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“不器用貧乏”がフラット組織のベンチャーで学んだ3つの振り返り

インターンを含め約5年ほど在籍していたネットプロテクションズ(以下、NP)を退職しました。

いわゆる退職エントリになります。
ただ、自分語りや内輪話をしたい訳ではないため、学びを棚卸しする中で出てきた『過去の自分に伝えたい(=色々とつまづきがちな私のような人に役立つかもしれない)こと』を3つのポイントに整理してみました(自由にジャンプできるよう目次は細かく区切っています)。


先にサマリーを出しておくので、ざっくり知りたい方はご確認ください。

前職で得られた3つの学び

ゼネラルな”不器用貧乏"

学びをまとめるといっても、前提として筆者が何をやってきた人なのか分からないと前提が揃わないので、簡単にキャリアをまとめようかと思います(不要な方は目次から①〜③の詳細に飛んでください)。

プロダクトを中心に事業づくり・組織づくりへ携わる

改めて振り返ると、かなり多様で大量の機会をいただいたと思います。
経験の内容や自分の振る舞い、受けたフィードバックを棚卸しする中で気づいたのですが、過去のキャリアにおいて私は『”不”器用貧乏』でした。

越境しつづけてきたキャリア

思い返せばNPはかなりフラットな組織で、上司にあたる人はずっとおらず、(Win-Winな形であれば)やるべき/やりたいことは自由に経験させてもらえる環境でした。
エンジニアからPdMへ転向する際は問い合わせ対応をしに現場で電話を受けたり、京都オフィスで拠点研修を実験したりするなど、強いWillがあり事業に資する動きであればフラットに機会提供いただけたと思います。
私自身も職種・事業などの『枠』を超えた横断的な視点を得たい気持ちが強く、生意気にも事業戦略を勝手に作って壁打ちするなど成果に必要だと思った動きは遠慮なく進めていました(いま思えばこれが許されてた環境はありがたすぎる……)。

CSにも開発にもいた、組織もやったし一緒にお客さんの所にも行ってくれた
これだけ色んな領域を横断しつつバリューを出せる人、そうそういないはず

退職時のコメント by 事業責任者のIさん

学びは後悔と失敗から

ただ、「順調に成果を出してキャリア大成功!」なんてことは一切なく、いわゆる"新卒あるある"のような失敗ケースはだいたい経験したと思います(詳細は3つのポイントとともにまとめます)。
また自己成長に関してもつまずくことが多く、フィードバックを受けたり内省して習慣に落とし込んだり、自分を理解し改善するには人の2~3倍どころか10倍くらいの時間・労力がかかっていたと思います。
メンターからは退職セレモニーでも不器用だと言われました笑

不器用な人間。それでも自分でどうにかしようという気持ちが強い
すぐ変われた訳ではないが、フィードバックを受け地道に成長していた

退職時のコメント by 人事・組織開発チームのAさん

全ての壁につまずいた自信(?)がある分、私が後悔してきたことや、詰まった時にリサーチ/ヒアリングしてきた知見は、新卒研修やオンボーディングを進めるタイミングで大いに活用できました。

そこで今回は、若手メンバーやこれから若手を育てる方の参考になるように、ゼネラルなキャリアを歩みつつも数多くの後悔を重ねてきた私が経験してきた失敗から得られた学びを3つに絞って紹介しようかと思います。

① モヤモヤの解消を最優先にしない

入社前に2社でのインターンを経験していた私は、狭い視野での狭い成功体験から"論理的思考"への過度な自信に満ち溢れていました。
いま思えば、"論理的"なんて大層なものではなく、ただ『それっぽく話せる尊大な振る舞い』が身についただけでした。

コトに向かっている"つもり"

誤った批判的思考と過度な自信を身につけていた私は、入社してから社内で違和感を持った全てを『問題』と捉え、指摘して原因を追究し、なぜ改善されていないのか、今すぐ解消するためには誰がなぜ動くべきなのか、をステークホルダーに"説得"しようと躍起になっていました。
客観的に見れば、私の振る舞いは現状への理解や関係者への配慮を欠いており、また「成果を出すため」という大義名分を盾にしている裏で実態はただの"貢献欲求"という名のエゴでしかなく、信用や信頼を失う上に問題も解決しない、つまり誰も得しない結果となるケースがほとんどでした。

