未来を描き出すことこそが、希望をつかむための道標となる
今回は、5月29日に発売される「実践シナリオ・プランニング」を、一足先に入手できたので、本の感想について書きます。
シナリオ・プランニングとは何か
シナリオ・プランニングとは、将来における不確実な中から可能性を考えていく手法です。よく長期的な未来を考える手法だと思われることがありますが、長期に限ったことではありません。見通しが立ちづらい将来を設定するのが妥当なので、昔なら5年後とか10年後かもしれませんが、今時はもっと間隔が短くなっていることもあります。大事なことは自分たちが取り組もうとしているものが不確実になるのはいつ頃からかということです。コロナ禍中で来月の見通しすら立たない場合には、来月のシナリオ・プランニングを創ったところもあったそうです。皆さんが今進めている事業などで、不確実になる時期はいつ頃でしょうか。コロナ禍以外にも、気象変動などの環境問題や、米中の社会情勢、人口動態の問題、テクノロジーの進展など、これからますます混沌となる時代において自分たちがどのように考えながら動いていくかを身につけるために発売されたのが「実践シナリオ・プランニング」です。
なぜ、発売前にこの本(実践シナリオ・プランニング)が入手できたのか
この本は5月29日に発売されますが、既に私の手元にはあります。理由は、日本能率協会マネジメントセンターと株式会社スタイリッシュ・アイデアが出版前のシナリオ・プランニングの原稿を使ってアクティブ・ブック・ダイアローグ(ABD)を行う勉強会を開催していたからです。私はそこに申し込んで、感想を発表したお礼として献本してもらいました(ラッキー!)。
アクティブ・ブック・ダイアローグとは、1冊の本を何人かで分担して読み、その内容を共有し合うというスタイルの読書法です。自分が読んで感想を伝えるのはごく一部ですが、他の感想も聞けるのであっという間に全ての内容を理解できる新しいスタイルの読書法でした。他の人の感想を聞くことで自分のパラダイムとの違いにも気づけるのが非常に印象的でした。出版前にこういったABDを行い、反応をみながら一部の内容については当時から修正されてたので、ますます品質がよくなり強い感銘を受けました。
他のシナリオ・プランニングの本との違いは何か
シナリオプランニングの本はこれまでも何冊か発売されてます。私もkindleでは2冊、紙でも2冊持っていました。これ以外に「シナリオ・シンキング」という古い本も持っています。
では、これまで出た本と、今回の「実践シナリオ・プランニング」は何が違うのでしょうか。私の個人的な印象は、”自分事として学べること。”だと思います。また、その理由については以下の内容をご笑覧ください。
この本の構成について
この本は以下の通り3部構成でできています。
・第1部:シナリオ・プランニングの理解
・第2部:シナリオ・プランニングの実践(創り方・手法)
・第3部:シナリオ・プランニングの活用
総ページ数はなんと428ページもあります。でも安心してください。著者の新井宏征さんは、英検が1級でTOEICが990点というスキルを持ち、これまで数々の翻訳も担当されてきたので、わかりやすくて滑らかな文章の書きぶりが秀逸しています。お陰様であっという間に読み終えてしまいました。一番重要なのはやはり第3部の活用ですが、そのためには第2部でシナリオ・プランニングを創れるようにしっかり手法を学ぶ必要があります。他の本もこの第2部の内容が中心ですが、ここでも新井さんの拘りと優しさが織り込まれています。過去の膨大なワークショップ運営で培ってきたファシリテーター経験の中で得られたTipsや、各課程で確認するチェックリストが用意さてます。各プロセスでできるだけ迷わないよう細かい配慮がされているのです。これとは逆に、他の本は更にいろいろなサブツールなどを紹介し、様々な思考で取り組める配慮がされていました。もちろんこれもありがたいのですが、やはり最後まで完成できるほうが嬉しいですよね。シナリオ・プランニング自体をうまく進める方法についてここまで配慮されている本は初めてだと思います。
この本から何を学べるのか
この本から学べることは実にたくさんあります。一部だけ並べててもざっくりと以下のようになります。
・シナリオ・プランニングの創り方
・OODAループ
・パラダイム(メガネ、メンタルモデル)
・未来創造OSとシナリオ・プランニングについて
・ALACTモデル
・フューチャーサーチ
・帰納法と演繹法の違い
・フューチャーホィール
・社会構成主義
・PEST分析、STEEP分析
・内省、リフレクション
・ストーリーテリング
・構造こわし、心理学
・シナリオとマーケティングの関係
・オープンダイアローグ、戦略的対話
・ファシリテーター、ジェネレーター
・インテグラル理論
・チームビルディング
・デザイン思考、プロトタイピング、リーン
・自覚的、自律的
・パーパス
シナリオ・プランニング以外のビジネス書籍や文献からもわかるとおり、上記の一覧の最後にあるパーパスが今の時代では一番重要となります。実は私はこの本を読むまではシナリオ・プランニングとパーパスは遠い関係だと半信半疑に思っていました。企業で創られるシナリオ・プランニングはなかなか組織内に浸透されず、どちらかというと体外向けのPRや投資家や株主へのアピールとして使われる印象が強かったからです。
でもこの本は、いい意味でシナリオ・プランニングを解説しているだけの本ではありませんでした。全体構造としては未来創造OSというシナリオ・プランニングを軸にして組織や組織に関係する個人全員で継続的に定点観測しながら戦略的に使える武器についての内容だったからです。「もしかしてシナリオ・プランニングは組織では使えないのでは?」というモヤモヤ感を一気に晴らしてくれる待望の一冊だったのです。
この本を読んだ後にすべきこと
この本を読むとシナリオ・プランニングと未来創造OSの手法を学ぶことができるようになります。では、この後、自分がすべきことは何でしょうか?
まずは不確実な未来のシナリオをたくさん描いてみることです。
そして、描き出したシナリオを利得の獲得ではなく、みんなにとって存在意義のある戦略として仕上げましょう、そして、それを組織内で定点観測してもらえるように普及しましょう。
この普及にはおそらく困難が伴うはずです。なぜなら個人個人のパラダイムには偏りがあるからです。ですがパーパスが織り込まれたシナリオ・プランニングは、創ったメンバーや関係者の強い希望によって仕上げられています。これによって必ず将来の競合より一歩先行くことができたり、ブルー・オーシャンへと繋がるはずだと信じています。組織と個人全員が幸せになるためにこの武器を使いこなすことをお薦めします。
『実践シナリオ・プランニング〜不確実性を「機会」に変える未来創造の技術〜』はAmazonでは予約が可能のようです。素晴らしい本との出会いは理想の恋人を見つけたことと同じぐらい嬉しいものです。新たな出会いに感謝いたします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?