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原点


・序文

今年も早一か月弱となってきている。

早いものだ。

もうじき12月か。

本当に一年て早いですよね。

あっという間すぎます。

そんなこんなですぐに2024年が訪れるんでしょうね。

そして季節は冬が訪れようとしている。

当たり前のことを書くが、冬は寒い。

寒いと人間はこれ以上体温を下げないようにするために基礎代謝を上げようとするらしい。

そうするとエネルギーを使う。

そのエネルギーを補填するために食欲が増す。

ってなわけで寒くなると食欲が増すのはそういう理由だそうだ。

っというわけで何食べよう。

そうだな…。

たまには揚げ物なんていかがかな?

何の揚げ物?

肉より魚やな~。

白身魚フライにするか。

白身たってぎょうさんありますやん。

まあ、そんなに細かい事を気にしなさんな…。

タルタルつけて食べたら美味しいでしょ。

まあねえ。

……。

今回食事のメインとして選んだ魚のフライ、まあ英語で言うならばフィッシュフライと言えば良いのかな。

イギリスではフィッシュ・フライ・チップスってのが有名な食べ物だったっけ。

記憶違いかもしれないが、昔アイリッシュ・パブみたいな所で食したような記憶がある。

黒のギネスのビールと共に…。

そして国は変わりアメリカでもフィッシュフライは食べられると聞く。(そりゃそうか)。

んで、何でもキャットフィッシュって名前の魚も食べられるそうな。

まあ要するにナマズなんですかね。

ナマズを素の生きている状態で見た事ありますか?

自分はありません。

顔に独特の髭があり、調べてみると日本では無病息災の縁起物とも言われているらしい。

キャットフィッシュと日本のナマズって見た目違うんですかね?

それは…見た事ないんで分かりません。

ところ変われば色々でございますね。

・キャットフィッシュ・ブルース

所変われば色々という事は、この「ナマズ」を主題にした歌もあるという事を御存知だろうか。

「キャットフィッシュ・ブルース」

だそうだ。

1941年にロバート・ペットウェイって人が録音したらしい。

いや、ナマズをブルースするというのはこれはまた凄いですね。

このブルースは南部ミシシッピ・デルタ・ブルースでありブルースの重要地域の一つでもある。

ちなみに調べてみると南部でもナマズをフライにし、パンに挟んで食べるなどするらしく、ナマズと言う魚を身近に感じていたからこそナマズを主題にし、ブルースした歌が存在したんでしょうね。(正確に言うと違うかも)

そしてナマズではないが、その南部でフィッシュフライでパーティーみたいな事をしていたというインタビューみたいなものもある。

本は以前noteでもその本の感想文を書いた「ブルースと話し込む」。

著者であるポール・オリヴァーが1960年にアメリカに渡り、ブルースにまつわる方々にインタビューした本書。

その中にフィッシュフライ・パーティーの記述も見受けられる。

フィッシュフライはやたらにあったな。なにせ魚がいやっていうほどあったから。ミシシッピやそのあたりの湖でとれる魚っていったら淡水魚のパーチだな。ほかにグリナ―とかも。

ブルースと話し込む ポール・オリヴァー著  64ページ ウェイド・オルトンインタビュー

フィッシュを揚げてパーティーをするという習慣があるというのが伺える。

オルトン氏のインタビューではキャットフィッシュの名は出ていないが…、

ちなみに本によるとオルトン氏はクラークスデイルにある理髪店の店主らしく、そこはブルース・シンガー達の昔からのコミニティになっているらしい。

理髪店とかもコミニティになるんですね!

氏は1925年生まれなので、インタビュー当時は35歳か。

件の歌は1941年に作られた歌だから、そこの生活に根差した習慣から生まれたのではなかろうかと思われる。

そしてオルトン氏よりも年が上の方のインタビューもある。

自分の最初の楽器っていったらハーブさ。そこら中で吹いたね。クラークスデイルあたりとか、土曜夜のフィッシュフライとかでもな。魚も売ったし、そのあと演奏ってわけだ。魚のフライは誰もが揚げたもんだ。そんで大騒ぎしまくって、一晩中やって演奏、日が上がるまで五十セントとサンドウィッチで満足さ。みんなほんとにロウダウンなあか抜けないブルースが好きだったな。

