処女航海 詩バージョン

処女航海

僕の三日月が君の水平線に
まだ一度も没したことのなかったとき
僕は人魚に誘われて見知らぬ海に溺れかけた
こんな浅瀬で
泡を吹いて気を失おうとした瞬間
音を立てて星々が水平線に落ち
三日月は夜の静寂に姿をかき消した
帰って!
と人魚姫は叫び
僕は運命を呪った
でも
大きな潮は再びやってきて
それは私のせい 私があなたを拒んでいたからと
君は言った
僕の三日月は
満天の星空にくっきりとその姿を現し
月光に照らされた海の道は
浜辺から星の彼方までさざ波を描いて続いていた
何を煩うこともなく
引力に導かれるように三日月は海の向こうに落ち
地球はぐるりと巡って
僕らは銀河を旅していた
彼方の彼方
時間と空間の尽き果てる場所で
チベットの交合仏は
座位のまま抱き合い
ひとつに溶けて耀いていた

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長澤靖浩
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