大いなる反省とともに、周りで仕事をうまく前に進めているメンバーを観察すると、彼らは仮にその場その瞬間で認識がズレていたり課題感があったりしていても、「全てをすぐに解消する」ことを最優先にしない人ばかりでした。
彼らは冷静に俯瞰しつつ、対話を重ねる中で合意や解決にたどり着けるようなアプローチを取っていることが分かりました。
もちろん、その場で「これは問題だ、間違っている」と断罪することは可能ですし、"論破"する側にとっては気持ちいいかもしれません
しかしそれは刹那的な快感でしかなく、問題解決という正論を盾にして自分の欲求を満たしているに過ぎない(=コトに向かっていない)と後悔しました。

バランサーとなる『判断の保留』と『ネガティブケイパビリティ』

一方で、全ての場面で全員の合意を待つことがポジティブな訳ではないかと思います。
特にスピード感を持って意思決定したい場面で、対話や議論に時間をかけすぎることは時に致命的です。
とはいえ、スピードと引き換えに質を必要ラインより落としてしまっては本末転倒です。
状況に応じてバランスを取っていく上では、

  • 「何でもすぐに押し通す」以外のアプローチを持っている(判断の保留)

  • 違和感を持ったまま動きつづけられる(ネガティブケイパビリティ)

あたりの「待つ」力が、特にリソースや時間の制約が大きいスタートアップ・ベンチャーでは重要になるかと思います。

とはいえモヤモヤを感じたときに場に出すこと自体は重要で、言えないまま放置するとモヤモヤが肥大化して行動の妨げや不信感にも繋がります。
モヤモヤを場に出す上では、ネガティブケイパビリティが高いメンバーが多い環境だからこそ、短絡的に評価を下されることなく安心した状態で、モヤモヤをハードル低く場に出せるのではないかと思います。

② 自分の『とらわれ』に気づく

私が初めて『とらわれ』という概念に触れたのは先輩社員のSlack投稿でした。
1人だけの投稿だったわけではなく、色んな方がさまざまな形で自身の『とらわれ』の話をしており、最初は「NPって宗教みたいな会社のかな?」と訝しんでいました(いま思えば会社にも宗教にも失礼です)。

やりたいことをジャマする『とらわれ』

『とらわれ』は思い込みやバイアスとも近いですが、『その場/その瞬間で自分にとっては合理的な、偏った/歪曲した考え方・見方』と捉えています。
例えば「人に仕事を任せたいが任せられない」というジレンマの裏側には「任せると私は存在意義を失う」という固定観念(=とらわれ)が隠れている場合があります。

目的達成をジャマする『とらわれ』を紐解くには免疫マップのフレームワークが有用で、「前に進めたいけどうまく進まない」「自分を変えたいのになぜか止まってしまう」など、つまずいたり苦しんだりした時に分析する際の武器として役立っています。
私が正論・べき論で周りを振り回してしまっていたとき、周囲へ相談しながら内省する中で「人は全員が常に成果を最優先にして、自分の感情を二の次に考えている」というとらわれがあることに気づきました。

やりたいこと(改善目標)をジャマする要素(阻害行動)の裏には『とらわれ』がある

全てのとらわれをすぐに外すことは難しいですし、実際に私の場合だと長いもので2~3年くらいかかりましたが、自分のとらわれに対して自覚的になること、必要に応じて時間をかけてでも外すことの重要性を学びました。

継続して『とらわれ』と向き合う

私がメンターや新卒研修の担当を務めた際にも、『とらわれ』と何度も向き合いました。
メンティと対話を重ねる中で相手のとらわれを一緒に探ったり、とらわれを外す/剥がすための計画を立てたり、すぐには変わらない中でうまくやっていく動きに並走したりするなど、スキルの獲得や業務そのものの遂行と同じくらい、とらわれに向き合うことにも力をかけてきたと思います。