ブルースと話し込む ポール・オリヴァー著  64ページ マディ・ウォーターズインタビュー

そう、マッキンリー・モーガンフィールド、マディ・ウォーターズその人だ。

1913年生まれ(1915年説も)マディのインタビューには自分の最初の楽器とある。

っという事は年若い頃が想像される。

その頃には土曜の夜にはフィッシュフライを揚げて、演奏してパーティーをするという文化が伺える。

何の魚を揚げたかは書かれていないが、サンドウイッチの事も書かれているので、きっと揚げた魚を挟んで食べたりしたのではなかろうか。

そしてロウダウンな垢ぬけないブルースが好きだったとある。

それは初期のマディの作品のフィーリングがこういった所からきたのではないかとも読み取れる。

そしてこのインタビュー。

フィッシュ・フライがいかにポピュラーな料理で、演奏をする場としても重要な役割かが分かるものであり、キャットフィッシュも食されていたのではなかろうか。

そして「キャットフィッシュ・ブルース」…。

・マディとローリン・ストーン

マディはこの歌をもとに1950年にチェス・レコードから自身の代表曲を発表する事になる。

「ローリン・ストーン」だ。

マディの最初のヒット曲でもあり、ある意味この後のマディのイメージを決定づける重要な曲であるといっても良いかもしれない。

「ローリン・ストーン」の前に、1948年に「アイ・キャント・ビー・サティスファイド」が受けていたのがまず、マディが自らの原点を見直すきっかけになったと言われる。

1941年のマディがまだミシシッピにいた頃に、国会図書館用に録音してくれと頼まれた曲の中に「アイ・キャント・ビー・サティスファイド」の原型の曲が含まれていた。

なので、その曲はデルタ・ブルース調の曲と言うことになる。

それをエレキに持ち替え、ロウダウンな雰囲気のもと、ベースと自らのエレキの演奏だけでシカゴ黒人移住者の満足できないという気持ちも捉え、迎えられたのである。

そして迎えた1950年、自分達の故郷の曲でもある「キャットフィッシュ・ブルース」に新たな命を吹き込み「ローリン・ストーン」を完成させた。

この曲もシンプルな構成で弾き語り調で演奏している。(動画では違いますが…)

静かだが、ディープな腹の底からうごめくような演奏はまさしくマディの雰囲気ピッタリだ。

マディのインタビューにあったように少しあか抜けないロウ・ダウンなブルースといっても良いのか。

そんな不穏さを醸しながらマディの不遜にも聴こえ、抑揚をつけながら歌う姿は歌詞の世界感そのものなのではなかろうか。

ちなみに件のキャットフィッシュは一番最初のVERSEで出てくる。

俺がナマズだったら、深い海の底を泳いでいて、そしたらキレイな女性が俺を釣り上げてくれるさ…。

ってな感じで確か始まる。(違ってたらごめんなさい)

何か謎な部分もあるけど、「キャットフィッシュ・ブルース」の世界感を踏襲している事もあるし、ナマズって海にいたっけと思いながらも多分深い海ってのがマディの自信みたいなものも表しているのかと。

そんな深い海にいても、俺と分かる位目立っててきっと女性は「Fishing」、そう…釣りたくなるという事なのじゃなかろうか。

男としての自信みたいなものを故郷のアイデンティティともいえるキャット・フィッシュにメタファーして、この曲は文字通りローリンしていく。

歌詞にはマディ、今夫が家から出ていった所だわ。

など、ムッ?っと突っ込みたくなる箇所が出てきたりするが、結局は自分の自信みたいなものを誇示するがゆえの歌詞なんではなかろうか。

Well,my mother told my father
just before mmm、I was born 
I gotta boy child comin、gonna be
He gonna be  a  rollin‘ stone

ベスト・オブ・マディ・ウォーターズ ライナーノーツより
ローリン・ストーン歌詞一部抜粋

そしてそこからの展開で、母親が父親に生まれてくる男の子はローリン・ストーン、(根無し草や風来坊)になるわってな感じで言っているわけか。

流れを考えると風来坊やあちらこちらを行っているような感じに捉えられるけど、きっと女性にはモテモテで、何かの実力みたいなもんを兼ね備えた男って感じか。

ちなみに昔のブルースマンはあちこちを旅をしながら、生計を立てていたというし、伝説のブルースマン、ロバート・ジョンソンも根無し草のようにあちこちを回り、そして女性にモテたと聞く。(結局それが原因で…)

どうなのだろう。

ローリン・ストーンという響きがまず、カッコイイし歌詞にマディと本人の名前を出してまで築き上げたかった歌の男性像。

そしてメタファーであるキャットフィッシュ…。

やはり不遜な感じの歌い方と良い、自分の男性としての魅力をこの歌で作り上げたのは間違いないと思う。

この世界感はこれからのマディのキャリアの中でも結構重要だと思う。

マディが同胞である、黒人達に対して歌っている頃だ。

きっとまだ世の中は「ノー・サティスファイド」な事が多く、歌を通して聴衆の溜飲を下げる効果や、言い方が違うかもしれないが、「ヒーロー」たる効果もあったのではなかろうか。

