マガジンのカバー画像

木曜日の恋人

63
SKYWAVE FMで毎週木曜日23時から放送の「東別府夢のDream Night」にて朗読されましたおはなしたちです。読み切りですのでお好きな所からどうぞ。
運営しているクリエイター

#眠れない夜に

ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㊿ 『楽しいショーがはじまるよ』

「舞台の脚本を書いてみないかね」と友人に誘われたのが二年前。  それはちょうど僕が脚本を…

あべたかふみ
6か月前
23

ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㊾ 『日本バンガル通信』

 近頃、若者たちの間でバンガルが再び脚光を浴びている。  これは大変驚くべきことである。…

あべたかふみ
7か月前
31

ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㊽ 『橋の上の物語』

 私がかつて住んでいた所は、大きな橋がある小さな町だった。  人々は毎朝、徒歩や車でその…

あべたかふみ
9か月前
35

ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㊼ 『きつね色に染まった日』

「かん、かん」となにかが屋根を打つ音で私は目覚めた。時計を見ると午前八時四十二分であった…

あべたかふみ
9か月前
29

ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㊻ 『神宮でナイター』

一回の裏  ずっと野球が嫌いだった。  子供の頃、テレビで読売巨人軍の試合中継があると父…

43

ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㊺ 『ハウオリ・オラ』(後編)

 ハワイにやってきて三日後。わたしは三十歳になった。  誕生日の早朝、まだ薄暗い時間に目…

53

ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㊹ 『ハウオリ・オラ』(前編)

 丁寧にサーブされた機内食を、わたしは感動と共に眺めた。  隣に座っていたエッちゃんは、そんなわたしの様子を見て言った。 「え、メーメー初機内食?」 「そうだよ。というか、飛行機だって修学旅行で沖縄に行った時しか乗ったことないし」 「そっか、海外がはじめてなんですもんね」 「うん。機内食って憧れだったんだよねー」  わたしは何枚も写真を撮ってからようやく食べた。  食べ終えた頃、機長のアナウンスがあり、飛行は順調で、予定通りあと六時間もすれば目的地のホノルル空港

ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㊸ 『溶けたアイスクリーム』

 八月のある日曜日。午後二時十六分。外気温36℃。  閉めたカーテンの隙間から差し込む光。…

40

ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㊷ 『愛しい人よ、笑っておくれ』

 恐ろしい疫病が流行してしまった。  そのウイルスに罹患してしまうと、高熱が出て、激しい…

37

ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㊶ 『コミュニケイション・ブレイクダウン』

 悪夢を見ているような喧騒だった。  いつもは閑散とした路線の閑散とした時間帯の電車内で…

36

ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㊵ 『愛は痛い』

 その高台からは、街が一望できた。  私はしばらくの間、街を眺め、そこで営まれているであ…

29

ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㊴ 『まるでジャニスの歌のようだ』

 ワイパーを最高速度で作動させても、前方が不明瞭なほど激しい雨がフロントガラスを打ち付け…

34

ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㉜ 『わたしが九十才になっても』

 それは、なんてことはない戯れの会話から始まった。  金曜の夜、彼の家で二人はワインを飲…

29

ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㉛ 『九月が終わったら起こしてくれ』

 人間は人生の三分の一を眠って過ごす。  そんなことは誰だって知っている。  毎年、年の瀬になると皆が口を揃えて言う「いやあ、今年ももうあっという間に、ねえ」という台詞だって、考えてみれば、一年の内四ヶ月は眠っているわけだから、早いのも当たり前だ。  睡眠については六十年以上世界中で研究されているが、我々がどうして眠らなくてはならないのか、その理由はいまだにはっきりと分かっていない。最近では、生き物にとって眠っている状態が正常であり、起きていることが異常なのだ、という説