とらわれがある=自分の中にあるジレンマによってアクセルとブレーキを同時に全力で踏んでいる状態なので、「何も前進しないのになぜか疲れる、エネルギーを消費している」まま続いてしまいます。
ネガティブループを避けるためにも、自分の中にとらわれがないか、うまくコトやヒトに向き合うには何が障壁になっているか、を常に自問自答しつづける動きと習慣づくりが重要です。

③ オブジェクティブからはじめよ

ここまでは対人関係や自己成長の話が中心でしたが、最後はもう少し前提にある『仕事の位置づけ』に立ち戻った話で締めようかと思います。

結局のところ仕事とは、価値を創出し成果に繋げること、価値や成果によって事業や会社の目的を達成すること、のためにあると考えています。
会社のゴールに向かった結果や過程にある、個々人の安定や自己実現などももちろん重要ですが、より高い収入・より楽しい経験を得たり持続的に事業や会社を存続させるためにはその源泉である利益が必要であり、利益を出すには価値や成果がしっかり出ていなければなりません。

結局、何を目指すのか?

そこで重要になるのが『オブジェクティブ(=目指すべき目標や本来の目的)』です。
特にベンチャー・スタートアップのような「機会や危機に対してリソースや個人の力量が追いついていない」状況が続く環境では、各メンバーが現時点での自分の役割やスキルを超えていく必要があります。
そこで必要なのは「誰かに提案されたことをそのまま実行する」ことでも「自分ができること・分かることをやる」ことでもなく、「何を目指すか定め、その達成のためには手段を問わずやり切る」ことです。

不確実でストレッチな場面では、手段にとらわれず、とはいえ最上段のオブジェクティブはブラさず、柔軟に自分を変化させたり周りを巻き込んだりして価値や成果を出すことが求められます。
もちろん実行なしでは価値や成果に繋がることはなく、オブジェクティブだけが重要というわけではありません。
しかし、手段よりも目的が、個別の目標よりもビジョンとミッションが常に優先されるべきで、上段のオブジェクティブでズレると実行ではカバーができません

オブジェクティブを外すと却ってマイナスに

『合意形成』も『信頼獲得』も手段

オブジェクティブ(上段にある目標/目的)の重要性は、仕事における対人関係でも同じです。
実行する前の納得・腹落ちや関係者との合意よりも、もっと言ってしまえばその瞬間の刹那的な成果よりも、「最終的に目指す場所や自分たちが存在する意義に寄与できているか?」が支配的です。

「オブジェクティブを最優先に考える」ことは、一見すると関係構築や人の巻き込みと相反するようですが、対人関係そのものは重要です。
その上で、信頼や信用を集めることが目的になることはありません。
ステークホルダーとより良い関係を作ることはもちろん重要ですが、信頼や信用は貯金だけしていても意味がなく、より非連続でチャレンジングな場所へ向かうために「周囲を巻き込む」手段(投資)だと考えています。

また、一緒にコトに向かうチームメンバーとの間で、理想状態や現実的な妥協ラインがズレていれば常にブレーキがかかってしまいます。
野心的で非連続な理想を目指すほど、また動きを長期にわたって継続したい時ほど、何をどこまで目指すのか、利害が一致しているか、個々人の目指す方向性と重なりがあるか、を対話しつづけることがチームのポテンシャルを引き上げます。

残酷かもしれませんが、時にはパージ(=メンバーの離脱・交代)が必要な場面もあります。
チームの目的やアプローチ、進むスピードが合わないメンバーに対して周囲が何も働きかけなければ短期的には誰も傷つくことはありませんが、放置していても問題は大きくなるばかりで誰も得しないどころか、本来はチームへのマッチ度が高いメンバーの離脱をも誘発するため、「合わないメンバーをパージする」ことは長期的にWin-Winな意思決定だと考えています。
もっとも、パージ対象が自分になる場合もあります。
冷静に客観的に判断することに務めた上で、時には「自分が離れた方がこのチームは前へ進むと思う」と自分から伝えるようにしていました。