・イメージとして

そしてこの築きあげたマディの世界感は1954年にマディの代表曲「フーチー・クーチー・マン」確固としたものになったのではなかろうか。

俺はフードゥーにまつわるものを所持してるし、女性にモテモテさ、っとざっくりと言い過ぎな位にざっくりと書いているが、たくましい男マディの一種の歌の中でのキャラクター像を確立している。

ちなみに序盤でジプシー・ウーマン(占い師かな?)が母親に対して、生まれてくる子供はとんでもない子になるよっと言っている場面がある。

何かこれも「ローリン・ストーン」と同じ感じなんですよね。

あくまでも歌詞の中の自らを演じ、聴衆の「サティスファイド」な部分をくすぐってみせたと感じてしまう。

ちなみに「フーチー・クーチー・マン」を書いて音楽にした人物…、そう、プロデューサーでソングライターのウイリー・ディクスンだ。

何とまあ本当にプロデュース能力に優れた人よ。

二人は曲についてああだこうだと話し合い、この曲の世界感を築き上げたそうだ。

そして何故「フーチー・クーチー・マン」をマディにやってほしかったのか…

50年代初めの時点ですでにエレクトリック・ギターとバンドによる勢いあるサウンドを指向していたこと、身だしなみに気をつけルックスも悪くなかったこと、そして、男盛りの魅力で女性の聴衆を惹き付けていたことの3つの理由からだったという。

黒い蛇はどこへ 歌詞の世界から入るブルースの世界  中河伸俊 著  216ページより

っということは前から是非ともマディに歌ってもらおうとしていたわけか。

まあ、そのおかげでこの曲はブルースのスタンダードとなり、マディの代表曲ともなり、後世にブルースで何かやろうか!っとなった時の定番の曲ともなりえたわけだから。

バディ・ガイにしても、ハウリン・ウルフにしても、マディ・ウォーターズにしても、ディクスンが関わっていたという事になる。

スゲェな、この人。

ただ、マディの初期のキャリアの流れを作った上でやはり「原点」とも
いえる曲は「ローリン・ストーン」なのかと思う。

その歌の築き上げた世界感を最大限に踏襲したのが「フーチー・クーチー・マン」だと思うので。

重要な曲だ。

・原点

そして、「ローリン・ストーン」はあるバンドにとっても超がつくほどに重要で、それこそ原点ともいえる曲になる。

その曲名を取ってバンド名にしたバンド、「ザ・ローリング・ストーンズ」だ。

そのローリング・ストーンズが今年18年ぶりに新アルバム「ハックニー・ダイアモンズ」をリリースした。

とても80歳とは思えないようなバンドサウンドを聴かせてくれ、ミックもよく声が出ている。

相変わらず凄いよな~っと思ってたら、本編ラストの曲が「ローリング ストーン ブルース」だ。

そう、自分達の原点ともいえるブルースナンバー、「ローリン・ストーン」をカヴァーしたものである。

僕たちが元々60年代初期にやっていたブルースのセットにも入っていなかった。ブルースの魅力は100年以上にもわたる口承の歴史にある。オリジナルのブルース・シンガーたちは、バーで演奏されていた12小節のブルースを聴いて、フレーズをここでひとつ、別のところでひとつという具合にピックアップしていった。それが例えば、ハウリン・ウルフの〈スプーンフル〉などに行き着いた。僕たちもそういう気持ちで初心に帰ってみた。

ハックニ―・ダイアモンズ ライナーノーツより 10ページ ミック・ジャガーのインタビュー

齢80を超えてなおも初心に帰り、その先を見つめるということか。

なので、このブルースを演奏したのであろう。

曲はシンプルに、キースのブルースギターとミックのブルース・ハーブが鳴り響く味わい深いものになっている。

そして解説書をみればこの曲だけMONOと記されている。

モノラルという事か。

昔のレコード源のものって確かモノラルが普通だったのかな。

多分そこまでを忠実に再現したのだろう。

何か真摯な思いを感じてしまう。

素晴らしいナンバーだ。

マディにとっても、ストーンズにとっても己の原点とも言える曲が聴けることはありがたい。

そして願わくばこの曲で原点をしっかりと見つめ直した先のストーンズに再び垣間見えるように…。

ハックニー・ダイアモンズもしっかり聴きこまねば。

ちなみに件の「キャットフィッシュ・ブルース」はジミヘンもカヴァーしているらしい。

ある意味ナマズがロックの原点とも言えるのかも…。

日本風に言うなら御利益満載という事か!

冗談です。

記事を最後まで読んで頂き誠にありがとうございます!



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