続続・言うべきか、言わざるべきか
前回、前々回からの、
日本人同士の気まずい『お間違い』、
1人目が、櫻井よしこ似マダム、
そして、デビ夫人似マダムを挟んで、
今回やっと、私がどうしても指摘したかった、2つ目の『お間違い』でございます。
それは私が数年前に、近所のカレッジで英語(EFL)クラスを受講していた時のことでありまして。
そこで同じクラスになったのが、
私が勝手に『君島十和子』と呼んでいた、
日本人マダム。
「君島十和子」似の、控えめで品位ある大人の女性であった。
巻き髪、お化粧、ハイヒールをご自身に課し、背筋を伸ばして歩く彼女を、私は小汚いコンバースを履きながら尊敬していた。
英語の発音なんか、抜群に美しかったのに、
「文法はブロークンだから」
と謙遜され、私と同じクラスに。
ただ、繊細な方でもあった。
ある時クラスで、口の悪いトルコ人男性が
日本人の発音をからかったことがあり、
私はすぐさま、
「アンタの『ナッチン(nothing)』って言う発音の方が笑える」
と低レベルな仕返しをしたが、
横で十和子さんが、よよと目を真っ赤にされたので、焦ったそのトルコ人男性が平謝りという一幕があった。
それ以来、繊細な十和子さんをお守りするのだ、と息巻いた私だった。
英語クラス
クラスは、下は17歳のポルトガル人から、
ペルー人、中国人、60歳のイタリア人マダムまで、年齢も性別も国籍もバラバラな20名。
そして、この多国籍なメンバーで食べるランチもまた楽しかった。
そんなある日のランチのテーブル。
8人ほどのグループで座っており、
日本人は私と十和子さんだけだった。
そこで、フランス人の駐在マダムが「イギリスに、好みのパン屋がない」と嘆いたところ、「美味しいパン屋を知っている」と言う十和子さんが、店の場所をみんなに説明しようとした。
「Turn right at ハイ・ストリート…」
イギリスの道は
◯◯ストリート、◯◯アベニュー、
◯◯ロード、◯◯ウェイ、◯◯ドライブ
など、名前の下の部分が決まっている。
「and keep straight untilシドニー・ウェイ…」
十和子さんの美しい発音による説明を、
皆、うなずきながら聞き入っていた。
でも、
でも、
でも。
私だけが気づいてしまった。
日本人であるがゆえに、わかってしまった。
何がわかったかって、
十和子さんは、
「アビー・ロード 、ロンドン・ロード」
と言うところを、
「アビー・ドーロ、ロンドン・ドーロ」
と、全部の「ロード(road)」の部分を
「ドーロ(道路)」って言っちゃってる、
ということを。
オーマイゴット。
もうパン屋どころではない。
私は、十和子さんの「ドーロ(道路)」をかき消すかのように、くい気味に「アーハーアーハー」と相槌を打ちつつも、考えていた。
「道路になっちゃってます」
という手旗信号は存在するのだろうか‥
「ロンドン・ロード」を良い発音で、
「ラァンダァン・ドーロ(道路)」なんて、
申し訳ないが発音の良さが災いして、
逆に滑稽度が増している。
繊細な方であるからして、
コレ、他の日本人に笑われでもしたら、
十和子さんはきっと立ち直れない。
これを指摘できるのは、私しかいない。
でもダイレクトに言うのもいかがなものか。
どうにか、ご自分で気づいて欲しい。
ままよ…
「ねぇ十和子さん、ロンドン…『ロード』ってぇ…」
と『ロード』大きめに言ってみた。
届け、この想い!
「あびかちゃん、ここで日本語は止めよう」
アー…ハー…
力なく相槌…
と、ここで、若い日本人女子が
「何の話ですかぁ〜」
とジュースを飲みのみ入ってきて、再度英語で説明する十和子さんの
「ドーロ(道路)」でジュースを吹いていた。
力及ばず…
(結局、こんなに心配せずとも
御本人も大爆笑で「完」)
+ + + + +
ー Marmaladeさんが、ご自身の「お間違い」を投稿されました!
不相応に私なぞを褒めていただき恐縮ですが、それよりもMarmaladeさん!
か、かわいい…抱きしめたい…
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