ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㉛ 『九月が終わったら起こしてくれ』
人間は人生の三分の一を眠って過ごす。
そんなことは誰だって知っている。
毎年、年の瀬になると皆が口を揃えて言う「いやあ、今年ももうあっという間に、ねえ」という台詞だって、考えてみれば、一年の内四ヶ月は眠っているわけだから、早いのも当たり前だ。
睡眠については六十年以上世界中で研究されているが、我々がどうして眠らなくてはならないのか、その理由はいまだにはっきりと分かっていない。最近では、生き物にとって眠っている状態が正常であり、起きていることが異常なのだ、という説