子の血液から分離された血漿はジョンソン氏の体に輸血され、ジョンソン氏の血液から分離された血漿は父親に輸血されました。
 「私の血漿を投与されて以来、父の老化の度合いは約二五年も遅延し、半年経った今でもそのレベルは維持されています!」とジョンソン氏は驚きの報告をしています。美少女のおしっこを飲むと若返る、という話もあながち嘘ばかりともいえなくなってきました。

07.エフェドリン

 皆さんはアメリカのTVドラマ『ブレイキング・バッド』をご覧になったことがありますか? まだ見てない人が羨ましい。こんなに面白いテレビドラマは他にありませんよ!
 さて、番組に登場する天才化学者ハイゼンベルク先生は、風邪薬などに含まれるエフェドリンから「メス」、一般にメタンフェタミン、アンフェタミンとして知られる覚せい剤(非合法)を合成しました。ハイゼンベルグ先生の合成したメタアンフェタミン(非合法)は純度九九%以上で、独特の青色を持ち、「ブルーメス」の名で瞬く間にアメリカ全土の市場を席巻していきます。わたしも一度、そんなすごいドラッグを体験してみたいものです。いえ、何でもありません。
 ところで、一度は禁止されていたスポーツサプリメントへのエフェドリンの配合が再び認可されたことはご存知ですか? 
 これを飲んで運動すれば、あなたも確実に痩せることができます。脂肪燃焼効果がものすごくて、おまけに食欲も無くなりますから。
 エフェドリンというのは「麻黄」という植物に含まれるアルカロイドです。漢方では薬として用いられています。
 ただし、わたしはお勧めしません。わたしが実際に試してみたところ、何度も心臓の鼓動が異常に早くなりました。心臓発作の死者もいます。近づかないほうが安全です。
ただし、あなたが覚醒剤を合成したいのなら、ゲットしてみるのも面白いかもしれません。

08.ゾニサミド

 ある研究者グループが、薬効が体重に直接関係がないにもかかわらず、患者の体重増加や減少を引き起こす作用があることが判明している何千もの薬物を調査しました。
 さて、その中でも私が気になるのは「ゾニサミド」という薬です。減量に要した時間は特定されていませんが、被験者の平均体重が七・七キロも減少したと言います。
 これは圧倒的な数字です! 
 このクスリは抗てんかん薬ですが、その作用機序はまだよくわかっておりません(そのような薬は山ほどあります)。要は、このクスリを摂取すると異常に痩せてしまうということです。
 しかし、私はこの効能に気づくのが遅すぎました。すでに、ゾニサミドを抗肥満薬として販売する計画が順調に進んでいるようです。
 ゾニサミドは規制が緩く、(少なくとも日本では)オンラインで購入できます。早速、自分の体で試してみたいと思います。

09.糞便カプセルダイエット

 マサチューセッツ総合病院のアイリーン・ユー助教授は、「糞便カプセル・ダイエット」ともいうべき実験を敢行しました。スリムで健康なドナーから糞便を採取し、凍結乾燥させて一・二グラム入りのカプセルにし、二〇人の肥満患者に投与したのです。
 糞便カプセルに含まれる細菌が腸内細菌叢を変化させるため、この手法は腸感染症患者の治療に効果的であることが判明しています。ユー助教授は、糞便カプセルが肥満や代謝異常など、腸感染症以外の健康問題の治療にも応用できないかと考えたのです。
 かつて、片方はスリムで片方は肥満という双子から腸内細菌を採取して、それぞれ別の無菌マウスに移植した実験がありました。餌の量が変わらなかったのにも関わらず、肥満のドナーから腸内細菌を投与されたマウスは、体重が増え始めました。対照的に、スリムなドナー細菌を移植されたマウスはスリムなままでした。
 このことは、腸内細菌がマウスの体重の増減に関与していることを示唆しています。
 人間ではどうでしょう。ある女性が慢性的な腸感染症を治療するために糞便移植を受けました。便の提供者はその女性の娘で、太りすぎであることを除けば健康体でした。移植後、女性の腸感染症は完治しましたが、体質が娘と同じように痩せ型から肥満型に変化したのです。
 これらの実験結果が実用化されれば、近い将来、カプセルを飲むだけで痩せられる日がやって来るかもしれません。
ただし、カプセルの中身が誰かの排泄物であるという事実を、あなたが無視することができれば、の話ですが。

10.マイクロドース・ダイエット

 現在、アメリカのカリフォルニアはシリコンバレーでは、サイケデリック・ドラッグのマイクロドージング(微量摂取)が、急速に人気を集めています。米国の報道機関は、あのイーロン・マスク氏もLSDやケタミンを含むサイケデリック・ドラッグを常用していると報じています。
 このことは、アメリカのハイテク企業において薬物摂取が企業文化の一部となっていることの象徴だとされます。なぜ彼ら彼女らがマイクロドージングにはまるのかというと、摂取することでポジティブ、且つクリエイティブになることができるからです。LSD、またはシロシビンを含有するマジックマッシュルームが主に使用されています。
 マイクロドージングと言いますが、実際にどのくらいの量が摂取されているのでしょう。LSDの場合、耐性が付くことを防ぐため、従来のぶっ飛び基準量である二五〇マイクログラムよりはるかに少ない一〇マイクログラムを三日ごとに摂取します。
 『本当に良い一日/マイクロドーズで気分も結婚生活も人生も大きく変わった理由』の著者、アイレット・ウォルドマンはかつて双極性障害と診断され、あらゆる種類の精神科薬を試しましたが、一向に効果が上がりませんでした。ところが、彼女は三日ごとのLSDマイクロドージングに切り替え、双極性障害からの回復に成功しています。
 マジックマッシュルームの活性化合物であるシロシビンのマイクロドージング摂取量は通常乾燥キノコ五〇から二〇〇マイクログラムです。トリップするには二グラム以上が必要ですが。
 特にお腹が空いていなくても、気分転換のために食べ物を口に入れたりする人は多いでしょう。不幸やストレスを感じると、甘いものやでんぷん質の駄菓子を食べたいという衝動に駆られることがありますよね。肥満への第一歩です。
 しかし、気分がよりポジティブになると、景気づけに不健康な食べ物を口にすることも少なくなるはずです。
 研究者は、「総合的な知見から、シロシビンには適度な体重減少作用があることが示唆されており、この作用は人間にも適用される」とまとめています。
 サイケデリック・ドラッグがどのように効果を発揮するかについて、まだ多くのことが解明されていません。わたしたちが確信を持って言えることは、それらが驚くほど安全であるということです。
 最後に。LSD もマジックマッシュルームも、アメリカのごく一部の州、世界でごく一部の国を除き、所持および使用は重犯罪です。もちろん日本は最も厳しい国の一つです。だから、これまでの記述を実行すると、非合法ゆえ逮捕されます。決してやってはダメですよ。

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