つまるところ常に求められるのはオブジェクティブに対する真摯さであり、そのためには「価値や成果に向き合いオブジェクティブを忘れない」「合意形成や関係構築を目的化せず、時には環境や自分自身を変化させながらコトに向かう」ことが必要です。

企業・事業・個人がAll Winとなる社会へ

ここまでで、過去のキャリアから得られた3つの学びをまとめました。
冒頭のサマリーを再掲しておきます。

私自身も多くの失敗や後悔を経験したほか、メンターや研修担当として多くのメンバーの成長を応援してきた中で、さまざまなケースにぶち当たりました。
得られた多くの事例を元に、多くの方に共通していたポイントをピックアップしたため、一定の普遍性はあるかと思います。

そして3つの学びには共通して、目指す理想状態に『企業・事業・個人がAll Winとなる社会』というオブジェクティブがあります。
社会の公器である企業のオブジェクティブは、ミッションを達成し社会に良いインパクトを残すことです。
その上で、事業はミッションに寄与し持続的に価値を届ける装置となり、組織は成果創出のリソースとなるだけでなく、最終的には関わる一人ひとりの個人が幸福を実現する場にもなります。

私はこれら企業・事業・個人のAll Winな関係を実現する組織を作るために必要な、組織の原理原則を見つけて世の中に還元することを人生のオブジェクティブに据えています。
そのためにはさまざまな組織を見て、実際に自分も泥臭く動いて成果を出しながら、高い再現性とパフォーマンスでAll Winな状態を作れる実力と知見を身につける必要があります。
そこで今回は新たな組織に環境を移し、All Winを達成する組織に求められる要素を明らかにするためのさらなる一歩を踏み出すことにしました。

成果を高めつづける組織を科学する

企業が持続的に成果を出し、成長を続ける上で忘れてはいけないのが『実行』のフェーズです。
もちろんオブジェクティブが誤っていれば目指したい場所には辿り着けないですが、
・成果に響くポイントを見定める
・継続的に実行できるだけの共通認識や目標設定などの仕組みを作る
・パフォーマンスが高まるループを習慣に落とし込む
などヒトに寄り添った『実行』のサイクルを組織のあたり前に落とし込むことではじめて、組織は成果を高めつづけることができます。
転職先であるSALESCORE(セールスコア)は「達成の喜びをあたり前に」をビジョンに掲げています。
組織の成果を高めつづけるべく、現在は『セールスイネーブルメント』を軸に、営業組織づくりへ徹底的に並走するコンサルティング・プロダクトを提供するスタートアップです。

価値や成果にこだわりつつ、実行者であるヒトに向き合う姿勢は、本来的に目指すべきAll Winな社会にとってクリティカルだと思います。
私はSALESCOREのヒトにもコトにも向き合う価値観と、「文化を納品する」という価値提供・社会変革への徹底したスタンスに共感して入社を決めました。

適応し、コトに向かい、進化させる

SALESCOREでは前職と同じく、PdMとして参画することになりました。
私に求められる要素には『過去のキャリアの延長線上のもの』と『全く異なるもの』の両方があると捉えています。

例えば

  • エンジニアリングとビジネスを接続する、翻訳者としての役割

  • ビジョンを描き、形になるまでやり切るアウトカム志向での執着心

  • LLMなど、新たな社会基盤となる実践の経験

などは転用可能な要素かと思います(LLMや成長支援などの知見は別でまとめようかと思います)。

一方、文化の違いや固定的な習慣、新たな環境で明らかになるとらわれなど、アンラーンが必要な場面も多くなると考えています。

そのためには、「すぐに認められたい」「貢献している感覚をとにかく早く得たい」などのエゴは不要です。
シンプルに「自分という変数が入ることでどうミッションの実現に近づけられるか?」を考え、コトに向かってやりきり、結果として自分の出せる価値を最大化できれば良いと考えています。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。
もう少し具体的・個別的な学びとして「もし今から入社1年目に戻って自分の成長の速度・確度を10倍にするにはどうすべきだったか?」をまとめた資料もあるので、お役に立てれば幸いです。

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